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過去 -10-
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突然、壁の向こうから聞こえてきた声に、お姫様はハッと息をのみ、体を強張らせました。こんな場所に誰かがいるなんて、思ってもいなかったのです。お姫様は口をつぐみ、息を殺して、じっと声の主が立ち去るのを待ちました。
だいじょうぶですか?
どこか、痛いのですか?
再び、壁の向こうから声がしました。
お姫様は声に応えず、しゃがみ込み、体を小さく丸めて、声の主が気のせいだと思ってくれるのを待ちました。
あなたの聞いた泣き声は、風が葉っぱを揺らす音。
ここには誰もいないのよ。
どうかここから立ち去って。
そう心の中で唱えながら、しかしお姫様は、奇妙な違和感を覚えていました。壁の向こうから聞こえる声には、欲や企みや、嘲りや侮りがないように思えたのです。でも、そんなことがあるでしょうか? 人の言葉が、ただ思いやりだけを乗せて届くだなんて、そんな夢のようなことが、本当に?




