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前編 皆から想われるあの子

普段はどの話から読んでも問題ない一話完結の「五人少女シリーズ」ですが


今回に関しては他の話をいくつか読んでいる人向けの回になっています。


少なくても”あの子”と呼ばれる描写されない存在が他の登場人物からどういった扱いをされているか認識していたほうが楽しめると思います。


そして可能であれば、展開に暗い気持ちになっても


最後まで読んでくれることを祈ります。


 

 五人のかしましい友達同士。


 だがただ一人だけ、例外の少女がいる。


 仲間はずれという意味ではない、除け者にされているわけではない。


 彼女は一人、みんなとは辿る運命が違っていた。


 たったそれだけの事。



「衣玖、準備できたか?」


「えぇ」


 いつもの家。大抵五人一緒の家の玄関で、静かに声をかける留音と、無表情に応える衣玖。真凛と西香も続くが、今日は一人足りない。あの子がいない。


 みんなの足取りも表情も重い。でも、行かなきゃならない。


「ぐす……」


「真凛さん、大丈夫ですの……?」


「う、うん、大丈夫……っ」


 真凛は目に涙を溜めながら頷いている。皆が視線を外した所でコソコソと目を拭った。


「行こう」


 その様子を見ても、留音はなお先頭をきって前へ進む。絶対にみんなで行かなきゃならない。あの子のために。


 あの子の元に向かっている最中は、誰一人として口を開くことはなかった。ただ寄り添うようにバスに乗り、感じないはずの寒さを凌ぐように身を寄せ合う。留音以外は小さく震えていた。留音は最年長である自覚から努めて冷静を装っているに過ぎない。


 そして、目的の場所に四人は辿り着いた。彼女の居る場所へ。


 エントランスを通り、何度か来たことで場所を覚えた部屋へ。扉を開けると落ちかけの陽のオレンジ色い光が綺麗に差し込んでいる。


「あ、……みんな、来てくれたんだね……」


 綺麗でか細い声。部屋に味気無く響いているメトロノームのように規則的なピ、という音にもかき消されそうなくらい、弱い声。


「当たり前だろ……あたしたちが来ないわけないさ」


 留音が優しく微笑むと、ベッドに横たわるその子も、嬉しそうににっこりと微笑んだ。それを見た他の三人も安堵したように微笑み返す。


 整った白い部屋、清潔なカーテン、静かな室内、薬品のにおい。ここは病院の一室。響く無機質な電子音は、ベッドにいる彼女の鼓動を電気的に表している音。広めでありながら一人用の個室で、病院内では”最後の部屋”と患者の間で言われている。この部屋から普通の病室に戻れた患者は全体の一割にも満たないからだ。


 四人の少女たちと最高の思い出を作っていた彼女は、不治の病に伏していた。


「あの、元気そうで、良かったよ……ホッとした」


 衣玖がそう言いながらその子の手に触れる……でも衣玖は一瞬、自分の触れた物がなんだかわからなかった。何か手じゃないモノを握ったような気がして。


「あはは、でも……。今、手を握ってくれてるんだよね、衣玖ちゃん……えへへ、感覚がね、もうわからないんだ。ちゃんと動かせてるかな、握り返してるんだけど……」


 それでも心配しないでね、まるで気遣うような言い方をする彼女の言葉に衣玖はハッと息を飲み、うん、しっかり感じてるよ……そう頷いている。留音がちらりと見るに、その子の青白い手はもう動いていなかった。気取られないようになのか真凛も急いで近づき、もう片方の手を取る。


「わ、わたしもっ……あぁっ、とってもあったかくて、優しい手ですっ……また一緒に手を繋いで、ピクニックとか、いっぱい!行きましょうねっ……」


 彼女の手を両手で包み込んでいる真凛の言葉は明らかに無理をしているのがわかる。そのあたたかさにその子も精一杯答える。


「うん、真凛ちゃん、ありがとう。真凛ちゃんの手も……きっとすごくあったかいよね。本当にありがとう」


 彼女から一筋の涙が溢れた。みんなには見せたくなかったが、我慢できなかったのだ。


「ちょ、ちょっと、今生の別れがあるわけでもないのですし、泣かないでくださいましっ。わたくし、お友達の涙なんて見たくありませんわ!」


 西香はハンカチで優しくそれを拭うと、彼女はまた幸せそうな表情を浮かべて応える。


「西香ちゃんも、人のこと言えないよ。えへへ……ありがとう」


 そう言われた西香は笑顔を返そうとしたのだろう、でも視界が滲んでしまってまっすぐ彼女を見られなかった。


「……やめろよ!!」


 そこで留音が大声をあげる。三人は驚いたように留音を見るが、その子だけはわかっているかのように、優しい光を灯した瞳を留音に向ける。


「やめろよ……そんなにありがとありがと言うなよ……聞きたくないよっ!お礼なんてあたしらの仲にいらないだろ!?これからもずっと一緒なんだから……そんなにお礼なんて言うなよ……」


 強がっているが声は震え、拳を目一杯握り、瞳の光はうるうると揺れている。そんな留音の気持ちを代弁するように、微笑む彼女は涙を流し、震えた声で、でも留音を気遣うような明るい声で返した。


「留音ちゃん……だめなんだ。えへへ、だめなの……もう……だめなんだって……」


 これから彼女が言おうとしている事は、いずれこうなるだろうと散々聞かされてきた事だったから、みんな想像はついている。


「だめじゃないよ、絶対だめじゃない……あたしらがなんとかする、なんだって出来るはずだよ、なんだって……!」


 これはただ認めたくないだけ。子供のように喚いて、事実から目を逸らしたいだけ。彼女は静かに事実を告げる。


「お医者さんがね、末端が死んで、保ってもあと……一日だって。もう半日経っちゃった。……だから、みんなにいっぱい伝えたいんだ、私を……仲間に入れてくれてありがとうって」


 衣玖も真凛も、手を握ったときになんとなく気づいていた。硬くなって冷たい手。動きようのない手をなんとか温めてあげたくて、漏れ出そうになる嗚咽を必死に殺しながら必死に握る。


「……聞いてられませんわ!何かの間違いです!ヤブ医者を問いただしてきます!」


 西香は普段見せない怒りを露わにし、ガツガツと足音を立てて部屋を出て行く。


 もう何度か顔を合わせた彼女の担当医に、西香は文字通り詰め寄っていた。


「どういうことです……!?あの子を治すんじゃなかったんですの!?医療費が足りないのなら、わたくしがまたいくらでも工面します!きょ、今日もほら、こんなにたくさんお金を持ってきてますの!すごいお医者さんを呼んで、彼女を治して下さるんでしょう……そのためにわたくしはっ……」


 ヒステリックな声が段々と弱くなっていく。周りの看護師たちもある程度事情を知っているのか、涙を流しながら詰め寄る西香を止めようとせず、同情するように見つめると主治医はこう返した。


「……ダメなんです。あの病は、現在の医療だと進行を遅らせることしかできなくて……もうそれも限界まで……」


 医者は目を逸らす。必死な少女の訴えを聞けない無力さを痛感しているのだ。


「だ、だって、お金なら……っ、お医者さんを……もっと呼んで……あの子っ、少し前まで元気だったんです……」


 西香は医者に縋りつくように頼んでいるが、その口調は段々と弱まっていく。それはもうどうにもならない事を悟っているようだった。


「……残念ですが……今は近くに居てあげる方がいいでしょう……」


 トドメをさされた西香は手にあった自分で必死に集めたお金をばら撒き捨て、部屋の前まで来ると涙を拭き、深呼吸を終えてから戻る。みんな静かに身を寄せていた。


「や、やっぱりあの医者はヤブですわ。問いただしたら、あなたはやっぱり大丈夫で、きっと良くなるって……」


 乱れる息遣い、震える声。言葉にしたら何かが変わるんじゃないか……そんな願望で無理矢理明るく言おうとする西香の言葉が嘘だという事はみんなわかっていて、誰一人喜ぶ事はしなかった。


「西香ちゃん。いいんだよ、私、もうわかってるから……ごめんね、治らなくて、ごめんね……」


 また涙を流している彼女を、何かから守ろうとするように足早に近づき、優しく涙を拭う。


「何を言っていますの!謝る事なんて何もありませんわよ……!わ、わたくしたち、一番のお友達でしょう……?」


 そう言った西香に、彼女はとても嬉しそうに頷いた。こんな自分を一番の友達と思ってくれる西香への感謝で溢れてくる。


「うん。西香ちゃんの友達にしてくれてありがとう……すごく嬉しいよ。もっと……一緒にいたかった……うっ」


 最後まで喋る事も出来ず、コホコホと咳き込む。喉の奥から空気が漏れるような音の嫌な咳だった。それに何か思うところがあるのか、彼女は深呼吸を挟んで話を仕切り直す。悲しみを押さえ込み、みんなにしっかり伝えようとハッキリした声でこう言いだした。


「ねぇみんな……聞いて欲しいんだ。あのね、みんなといる時間、本当に楽しかった。こんな私でもみんなずっと一緒にいてくれて……めちゃくちゃな事も多かったけど、いつも楽しかったよ。みんなと出会えたから、病気の事も忘れてたくさんニコニコ出来たんだ。こほ、けほ、……本当にありがとう……だから最後のお願いを、聞いて欲しいんだ」


「最後なんて言わないでよ……あなたのためだったらいくらでも聞くから……」


 衣玖は手を強く握りしめ、祈るように応えている。


「……ありがとう。あのね、私、もういつどうなっちゃうかわからないから……みんな、私の最期を見ないで欲しいの……みんなはいつも楽しくて、笑っていて欲しいんだ。だから、私がいなくなっても落ち込んだりしないで……私はずっとどこかにいるって思ってて欲しい。ただ会えないだけなんだって……だから……」


 ここで一度言葉を途切らせた。息を吸う……震えながら。でも怖がっているような声は、みんなのために出せない。だから息を吐いて気持ちを落ち着かせ、もう一度ゆっくり吸ってから、やっと口に出した。


「もう、お別れしよう。きっとまたいつか会えるから……」


 でも最後まで保たなかった。言葉の最後に泣いてしまいそうな声を出してしまう。幸いだったのはすぐ後に苦しい咳が登ってきてごまかせた事。でもみんなが納得してくれるかというのは別の問題。


「……嫌です!そんなの嫌ですわ!わたくしはずっと一緒に……だって、初めてできたお友達なんですもの!あなたがいなくなったら……わたくし……」


 西香はもう涙を抑えるでもなく、決別という恐怖に怯え、懇願するように横たわる彼女へしがみつく。


「だいじょうぶ……西香ちゃんはとってもいい子だもん、お友達、いっぱい出来るよ。知ってるんだ、西香ちゃん、私の為にお金沢山集めてくれたんだよね……意味なくなっちゃってごめんね……でも本当にありがとう。西香ちゃんに出会えて嬉しかった……ずっと、友達って思っててくれたら嬉しいな……」


 そう、西香がお金を集めていたのは彼女の医療費のためだった。無二の友達を助けるために、どうしてもお金が必要だった。そのお礼を返す言葉は、西香の感じていた恐怖感を和らげる。


「当たり前ですわよ!最高の友達を忘れたりなんてしませんわ……絶対……」


 彼女と言葉を交わした西香は力を抜き、微笑みかけてそう言った。


「衣玖ちゃんも真凛ちゃんも、本当にありがとう……もう食べられないけど、真凛ちゃんの料理、美味しかったなぁ……それに私が埃を吸うといけないからって沢山掃除をしてくれたり、大変だったよね」


「そんなこと、ありませんよっ……わたし、掃除好きなんですよ……?全然大変なんかじゃ……」


 真凛が過剰に汚れを嫌う理由……元々綺麗好きではあった。でも、もっと大事な理由もあったのだ。


「ありがとう、真凛ちゃん。真凛ちゃんが見せてくれたいろんな世界、楽しかった……忘れないからね。衣玖ちゃんも……私の知らない話、沢山教えてくれたね。ヘヴィメタルのライブ、一緒に行ってみたかったな……楽しそうって、ずっと思ってた……でも、行けなくてごめんね」


 彼女の涙を堪えて揺れる声に、衣玖はしくしくと泣きながら首を振りながら手を握るだけで、なんの言葉も返せない。ただ何か返さなきゃと「うぅん、いいの」と掠れるような声で返事をするだけ。ここに来て無力な自分を呪いたくなる。


「留音ちゃん。買ってくれたプラモデル、わたしも作ってみたんだ。留音ちゃんのみたいにかっこよくならなかったけど……どうかな……?」


 ベッドの隣にあるロボットのプラモデル。留音が入院の暇つぶしにと買った比較的簡単なモデル。作り出した時、既に手の感覚に難があったのか、デカールが大きくズレていたり、ゲートが処理しきれていない部分が見受けられる。でも彼女はきっと、精一杯作ったのだ。最期の時を迎えるまでに友達が好きなものを知ってみたくて。作っている間の彼女の幸せそうな顔を、医者は見たことがある。


「……あぁ、よく出来てるよ」


 留音は作ってくれて嬉しい気持ちを伝えるように微笑むと、彼女もそれが嬉しいと笑った。


「よかった……留音ちゃんは、かっこいいお姉ちゃんみたいで、とっても頼りにしてたんだよ……本当に、みんな、ゲホッゲホッ」


 留音に微笑みかけると、するべき事を果たして気が緩んだとでもいうのか、突然大きな咳をし始める。みんなが心配して寄り添うと、彼女はなんとか抑え込むように言った。


「本当にみんな大好き。そしてありがとう。だからもう行って……行ってください。もう、本当に辛いんだ……ごめんね……」


 ポロポロと涙が溢れる。もう止められない。四人ともお互いを見あって、どうすればいいのかわからない。だがそこで決断したのは留音だった。


「……行こう、みんな。またどこかで、会えるんだから……」


 後ろを向き、自分の表情を隠すように直ぐに部屋を出て行く留音を、泣いたまま笑顔で見送る彼女は、「ありがとう」とさえ呟いた。


 留音に続き、衣玖も真凛も「またね」と苦しそうに言って最後に目を合わせる事もなく部屋を出て行った。


「わたくしは嫌ですわよ……信じられませんわ、あの人たち……わたくしは絶対離れたくありませんのに……っ!」


 衣玖がさっきまで握っていた手を、今度は西香が取る。彼女はそれが嬉しくてたまらない。でも。


「西香ちゃん……ダメだよ。あなたも出ていって」


 その子は少し突き放すような口調で言うのだ。


「どうしてですのっ?だって……」


「あのね、衣玖ちゃんが話してくれた事があるの。物事はちゃんと見ないと確定しない事があるんだって。だからね、私が生きてるか死んでるか見ないままでいたら、そのどっちの可能性も残るんだよ。だから……」


 これは衣玖らしい量子力学の基本の話だ。長くてもあと半日で死んでしまうと言われていたって、直接死の場面を見なければその生死はわからない。もしかしたら医者の寿命の読み違いで生きながらえている間に特効の新薬が開発されて、そのまま簡単に治ってしまってどこかで生き続けるという事だって、可能性が完全なゼロじゃないならありえるという考え方。今回に関しては屁理屈にも等しいその意見を、西香は否定してもっと一緒に居たかった。でも。


「……私が死ぬところ、見ないで欲しいの……」


 ただその言葉が、西香に届いた。見たいわけがない。西香は怯えるように手を離し、何も言えず逃げていく。走って逃げて、留音たちにぶつかって泣き崩れた。


 病室にただ一人残された少女に。ホッとしたような表情で、扉が閉まるのを見ていた。


「みんな、本当にありがとう……」


 そう呟いたら途端に怖くなってきて……今までよりずっと涙が出てきた。もう拭いてくれる友達はいない。呼ぶ事だって出来ない。一人で死ぬという恐怖に押し潰されそうになりながら、死ぬまで泣くしかなかった。怖い。怖い。本当は最期までみんなと一緒にいたい。でも、みんなにそんな所を見せて悲しませたくない。その子はどこまでもみんなを想う、優しい少女だったのだ。



 来た時と同じように、途中までは無言だった。もう帰りのバス停に着くというところで。


「……これが、一番良かったんですよね……良かったんですか……?」


 真凛がみんなに問いかけた。


「私にはわからない……あの子の意思を尊重したとは言える……でも、一番良いかはわからない。あの子は今一人ぼっち……そうさせるのが一番なんて……」


 衣玖をはじめ、みんなそう思ってる。本当にあの子はこれで良いと思ってるのか。


「友達ってなんなんでしょう……辛いところや苦しいところを見せないもの……?わたくしは友達初心者ですけど……わたくし、あの方との事でしたら……悲しくても一緒にいたい気がするんです……違うんでしょうか……」


 留音は西香の言葉に目を見開いた。留音があの時決断したのは、苦しむ彼女を見たくなかったから、逃げたんだ。意思を尊重したといえば確かにそうかもしれない。誰よりも優しいあの子だったら、きっと自分の苦しむところを見せてみんなを悲しませたくないのは本心の一つにはあるだろう。でもそれだけが全てであるわけがない。きっと怖くて震えてる。留音だってそれをわかってたはずなのだ。


「あぁクソッ、あたしは何やってんだ……。そうだよ、何があったって一緒。それが仲間ってもんだよな。あいつの意思なんて関係ねぇ、あたしらが一緒にいたい。怒られたって全部聞いてやりゃいいんだ。こんな時に一人になんてさせられないよな!戻ろう、あいつの部屋まで!」


 みんなの瞳が、まるでその言葉で晴れたように輝いた。病院内では走らないように、最大速度で向かう。でも病室の前まで来て、我慢出来なくて走ってしまった。


 開ける。扉を。みんなで。横たわる彼女は驚いたようにみんなを見返し、笑いかけて。それを見たみんなも笑顔になって。


 良かった……もう離れないよ。そう伝えるために彼女の元へ。


 手を取ってあげよう。


 涙を拭いてあげよう。


 でも彼女はーーーみんなの手が届く前にーーーコクリと首を項垂れて。



 部屋にピーという単音が響いた。



 規則的な空白も無く、ただただ響き続けた。



 誰もそれが何の音かわからなかった。鳴った瞬間の時間がスローになって、長く感じているだけだと錯覚してるに違いないとさえ思った。


「え?」


 目を瞑った彼女が項垂れたまま動かない。多分寝てるだけだ、そうに決まってる。すぐに起きて、またいつもみたいに微笑んでくれる。


 でも、今起きて欲しい。怒ってもいいから、今すぐ目を開けて。


「な、なぁ、戻ってきちゃってさ、怒られるかなって思ったんだけど……」


 留音は瞬き一つもせず、茶化すような口調を震わせながら、横たわる彼女に触れようと一歩ずつ前へ。


 その時後ろから医者と看護師がドタドタと四人を押しのけて部屋に入り、彼女の元へ。まるで時が早く進んでいるよう。医者たちが何をやっているのか、全然わからない。治してる?違う。


「ご臨終です」


「……え……?」


 今度は世界が止まったかのようだった。誰かが泣いている声を聞いて、お互いに初めて時間が経っているのを認識する。



 こうして彼女たちは一人の尊い仲間を失った。



ここで読むのをやめてしまうと、本当に終わってしまいます。

あの子はきっと続きを読んでくれることを望むでしょう。


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