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騎士と姫君  作者: 曲尾 仁庵
はじまりとおわり
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過去 -10-

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 突然、壁の向こうから聞こえてきた声に、お姫様はハッと息をのみ、体を強張らせました。こんな場所に誰かがいるなんて、思ってもいなかったのです。お姫様は口をつぐみ、息を殺して、じっと声の主が立ち去るのを待ちました。


 だいじょうぶですか?

 どこか、痛いのですか?


 再び、壁の向こうから声がしました。

 お姫様は声に応えず、しゃがみ込み、体を小さく丸めて、声の主が気のせいだと思ってくれるのを待ちました。


 あなたの聞いた泣き声は、風が葉っぱを揺らす音。

 ここには誰もいないのよ。

 どうかここから立ち去って。


 そう心の中で唱えながら、しかしお姫様は、奇妙な違和感を覚えていました。壁の向こうから聞こえる声には、欲や企みや、嘲りや侮りがないように思えたのです。でも、そんなことがあるでしょうか? 人の言葉が、ただ思いやりだけを乗せて届くだなんて、そんな夢のようなことが、本当に?


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