少年
_____________________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
騎士たちは去り、森に静寂が戻ってきました。結局、騎士たちは礼を言うことも、褒美を与えることもなく、用事は終わったとばかりにお城に帰っていきました。少年は釈然としない思いを抱えたまま、夜明けを迎えつつある森に佇んでいました。
今、少年の目の前には、お姫様をさらったという怪物が倒れています。まだ息はあるようですが、ひどいケガをしていて、このまま放っておけば、きっと死んでしまうでしょう。少年は腰に差した山刀に手を掛けました。この怪物の首を取れば、少年は英雄と呼ばれるかもしれません。王様から褒美をもらうことだって、きっとできるでしょう。
――はぁ
少年は運命を嘆くように、深いため息を吐きました。少年には怪物を殺すことなどできなかったからです。なぜなら、少年と怪物の間には、少年がこの世で最も信頼する相棒がいて、じっと少年を見つめているのです。
そいつを助けろって、そう言うのか?
相棒は何も答えず、じっと少年を見つめるばかりです。まるで、言わなくてもわかるだろう、と言わんばかりに。
――はぁ
少年はもう一度、深いため息を吐きました。怪物を殺せば英雄、では怪物を助けたら?
そんなことがお城の連中に知られたら、良くて犯罪者、悪ければ即、処刑でしょうか。少年は相棒の傍にしゃがみ込むと、その頭を撫でながら言いました。
分かったよ。降参だ。
お前はその怪物に、助ける価値があるって言うんだな?
相棒は自信たっぷりに、わん、と返事をしました。少年は頷くと、荷物袋から布を取り出し、怪物の傷の手当てを始めました。無理に手伝わせておきながら礼も言わない騎士たちに対する腹立たしい気持ちも、もちろんあります。騎士たちの鼻を明かしてやろうという気持ちも。しかし何より、少年は見ていました。騎士たちが怪物と戦う時の様子を。騎士たちは怪物がお姫様を守ろうとすることを知って、わざと槍をお姫様に向けたのです。怪物はお姫様をかばい、その身に槍を受け、倒れたのです。お姫様を傷付けることも厭わない騎士と、お姫様を必死にかばっていた怪物の、いったいどちらが『正しい』のか。その答えは明白でした。そして、あんな卑怯な奴らに手を貸してしまっていたことを、少年は心から後悔していました。
あんな奴らの思い通りになっちゃいけない。
あんたはまだ、死んじゃだめだよ。
怪物に呼びかけながら、少年は傷口を固く縛りました。少年の傍らでは、彼の相棒が誇らしげに少年の様子を見守っていました。
_____________________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




