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騎士と姫君  作者: 曲尾 仁庵
怪物
77/95

怪物 -4-

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 怪物の前に、一人の騎士が姿を現しました。銀に輝く鎧を身に着け、抜き身の長剣を手にしたその姿は、他の兵士たちとは明らかに異なる、高貴な雰囲気をまとっています。その隙のない動きからは、騎士が相当の手練れであることが見て取れました。怪物は先の折れた槍を構え、騎士と対峙しました。

 騎士は無造作に怪物との距離を詰め、鋭い突きを放ちました。怪物は槍の柄で剣を横に打ち払います。騎士は打ち払われた勢いをそのままに、くるりと回って剣を横なぎに払いました。怪物は後ろに飛びずさり、その一撃を躱しました。怪物の胸に一筋の傷が浮かび、血が滲みます。騎士の剣の切っ先が、怪物の皮膚を切り裂いたのです。

 騎士は剣を地面に向けると、正面から怪物を見据え、口を開きました。


 なぜそこまで彼女にこだわる?

 無力であることに甘えて、自らは何もしようとしないあの娘に?


 怪物は軽く首を横に振ると、穏やかに言いました。


 努力をするには基盤が必要なのだ。自分自身に努力をするだけの価値があると、少しでも信じることができなければ、努力などできない。

 あの方はずっと、自分の価値を否定され続けてきた。お前はダメだと、姫であること以外には何の価値もないのだと、言われ続けてきた。だから誤解している。自分には何の価値もないと思い込んでいる。


 怪物の言葉に、騎士は苛立った表情を浮かべ、叩きつけるように言葉を返しました。


 お前の言葉が真実だとしても、それは本人が解決すべき問題ではないか!

 ダメだと、価値がないと言う者たちに、違う、私には価値があると、そう彼女自身が言い続けなければならないのだ!

 周囲に流され、泣いているだけの人間に救いを求める資格はない!


 騎士の厳しい言葉に、怪物は騎士の人生を垣間見た気がしました。きっとこの騎士も、順風満帆な人生を送ってきたのではないのでしょう。誰かに自分の価値を否定されるたびに、きっと彼は自らの力で相手をねじ伏せてきたのです。怪物は静かに騎士を見つめました。


 誰もがそのように強くあれるわけではない。自らを自らの力で救うだけの力を、持つことができなかった者もいるのだと思う。

 私も同じだった。独りで生きていた頃、私は自分の生に何の価値があるのかと、ずっと考えていた。誰からも必要とされない私が、生きている意味があるのかと。

 だから、私はあの方に伝えようと思う。

 あなたが、大切だと。


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