現在 -17-
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妖精は近くに生えていた一本の木に近づくと、勢いよく蹴とばしました。がさがさと枝が揺れ、何枚かの葉っぱがひらひらと地面に落ちてきました。
やい、とっとと起きろ、このねぼすけめ!
妖精がそう言うと、蹴とばされた木の、ちょうど怪物の目と同じくらいの高さに切れ目がふたつ浮かび上がり、上下に開いてぎょろりとした目が現れました。さらには目の少し下に大きく真一文字の切れ目が現れ、大きく開いて口になりました。木は何を考えているのかいまいちわからない、ぼーっとした目で妖精を見つめると、ぽつりと言いました。
……痛い。
妖精は木の独特のテンポに調子を狂わされたのか、一瞬、何とも言えないような表情を浮かべましたが、すぐに気を取り直して木に命じました。
ここにいるおふたりが、追っ手に囲まれてお困りだ。
どうにかしておふたりを、安全に囲みの外にお連れするんだ。
いいな?
木は怪物とお姫様のほうをしばらく見て、そしてぽつりと言いました。
……わかった。
何なんだその間は。もっとシャキシャキしゃべっておくれよ。
妖精がイライラした様子でそう言いましたが、木はそれをさらりと聞き流して、周囲の木に呼びかけました。
……お願い。
木の呼びかけに反応して、周囲の木々や岩、草たちが一斉にざわざわと動き出しました。
どうするつもりだい?
妖精が木にそう尋ねると、木はやはりぼんやりとした、どこを見ているか分からない様子でしばらく動きを止めると、ぽつりと言いました。
……人間は知恵で方向を知る。
だから、知恵を裏切る。
妖精は渋面になって、
……意味が分からん。
と呟きましたが、それ以上説明するつもりはないのか、木は口を閉ざしました。
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