六話
僕はポケットに入っているものを掴む。これがぼくが現状持っているもとで唯一の武器である。これを使う以外方法はない。咄嗟の判断でポケットに入っていたものを投げる。いくつか四方に散らばっていき、それを切り落としていくシュバルツ。しかし落としたことは間違いだ。チャリチャリーンと複数の音が足元から聞こえているはずだ。やはりシュバルツは下を見る。この隙を逃したら冗談抜きで死ぬ。後ろを素早く向き、全力で駆け出す。ほんの隙を作ってしまったため剣を振ってもぎりぎり届かない。もしかしたら当たるのではと肝を冷やしていたが、当たらなかったので安堵の気持ちを感じつつ走り続ける。足は僕の方が速い。しかも体力もむこうが剣を振ってくれていたおかげでこちらの方が残っている。距離をとりもう一度攻撃を仕掛けよう。そう思い前をちらと見る。するとシュバルツは止まっていた。しかもなにやら口から唱えている。なにをしているんだろうか?さっぱり分からない。そうして前を向き突進する構えを見せる。その時だった。地面から黒い手の形をしたものがでてきてシュバルツの剣を掴みこちらにその手が延びて、迫ってくる。すごい速度で飛んでくるため避ける暇もない。もうなにも手を打てない。ここで終わりか、、いやせめて致命傷は避ける、そう思い身体をねじる。しかし剣も曲がってきた。これは万事休すか異世界に来て一日たたずに死亡か、まあ最期くらいは剣士になれたからよかったかな?そんなことを考えながら最期を待っていた。知らずのうちに目をつぶっていた。しかしいつになっても自分の肉に刺さるか引き裂くかという音や感触がない。いったいどういうことかと思い目を開けると自分の心臓の位置の目の前で剣は止まっていた。何事かと周りを見るとナットが中に入ってきていて触手みたいな手を切っていた。なので剣は来なかったわけだが、触手はそのままの位置で消えないのか。もしあのとき身体をねじっていなかったら死んでいたかもしれない。そう思うととても恐ろしい。しかしなにより結果はどうなるのかと思っていたら、
「大変申し訳ございません。闘いがあまりにも面白いものだったため、時間を伝えるのを忘れていました。ですがそんなに結果は変わらないでしょう。これで決闘は終わりです。引き分けということで一週間後再決闘ということで、お開きです。」
そういい放ちオリアーナさんは消え去った。傍にいた剣士たちも消えていく。その消えた直後に、
「魔法を使うなんて汚えやつらだ!もう少しでアサシが危なかったじゃねえか!もしなんかあったら母さんでも許さねえ。」
とナットが怒りを含ませながら言ってくれた。あれも魔法なのか。自分もなにか魔法が使えるようになりたいなと思ってしまう。
「落ち着きなさいナット。ここはあえて剣と剣の対決で、相手に魔法を使わせるまでにいかせたアサシ君の剣の技術を誉めるべきじゃないかしら?私が勝手にみていてもアサシ君、あなたはかなりの剣の才能があると思うわ。一週間後に再試合ということだから、ナットに剣の技術をいっぱい教わりなさい。そしてあの魔法を使ったずるい人たちをやっつけちゃいなさい。わかったわね?まったくああいうのをみると本当にイライラするのよね。」
マルセラさんも冷静になってくだせえ。それはともかく剣の修行というのはいいかもしれない。相手に魔法を使わせるまでもなく、けりをつけることができるかもしれない。それなら万々歳だ。
「ナットさん。僕に剣の技術を教えてください!」
そう言った刹那がしっと肩を掴まれて
「当たり前だ!あんなやつらに負けないような剣を教えてやる!」
こうして一週間後再試合になったこの屋敷にしばらくすむ権利決闘だが、この戦いこそがのちの世界の英雄を生むきっかけとなる。




