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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第2章 ヤンキー女子高生の下僕はNEO麗のメンバーにさせられました
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決着

 現時点で二十五対百。


 数の上では劣勢だが、敵はNEO麗の逃亡阻止の為に彼女らのバイク付近を陣取る十五人、麗・NEO麗・助っ人連合を取り囲む五十五人、そして足振を守る本陣とでも言うべき三十人に分散されていた。


 足振達の三十人を鮮血塗之赤道ブラッディ・レッド・ロードの特攻隊十人が襲撃をかけ、人数で劣りながらも次々と敵を蹴散らしていた。


「らあっ!」


 頭を振り、敵のパンチを躱しながら右のスウィングフックがカウンターで決まり亮磨先輩が雑魚を殴り倒すと、隣で澪は相手の腰を圧し折らんばかりの前蹴りで敵を蹴り倒した。


 この二人の活躍もあり、三倍もの敵も徐々に数を減らしていた。


 そうこうしていると、校門辺りから幾つもの怒号が鳴り響いた。


「うらあっ!」


 NEO麗のバイク付近を陣取っていた不良達が、新たに駆けつけた暴走族に襲われていたのだ。


 何人か見覚えのあるメンバーも居るので、恐らく鮮血塗之赤道ブラッディ・レッド・ロードの親衛隊だろう。


 これで百対三十五。


 まだ不利を覆せる程の人数差では無いが、もし亮磨先輩の話を信じるのならば、この後、邊琉是舞舞ベルゼブブ飛詫露斗アスタロトの合計五十が駆けつけるハズだ。


「ハハハハッ! 足振! 如何すんよ! この後、まだまだ援軍が来るぜ!」


 亮磨先輩が大声で足振を挑発すると―


「じょ……冗談じゃねぇ! 族と喧嘩なんか御免だ!」


 そう言ってある者が校庭の柵を超えて逃げ出すと。


「おっ……俺も。こんなの付き合ってらんねーよ!」


「そもそも留年ダブリの足振の言う事なんか始めっから聞くの嫌だったんだよ!」


「女のチームを輪姦まわせるからって話で付き合ってやったのに! 族と喧嘩する何て聞いてねぇよ!」


「勝手に足振と朝来名だけでやってろ!」


 それぞれ勝手な事を口走りながら、次々と不良達は戦線を離脱していった。


「てっ……テメーラ! 待ちやがれ!」


 だが、全員格闘技経験者という恐ろしく強い女達と、暴走族の強さに圧倒され、この後も増援が来るという状況に、地域一の不良高校という誇り等砂の城に過ぎなかった。


 結局、首師高校ひとごのかみこうこう側で残ったのは負傷して逃げられない者や、足振や朝来名の側近のみであったが、主要メンバー以外はあっと言う間に制圧されたのは言うまでもない。



 ◇



「テメーラ! これで勝ったと思うなよ!」


 追い詰められた足振は日本ポン刀を抜刀し、正眼に構えていた。


「小碓! せめてテメーだけでも斬り殺してやんよ!」


 執念深く蛇に似た濁るその瞳から俺に対する復讐心の根深さが伺えた。


 流石に日本刀相手の戦い方は想定した事が無い。


 いや、飛詫露斗アスタロト遠津闇男とおつくらおも日本刀を振り回していたが、あの時の俺はハーフキャップのヘルメットを防具にして日本刀を封じた。


 だが、今はそんな物を持っていない。如何すれば良いだろうか?


 ある漫画で、後ろ回し蹴りで剣道に対抗していたから、一か八かでアレを使ってみるか?


 その漫画の作者は確か戦場での刀相手の戦いを想定して後ろ回し蹴りが生まれたのではないかとか書いてあった記憶があるけど、松濤館流の開祖である船越義珍の四男・船越義豪が回し蹴りを開発する以前の空手は前蹴りぐらいしかなかったはずなので、時代的におかしいので、あの漫画の説は納得できないけどな。


 何て横道に逸れた事を考えていると、麗衣が黒いポリストンファーバトンを右手に持ち、俺を守る様にして前に立った。


「麗衣! ソイツは俺がヤル!」


 麗衣を危険に晒すわけには行かない。


 だが、麗衣は俺の言う事など聞く耳を持たなかった。


「タコ! 刀相手に素手のテメーが如何にかできるかよ!」


「お前だってトンファー何か使えるのかよ!」


「昔、トンファーの練習してたって、話しただろ?」


 そう言えば、香織が麗に入った日、香織が自己紹介でトンファーを使えることを話すと、麗衣も浜比嘉のトンファーという型の練習を昔していた話をしていたっけな。


「あたしを信じろ。心配するな! ナマクラ叩き折ったらアイツはお前に譲ってやるよ」


 どうやら麗衣は俺が足振とタイマンをしたがっているのと勘違いしているようだが、その誤りを正す余裕は無かった。


「ごちゃごちゃウルセーぞ! テメーラ二人纏めて殺してやんよ!」


 しびれを切らした足振は刀を大きく振り上げ、斬り掛かってくると、麗衣は刀を避けるどころか、足振の懐に飛び込み、腹前から捻る様にしてトンファーを上方に上げる上段受けで刀を受け止めると、硬質な金属音が辺りに鳴り響いた。


「何いっ!」


 折らず曲がらず。


 等とまことしやかに囁かれている日本刀が見事に根元付近から折れて、地面に突き刺さっていた。


「ばっ……バカな! 如何してこんな事が?」


「バカはテメーだ! 日本刀だからって太い金属が切れる訳ねーだろ! ましてや腕が悪い素人が振り回していたら猶更だ!」


 後から聞いた話だが、麗衣のトンファーはジュラルミン製のポリストンファーバトンで、昔アメリカの警官が使っていたタイプらしい。


 ジュラルミン製の盾は防刃用途で日本の警察でも採用されており、実際に事件で使用されケースもあるらしい。


 その時、幾度も盾は刃物で突き刺され、切りつけられ、盾の表面は傷ついたが、盾の裏面は全く貫通しておらず無傷で、犯人と戦った警察官も怪我をせずに済んだらしい。


 つまり、普通の刃物ではジュラルミンを傷つける事は出来ても切断するのは難しいのだろうし、日本刀とて例外ではあるまい。


「うらあっ!」


 麗衣が左ミドルで足振の腕を打つと、足振は腕の痛みの為なのか?

 折れた刀の柄を地面に落とした。


「へっ! これでテメーは丸腰だな! ……武! 約束通り代わってやるよ!」


 凶器にならぬ様に刀の柄を遠くへ蹴り飛ばすと、麗衣は俺に足振とのタイマンを譲った。


 麗衣が危険に晒される様な事が無ければ、別に足振とのタイマンに拘っているわけではないのだが。


 刀の無い足振など危険性はゼロに等しいから、麗衣がやっても俺がやっても変わらない気がするが、足振をブン殴らないと気が済まないのは確かなので有難く譲ってもらう事にした。


「おうすううっ! あの時はまぐれだったと思い知らせてやるぜ!」


 当の足振の方は性懲りもなくまだヤルつもりなのか? キックをやっていた頃と相も変わらずにガードを固めながら真っすぐ突っ込んできた。


 レベルはあの頃と同じか、それ以下。少なくてもキックを辞めてしまった足振にあの頃以上の成長は無い事は直ぐに察した。


 だから、足振を倒すのは容易いが、只勝つだけでは面白くない。


 ブラッドさんに教わった、あのパンチを試すか。


 俺はサイドステップで突進を避けたりせず、敢えて足振の正面に立ち、ワンツーで迎え撃つと、足振はしっかりとガードを固めてパンチを防いだ。


 だが、直線的な攻撃のワンツーを防ぐ為にガードを固める事で、両腕が固く閉じられ、顔の側面ががら空きになった。


 俺は足を内側に入れる様に踏み込み、左フックでガードの隙間を縫うようにして思いっきりこめかみを打ち抜くと、足振の首は大きく捩じれた。


「あ……がっ……」


 脳を激しく揺さぶられたのだろうか? 足振は立ったまま白目を剥くと、顔面から地面に崩れ落ちた。


 俺は不良偏差値75と呼ばれている首師高校ひとごのかみこうこうのトップに返り咲いた男を一撃で倒してしまった。

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