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睡眠術士の腕枕  作者: 春戸稲郎
9/13

夢枕の語り

 

 ……妖怪? なんだそりゃ。

 家計図でもあんのか?



 笑うでしょ。

 ……妖怪の〈(ばく)〉って知ってる?



 哺乳類のバクならわかるけど……



 哺乳類のキリンとは別に神獣の麒麟がいるように、〈獏〉と呼ばれる妖怪がいるんだ。

 眠る人間の夢枕に現れて、悪夢を食べてくれる、優しい妖怪。



 ふーん。……それが、お前のご先祖様?



 家計図があるわけではないけど、そういう言い伝えがあるの。

 死んだひいおばあちゃんの話。

 うちの血統では、ときどき、先祖返りをする子供が生まれるの。



 先祖返り……隔世遺伝ってことか?



 そういう小難しい話じゃなくて……才能のある子供が生まれるの。

 人を眠らせる才能が。



 ……それが、お前?



 多分ね。

 俺ね、本当に、人を眠らせるのが得意なんだ。

 赤ちゃん相手だったら、抱っこしてあげればすぐに眠らせられる。



 そりゃすごい。夜泣きで困ってるママさんに喜ばれそうだ。



 そう。実際、喜んでもらってるよ。



 ……あ、もしかして、お前のバイトって……



 アルバイトっていうのは嘘。ほんとはボランティア。

 俺ね、〈睡眠術士〉っていう肩書きと〈マクラ〉っていう芸名で、人を眠らせてるの。



 ………………

 人を眠らせる才能っていうのは、話術みたいなものか?



 そうじゃない。

 体質、というべきかな。



 体質?



 ……俺の声……俺の吐息……俺の体温……俺の視線……

 俺の全てが、人を眠らせるように、できている。

 ひいおばあちゃんもそうだった。

 俺たち兄弟は小さいころ、みんなひいおばあちゃんのそばで昼寝させられていたよ。



 ………………

 だから、俺を、眠らせようとしてくれたのか?



 そういうおこがましいところも、あったかもね。

 でも、そてっちゃんと仲良くなりたかったってのが、一番だよ。



 ………………



 いえなくても、大丈夫。

 怖いことがあったとしても、大丈夫。

 それは過去のこと。

 そてっちゃんの悪夢は食べてあげられないけど……そばにいるから。

 俺を信じてくれれば、怖いことは何もない。



 ……そうか。

 ありがとう。



 いえいえ。









 こいつとなら、大丈夫かもしれない。

 そう思って気が緩んだ次の瞬間に、桐山は深い眠りの底に沈んでいった。



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