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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第1章 ヤンキー女子高生の下僕は生きて二年生に進級出来ました。
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事情

「タケルもレイイも勿体ないな。何故プロになる気が無いんだい? 君達ならば、数年もかからず日本の団体のチャンピオンぐらいには成れるだろうし、二十歳になる頃にはワールドチャンピオンになるのも夢じゃないぞ?」


 俺はとにかく麗衣であれば国内の団体の規模によってはチャンピオンになれるだろうが、二十歳でワールドチャンピオンは流石にリップサービスが過ぎないか?


「まぁ、……俺にも麗衣にも事情があるんですよ」


「その事情。無理にとは言わないが、もし差支えが無ければ話してくれないか?」


 そうブラッドさんに聞かれた。


 麗衣には悪いが、約束をしてしまったので話さざるを得ないか。


 勿論妃美さんに聞かれては困るが、近日帰国予定のブラッドさん達に知られたところで差支えは無いだろう。


 そう判断し、他人に聞かれない様に少しブラッドさんを外に連れ出した。


 妃美さんには悪いが、ジムを辞めさせられる可能性もあるので彼女に聞かれる訳には行かなかった。



 ◇



「成程……暴走(Motorcycle)( gang)にやられた弟の敵討ちが目的か……」


 約束通りブラッドさんに麗衣の事情を話すと、彼は大きく溜息を吐いた。



 麗衣の弟のタケル君が見知らぬ暴走族のせいで事故に遭い植物状態になった事。


 タケル君が植物状態で入院中で一緒に暮らせない事。


 タケル君の敵討ちの為にキックボクシングを始めた事。


 敵討ちが終わるまではジムに迷惑が掛かるかも知れないのでプロには成れない事。


 アマチュアキックで自分に唯一勝っている相手に借りを返していない事を話した。



 4つ目の事情については最近聞かされたばかりであるが、麗衣なりにこのジムに対して義理を感じての事だろう。

 5つ目の事情に関しても最近聞いたのだが、あの麗衣に勝った選手が未だにアマチュアに留まっているというのか?


「レイイについては解った。だが、君までプロ入りするつもりがない理由は何なのかい?」


「俺は喧嘩の為にキックをやっているだけですから」


「ハハン。さてはレイイを守りたいってところか?」


 ブラッドさんは少年の様な表情で俺を揶揄うように言った。

 初対面にも拘わらず、あっさりと図星を突かれ、俺は言葉を無くした。

 そんな俺を見て、ブラッドさんは直ぐに真面目な表情に戻った。


「だから君達は自分よりも大きな相手との戦い方に慣れている感じだったのだな。でも、あまり関心しないな」


「どうしてですか?」


「レイイの弟の事は気の毒だ。気持ちも分かる。だが、君達には君達の人生があるんだ。恐らくレイイの弟もレイイが復讐をする為に彼女が傷つく事を望んでいないだろう。それよりか自分の為に新たな人生を歩んで欲しいに決まっている」


 そりゃそうだろう。


 ブラッドさんの言う事は正しいし、俺も同じことを考えた事がある。


 でも――


「俺達は理屈じゃないんです。正しいとか、正しくないとか、どっちでも良いんですよ。俺は麗衣が地獄に行くのなら俺もアイツの後に着いて行くのみです」


「愛する者を止めないで自分も同じ茨の道を行くか……。クレイジーだな。まぁ、彼女が聞いたら同意しかねないが……」


 ブラッドさんが再び溜息を吐くと、彼の後ろにレイチェル選手が現れた。


 レイチェルさんが沈痛な表情を浮かべている事から察すると、如何やら話を聞かれてしまったらしいが、元から直ぐに帰国する彼らには聞かれても構わないと思っていたし、ジムの人間に聞かれたわけでは無いのが幸いだった。


「Rachel. Did you listen to us?」

(レイチェル。俺達の話を聞いていたのか?)


「Yes, I can understand her feelings of separated from my family.」

(ええ、私には家族を引き離された彼女の気持ちが理解出来るわ)


「Do you think so too?」

(お前もそう思うか。)


「I'll never forget t()h()a()t() i()n()c()i()d()e()n()t().」

(私は()()()()を忘れていないわ)


「What should I do?」

(俺は如何すればいい?)


「What you can do as a trainer is fixed.」

(トレーナーとして出来る事なんて決まっているじゃない)

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