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イリュージョンライト~伝説覚醒~ヤンキー女子高生の下僕は〇〇になりました  作者: 麗玲
第1章 ヤンキー女子高生の下僕は生きて二年生に進級出来ました。
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男は敷居を跨げば七人の敵あり

「いやぁ~凄いスパーリングだったね」


 今日は初日なので軽め、との事で俺と吾妻君、音夢先輩と流麗がマススパーリングをして練習は終了になった。


 その後、俺はジムに行く前に勝子に音夢先輩とのスパーリングの感想を言った。


「まさか日本人には不向きだって言われているL字ガードをお目にかかるなんてね……しかも、コケ脅しじゃなくて、あんなにレベルが高くて驚いたよ」


 L字ガードは通常、肩幅の狭い日本人には向かないと言われており、日本人選手ではあまり見かけない。


「目標はあくまでも国体優勝だけど高校インターハイ出場レベルも侮れないわね」


「勝子の場合ブランクもあるし、そもそも5階級も違うじゃん」


 勝子が全日本アンダージュニアで優勝したのは中学1年の時だ。


 一つ上のカテゴリである高校の大会であるインターハイ出場、しかもライト級の音夢さんとあれだけやり合えるピン級の選手がどれだけ居ると言うのだろうか。


「まぁ、身長からして仮想男子相手の喧嘩対策スパーリングにも使えるわね。あの先輩は」


「それはそうかも知れないけど、今後お世話になる先輩だから怪我させたりするなよ」


 スパー中、頭に血を昇らせて音夢先輩に胴回し回転蹴りなんかやらなきゃいいけどな。


「じゃあ、俺はこれからジムに行くけれど、勝子はこの後如何するの?」


 サブトレーナーを辞めた勝子は部活終了後に何をするのか少し気になったので聞いた。


「私はまた空手を始めるよ」


「空手? てっきりボクシングジムにでも通うのかと思っていた」


 赤銅先輩が所属する米田ボクシングジムの米田会長と知り合いだったし、しきりに誘われていたので、そこに行くのかと思っていたが何故空手なのか?


「確かにボクシングに専念した方がオリンピックへの近道だと思うけれど、空手をやる事で良いクロストレーニングになるし、喧嘩対策を考えるとやっぱりボクシングだけじゃ厳しいからね」


 クロストレーニングとは自分の専門以外のトレーニングを行う事だ。


 クロストレーニングにより、身体機能のバランスを良くしたりパフォーマンスの向上に繋がるらしく、近年のアスリートは専門の競技だけでなく他競技もトレーニングする事がよくあるらしい。


「空手じゃないと駄目なのか? 俺達の通うジムじゃダメなのか?」


 あのジムならキックのみならずMMAや柔術まで教わる事が出来るのでクロストレーニングにはうってつけの環境ではあるのだが。


「うーん……あのジムには二年位お世話になったけれど、新しい環境でやりたいし、それに私はやっぱりキックより空手の方が合っているから。それにキックだと対武器術とか出来ないでしょ?」


「まぁ、それはそうだね」


 勝子としてはオリンピックを目指すだけでなく、「麗」のサブリーダーとして如何すれば自分が一番戦力になるのかを考えているのだろう。


「ところで流麗ちゃんの事どう思う? 本当にあんなものだと思う?」


 不意に話題を変えた勝子は流麗と音夢先輩のスパーリングについて聞いてきた。


 流麗と音夢先輩のスパーリングでは終始音夢先輩が圧倒していた。


 階級差があるとはいえ、勝子とのスパーを見た後では流麗は大した事が無い様にも見えるが、不良をぶちのめした時と比べると軽く流している様にしか見えなかった。


「さぁ……俺達が観ていたし、手を抜いていた可能性があるよね……」


「そうよね。わざわざ手の内を明かす訳無い物ね……流麗ちゃんの事、気を許しちゃダメよ」


「……その割にはお前、流麗のふかふかオッパイに挟まれて幸せそうな顔していたな。まるで流麗のペットみたいだったぜ……ぐはっ!」


 勝子のボディブローが俺の腹に突き刺さり、視界が真っ白になった。


 その日、俺は夕飯が食えなかった。


 男は敷居を跨げば七人の敵あり。 


 敵にも味方にも決して気を許してはいけないという事を俺は学んだ。

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