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澪の真意

「武っチ! 勝子ちゃん如何だった! ……って武っチ?」


 病室から出て来た俺を見て駆け寄って来た流麗は俺の顔を見て、少し後ずさりした。


「俺が如何かしたか?」


「あっ……御免……いつもより表情が怖かったから……って仕方ないよね……勝子ちゃんがあんな目に遭ったんだから怒っているんだよね?」


「……怖がらせて悪かったな。この後、流麗が勝子の事を看ていてくれないか?」


「うん。武っチはこれから如何するつもり? ……って聞くまでも無いよね」


 如何やら俺の表情を見て、これから俺が何をしに行くつもりなのか、見抜かれてしまった様だ。


「そう言う事だ。ところで、澪は知らないか?」


 俺達と共に病院に残る事になった澪の姿が見当たらない。


「そういえば何時の間にか居ないね?」


 流麗はきょろきょろと周りを見渡したが、澪の姿は見当たらない。


 澪だけは伊吹達を潰しに行くことを反対していたが如何いう事だろうか?


「……まさか!」


「あっ! 武っチ! 何処へ行くの!」


 駆けだした俺の背に流麗が声を掛けてきたが答える暇は無い。


「勝子を頼むぞ!」


 その一言だけを残し、俺は澪が居るであろう場所まで走って行った。



 ◇



 案の定、澪は病院に設置されている公衆電話に手をかけていた。


「はい……事件です。場所は……」


 110番通報した場合、必ず最初に「事件ですか? 事故ですか?」と聞かれるので、事件と答えているのだろう。


 俺は澪が説明を始める前に公衆電話のフックを下ろし、強制的に電話を終了させた。


「何するんですか! 小碓君!」


 澪が俺に向かって抗議めいた口調で言った。


「何処に行ったのかと思えば……警察に通報するつもりだったんだろ?」


「いや、違いますよ。友達に電話してたんですよ。アハハ……」


 ジリリリ……


 警察の電話の逆探知で公衆電話のベルがやかましく鳴り響いた。


 俺はフックを再び上げ下げしてベルを強制的に止めた。


「下手な嘘つくな。友達との電話で逆探知なんかされるか? それに友達へ電話するならスマホでも使えば良いだろ?」


 何らかの弾みで麗衣達に澪のスマホを見られたら通報した事がバレてしまう。


 あるいは、元暴走の澪としては警察にスマホで通報したくないという心情で公衆電話を使ったのか。


 まぁ、今はそんな事は如何でも良い。


 澪がこんな事をした理由を問い質さなければ。


「……さっき言った通りですよ。俺達じゃあ伊吹には勝てません。だから国家権力を利用しようって話ですよ」


「それは麗衣が許さなかっただろ?」


「麗衣さんが不良だから警察に頼りたくないんですかね? 俺達未成年でも消費税っていう立派な税金を払っているから警察を利用しないと」


「そんな話じゃないだろ! それよりかすぐに単車を出してくれ! 立国川ホテルに行くぞ!」


 俺は澪の肩に手をかけて詰め寄った。


「……アンタ。まさか伊吹に勝てると思っているんですか?」


 澪は俺の手を払うと、また公衆電話の受話器を握ろうとした。


「澪……如何したんだ? 友達の香織が攫われたから、何時もの君だったら先陣を切って助け出そうとするだろうに」


 俺が受話器に乗せた澪の手の上に手を乗せると、澪は溜息を吐いた。


「だから、一番ベストな方法がコレなんですよ。邪魔しないでください」


「駄目だ。それに今のタイミングで通報したら先に行った麗衣達だって検挙される可能性があるだろ?」


「それでも! 伊吹と直接やり合うよりは何万倍もマシです!」


 もしかして、澪は本気で麗衣達が負けるとでも思っているのだろうか?


「伊吹は銃弾を使い果たしたぞ? 銃をぶっ放すしか脳が無い様なヤツにどうしてビビってるんだ?」


「アイツの地元の神奈川だけじゃなくて、静岡、東京にまで名前が鳴り響いて、ヤクザも避けて通るファントム……伊吹尚弥がただ銃をぶっ放すだけで有名になったと本気で思ってますか?」


 受話器の手を振り払い、俺に向かって澪が睨みつけて来た。


 澪は俺に対して揶揄うことは有っても基本的に好意的な行動を取るような事はあっても、今の様な態度はとった事が無い。


 俺が澪の真意を測りかねていると、Kids Returnに設定したスマホの着信音が鳴り響いた。


 こんな時に誰からと思い、スマホの画面を見ると、先程ゲーセンで情報収集時に話を聞いた鮮血塗之赤道ブラッディ・レッド・ロードナンバー5の津頬つつら先輩だった。


「ハイ。小碓です」


「小碓! 今、何処に居るんだ? まさか伊吹達と鉢合ってねーよな!」


 開口一番、津頬先輩は俺を案じる言葉を言った。


「いいえ。俺はまだ会っていませんが、これから潰しに行く予定です」


「止めておけ! 調べてみたらアイツはとんでもねぇ化け物だった!」


 そして、津頬先輩は伊吹尚弥という男の俄かには信じがたい、まるで御伽噺の様な伝説について語り出した。

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