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 「万引き家族」という作品は、「家族」とタイトルにありますが、これはある種の皮肉であって、実際には「家族」ではありません。それが作品に不思議な雰囲気を与えています。 


 万引き家族の面々は、貧困の中に沈んでいて、働き頭のリリー・フランキーが仕事中に足を怪我したが労災も降りず、まともに働けない、というような事情が描き出され、そこから、万引き行為のエスカレート、車上荒らしといった犯罪行為に手を染めていきます。この、貧困→犯罪の描き方は実にスムーズで、よく調べていると感じましたし、丁寧で、自然に見られました。


 万引き家族の面々は、実際にはちゃんとした家族ではなく、みながはぐれ者で、はぐれ者の集まりとなっています。リリー・フランキーと安藤サクラの夫婦も、ちゃんとした夫婦ではなく、一緒に住んでいる松岡茉優とか、樹木希林も、繋がりが希薄で、とにかく「きちんとした家族」「社会制度に承認された家族」ではないグループとして描かれています。(あと、子供が二人います)


 彼らはみな、ちゃんとした社会から追い出された存在で、貧困の中に沈んでいますが、疑似家庭を作って生活を営んでいます。この作品が新しい、あるいは特異と思われるのは、この疑似家族の面々はみんな、家族であるようで家族ではなく、それぞれが一人の独立した個人であるような、微妙な立ち位置を背負っている事にあります。


 例えば、リリー・フランキーは男の子の城桧吏(じょうかいり)に「おとーさんと呼べ」と言いますが、実際には血の繋がりのある親子ではありません。どこからか拾ってきた子なわけです。だから、そこには微妙な空気があって、愛情は互いに存在するのですが、どこか互いに突き放したような、それぞれが個人であるような、微妙な空気感となっています。こうした描き方は、今まであまりなかったと思います。


 こうした描き方というのは、家族が解体され、人間がアトム化し、金や物でしか繋がれなくなった現代人を象徴しているとも言えます。しかし、同時に、社会から見捨てられた者同士、愛情を持っているという所もあって、その描き方が非常に微妙です。この微妙さは、今までになかった新しいものかと思います。



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