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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第2章 ヤンキー女子高生の下僕はNEO麗のメンバーにさせられました
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チョーダサいっスね

「ほっ……火受美! どうしよう!」


 流石の神子も動揺していたが、それは事実上のリーダー格である火受美も同様で冷静さを欠いていた。


「とっ……とにかく、バイクを奪い返して逃げよう!」


 だが、バイクの周りにも十数人居るので、これをすぐに奪い返すのは難しい。


 俺達ならば退けられない人数ではないとは言え、全員倒す前に他の敵に囲まれるのがオチだ。


 火受美は直ぐに考え直して言った。


「いや……それは無理か。バイクは捨てて包囲が薄いところを一点突破して逃げるしかないだろ? 六日市駅の派出所に逃げこめば流石に襲って来ないだろうし」


「何言ってるの! ここから六日市駅まで徒歩だったら一時間近くかかるじゃない!」


 再考した火受美の提案を神子は即座に却下した。


「仕方ないな。スマホで警察呼ぶか? 捕まってもコイツ等に輪姦まわされるよりはマシだろ?」


 比較的冷静だった孝子は流麗にそう提案した。


「それにしたって近くに交番無いし、早くて15分以上はかかるんじゃない?」


 近くても六日市駅の派出所までバスで20分の距離らしいから、通報してから交機がここに駆け付けるまで、その位はかかりそうだ。


 だが、流麗達が取れる打開策はそれしかなさそうだと俺も思っていたところ、作戦が決まる前に首師高校ひとごのかみこうこうの連中は襲い掛かって来やがった。


「考えている暇もなさそうね……あーしが電話するから、それまで皆頑張って!」


 電話が終わるまで敵から流麗を守れという事だ。


「ああ! 分かった!」


 俺は緊張で震える手でスマホを持つ流麗を背に、襲い掛かって来た目の敵の膝を前蹴ティープりで蹴り飛ばし、突進を封じると蹴り足を引いた勢いを推進力に変え、右ストレートで敵の顎を打ち抜いた。


「ぐっ!」


 拳が抜ける感覚と共に、目の前の敵は地面に尻餅を着いたが、敵は百人。


 こんな事をしていたら拳も体力も持たない。


「きゃあっ!」


 悲鳴と共に流麗が持つスマホは地面に落ち、よろけた足で踏みつけられたディスプレイにヒビが入っていた。


「ケッ! テメーラの考え何かお見通しだ!」


 俺達の意図を察した朝来名が流麗にタックルを仕掛けてきたのだ。


「こっのおっ!」


 だが、簡単に倒されない流麗も流石だった。


 流麗はすぐさま体勢を整えると、組んだ状態から怒りの膝蹴りを放つが、ニーガードを装着している為か、朝来名にはあまり効いた様子が無い。


 流麗は得意の首投げで朝来名を地面に叩きつけると、パウンドのパンチで追い打ちをかけた。


 しかし、敵の方が圧倒的に人数が多い為、背後から流麗は組み付かれてしまった。


「流麗!」


 組み付いた奴の横から、無防備な肋骨を叩き折らんばかりのショートアッパーを撃つと、敵は堪らず手を放した。


「サンキュ! 武っチ!」


 そう言って流麗は敵を突き放すと、すぐに立ち上がったが、既にお互いの背を守り合う余裕もない程の乱戦になっていた。


「ゴメン……武っチ。こんな事に巻き込んじゃって……」


 流麗は泣きそうな声を出していた。


「まだ俺達は負けてない! 囲みを突破して逃げるぞ!」


「無理だよ……警察を呼べる余裕もないし。せめて武っチだけでも逃げてくんないかな?」


「バカ! 女が男に言う台詞かよ! 普通逆だろ!」


 そう言うと、俺は目の前の男を左のショートストレートで顎を跳ね上げ、右アッパーで撃ち抜いた。


 クソ!


 当たりどころが悪かったのか、もう拳が痛くなって来やがった。


 普段から巻き藁でも使って裸拳を鍛えるか、拳サポーターよりも厚手なオープンフィンガグローブを準備しておけば良かったかも知れないが、後の祭りだ。


「ハハハハッ! 頑張ってるじゃねーか! なぁ小碓!」


 その時、何処かで聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 一旦攻撃が止むと、俺達を囲んだ不良達の中から見覚えのあるドレッドヘアに黒人と見紛うばかりの黒い肌の人物が現れた。


 麻薬でもやっているんじゃないかと思わせる程、異様に目をぎらつかせた人物とは互いに知る仲であったが、それは旧交を温める様な仲では無い事は言うまでもない。


「まさかジムを辞めたのにまたテメーに逢えるなんてよぉ……嬉しくて仕方ないぜ」


 こちらにとっては全く嬉しくない再会であったが、取りあえず下出に出て様子を見ようと思った。


「足振さんお久しぶりですね。お元気そうで何よりです」


 男の名は足振辺あしふりほとり


 元・首師高校ひとごのかみこうこうの総番であり、かつて、同じジムであるActive-Network八皇子支部で俺が気に入らないとの理由でスパーリングをやらされ、ボコボコにしたところ、逆恨みをされ、帰り道で喧嘩を売られたが返り討ちにした奴だ。


「ケッ! まさかテメーが麗だかNEO麗だかのメンバーだったとは驚いたぜ。でも、俺もラッキーだぜ。今度こそテメーに突っ込めるんだからな」


 うげえ。


 そう言えば、コイツ両刀使バイいだったっけな?


 麗に加入して以来、何故かこの手の輩に絡まれやすくなった気がする。


 それはとにかく、話をしている間は攻撃をして来ないようなので、今は少しでも俺が体力回復の時間稼ぎをする事にした。


「足振りさん。もう卒業したんじゃないですか?」


「ああっ! ダブったけど何か文句あるのかよ!」


 時間稼ぎするつもりだったけど、下手な質問で怒らせてしまったか?


 足振は日本刀をスラリと抜くと、刃が照明の光を受けてギラリと反射した。


 オイオイ、シャレにならないぞ。


「今日はテメーを女にしてヤンよ」


 もしかしてアレを削ごうって気か? 正気じゃないぞ!


「ちょっ……一寸待ってください! その前に一つ聞きたいんですけど、足振さん。アンタ確か朝来名に負けて番長じゃ無くなったんじゃ?」


「るせえっ! 前、朝来名がNEO麗に負けて、OBの皆さんに嫌われたお陰で俺が再び総番に返り咲いたんだ!」


 そういや、包囲している連中の中には、明らかに高校生っぽくない老けたチンピラも含まれているが、コイツ等がOBって奴か。


 大方、NEO麗のメンバーをレイプさせる事を条件にOBを引き込み、ついでに朝来名も総番の座から追いやったのだろう。


 つまり、足振は実力じゃなくてOBに頼って権力を取り戻したって事か。


 俺はポケット内のスマホが震えた事を確認し、時間稼ぎはここまでだと察した。


「足振さん。何かチョーダサいっスね」


「死ねやコラアッ!」


 足振は刀で襲い掛かって来たその時、複数のバイク音がこちらに迫って来た。


「なっ!」


 異常を察知した足振がバイク音の方向を振り返ると、慌てて横っ飛びした直後、寸でのところで赤い車体のカワサキNinja250と、マッドグレーのビッグスクーター・ヤマハNMAX155、そして場に不似合いなホンダのスーパーカブ110が横切り、それぞれ二人乗りしたバイクが俺達の目の前に止まった。


 見覚えのないNinja250から降りた人物はオフロードヘルメットを脱いだ。


「麗参上! 武! よく持ち堪えたな!」


 麗衣は悪戯小僧みたいな笑顔を見せた。

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