妖精と姫君 -2-
_____________________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
妖精の言葉にうなずくと、お姫様は表情を引き締め、妖精に問いかけました。
あの方が今、どこにいるか教えて。
妖精は大きく息を吸うと、ふうっと勢いよく吐き出しました。すると部屋の北側にある大きな窓がひとりでに開き、夜気をまとった風が部屋に流れ込んできました。
あの窓の向こう、まっすぐに行った先さ。
お姫様は開け放たれた窓に駆け寄りました。お城の中で最も高いこの部屋からは、地面がはるか遠くに見えます。塔の下には無数の松明の灯りがゆれていました。お姫様を逃がさないよう、兵士たちが塔を見張っているのです。
ここから飛べる?
お姫様は怪物がいるはずの、夜の闇の向こう側を見据えながら言いました。
もちろん。あなたに三度羽ばたける翼をあげる。
妖精がぱちんと指を鳴らすと、お姫様の目の前に、翼の生えた美しい靴が現れました。お姫様はそれを履くと、窓枠に足をかけ、迷うことなく外へと飛びだしました。
バサッ
靴についた翼が大きく羽ばたき、お姫様を空高く舞い上げました。お姫様は細く頼りなく夜を照らす月を横切り、お城の外を目指します。しかし、一度羽ばたいただけでは、ずっと空を飛び続けることはできません。高度は徐々に下がっていき、そして、お姫様の目の前に、お城を囲む黒々とした壁が迫ってきました。あぶない、ぶつかるっ!
バサッ
壁に激突する、まさにその時、靴の翼がもう一度大きく羽ばたきました。お姫様の身体は再び舞い上がり、お姫様を閉じ込めていた高い壁を軽々と超えていきました。
城壁から少し離れた場所に、お姫様は降り立ちました。地面に下りる直前に、靴の翼はもう一度羽ばたき、着地の衝撃を打ち消してくれました。役割を終えた靴の翼は、光の粒となって風に溶けていきました。お姫様は手でそっと靴を撫でると、闇に覆われた夜の森を鋭く見やり、そして駆けだしました。
まてまてまって、落ち着いて!
急ぐ気持ちは分かるけど、
僕の話を聞いておくれよ!
走るお姫様の背に、慌てた妖精が声を掛けます。お姫様は走るのをやめて振り向くと、怪訝そうな表情を妖精に向けました。
あなたがどれだけ駆けたって、
風の速さに敵わない。
パンはパン屋に頼むだろう?
あなたの騎士がいる場所に、
早く着きたいっていうのなら、
風の馬こそふさわしい。
妖精はそう言って、パチンと指を鳴らしました。すると、お姫様の目の前で徐々に風が渦を巻き、つむじ風が巻き起こります。顔を打つ強い風にお姫様は思わず目をつむりました。風はすぐに収まり、お姫様が目を開けると、いつの間にか目の前に美しい馬がいて、じっとこちらを見つめていました。馬の身体は半ば透き通り、ゆるやかに風をまとっています。
さあ、馬の背に、お姫さま。
あなたが一言命じれば、
世界のどこでもあっという間さ。
妖精の言葉に頷いて、お姫様は風の馬の首を撫でると、
お願い。私をあの方のもとに。
そうお願いしました。風の馬は返事をするように嘶くと、お姫様の服を噛んでひょいっと背に乗せ、ものすごい速さで走り始めました。
_____________________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




