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騎士と姫君  作者: 曲尾 仁庵
怪物
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騎士と怪物

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 なぜ殺さない?


 地面に膝をついて、騎士は怪物を見上げていました。したたかに打ち据えられた右腕が、だらんと下がっています。地面には根本から折れた剣が転がり、そして騎士の視線の先には、体に真新しい傷を増やした怪物が、槍の柄を騎士に向けて立っていました。

 怪物は槍の柄を引くと、乱れた息を整え、騎士に言葉を返しました。


 血に汚れた手で、あの人の手を取ることはできない。


 怪物の言葉に、騎士は少しの間ぽかんとした表情をしていましたが、やがて表情を緩めて地面に腰を下ろしました。


 お前が人間だったら、今すぐにでも家臣に誘っているところだ。


 そして懐から小さな瓶を取り出し、怪物に向かって放り投げました。怪物は瓶を受け取ると、目の前にかざしました。瓶の中には白い丸薬のようなものが入っていました。


 これは?


 いぶかる怪物に、騎士は背を丸め、地面を見つめながら答えました。


 痛み止めだ。もっとも、人間以外に効果があるかどうかはわからないが。

 

 ありがとう。


 怪物はお礼を言うと、瓶から一粒、痛み止めを取り出し、口に入れました。騎士はうつむいたまま力なく首を振ると、


 礼など言うな。私は負けたのだ。


と言いました。怪物は無言で騎士に頭を下げると、騎士に背を向けて歩き出しました。


 お前は、死んではならん。


 騎士の、呟くようなその言葉に、怪物は振り返りました。そして、


 ありがとう。


 そう言ってほほ笑むと、城へ向かって再び歩き始めたのでした。


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