五話
初めは間合いをとるふりをして時間を稼ごうと思っていた。しかしシュバルツさんはなにも考えていないかのように真っ直ぐこっちに突っ込んできた。予想外の行動だったためおもいっきり横に跳ぶ。ゴロゴロと転がって起き上がると、目の前には剣を振りかぶったシュバルツさんがいた。ここにいたるまで15秒。まったく時間を稼げず対決となってしまった。こうなっては受けるしかない。僕は腰から剣を抜けとり、相手の降り下ろされた剣を受け止めた。(剣はナットに武器庫にあったのを貸してくれた。なにもない空間から剣がでてきてびっくりしたが、他の人は普通な顔だったのでこれも魔法の類いだろうと予想している。)ギシギシと力が拮抗する。思いの外うまく受け止められてビックリしていた。シュバルツさんは無理矢理押し込んでくる。それを全力を使って止めて横に剣を逸らした。そこに剣の力をぶつけていたシュバルツさんも自然と横にずれる。そこをチャンスとみて後ろから素早く剣を降り下ろす。しかしシュバルツさんは左手をつき、うまく体勢を整えて右手だけで僕の剣を受け止めていた。攻防が逆になったが力の差が愕然と分かってしまった。僕は全力の両手で限界だったのにシュバルツさんは片手で僕の剣を受け止めて見せた。これでは勝負の意味がない。逃げても無駄だとさっきのでわかってしまった。このまま勝負を投げたしたくなる。しかしそういうわけにはいかない。なんせ僕の命とナットやマルセラ、ミーナと住める権利がオリアーナさんから貰えるのだ。本気で頑張らなくてどうする。勝ちと負けの結果をみるとまさに天国と地獄だ。ならば天国を選ぼうではないか。悪足掻きをしてみせよう。そう心に誓い後ろに跳躍する。そして横に向かって走り出す。別に逃げ出したわけではないし、時間切れを狙っているわけでもない。これは勝ちにいくための作戦だ。横に走ったことで勿論シュバルツさんは追いかけてくる。だが足は僕の方が速いみたいだ。ちょっとずつ差が離れていくと思うし、シュバルツさんとスタミナが切れてくるはずだ。そこを狙って一気に畳み掛ける。僕も若干きつかったりするがそれは気力でカバーをするしかない。1・2・3気合いだ気合いだ気合いだ気合いだー!お?相手のスタミナ切れてきたな。ゼーゼー音が聞こえるぞ。今しかチャンスはないずっと走り続けていたから恐らく残り2~3分なはずだ。ここで勝負だ。残りのスタミナを全部消費しさっきとお返しと言わんばかりに突っ込んでいく。シュバルツさんは疲れているのか反応が少しだけ鈍かった。剣でガードしようとしているが、下ががら空きだ。下からすくいあげるように剣を上げる。剣を吹き飛ばしはしなかったが、隙を作ることができた。ここで決める。そう思い思いっきり振りかぶって
「ここまでいったら初心者だとしたら上出来です。」
ビクッと少し震えてしまうほどに冷たい声だった。声の持ち主は見るまでもないオリアーナさんだ。だかこれは勝ちだろう?降り下ろしながら急速に考える。すると言葉は続く。
「だけどここで終わりなら雇っていません。」
その言葉が出た瞬間、シュバルツさんの雰囲気が変わった。まるで獣みたいな感じだ。田舎で育ったから何となくこういうのはわかるのだ。だかこれからどうなるっていうんだ?防げる剣は急いだとしても防げる場所にはない。勝ち目はないはずだ。そう思考している間にも剣は下ろされていく。そして胸に刺さろうかというところだった。素早い動きでシュバルツさんは左手を剣と身体の間にいれた。ぎょっとしたが剣の勢いは止まらない。そのまま左腕を切った。切り落とされはしなかった。力不足もあるし、そこまではしないように若干気を配ってしまっていたのかもしれない。しかし左手を切った。それは痛覚を伴いシュバルツさんは相当痛いはずだ。切り落とすまではいかなくても、深い切り傷にはなっている。現にシュバルツさんは顔を歪めて一歩後退しようとした。だがしようとしただけだった。そして固まってしまっていた僕に向かって力で剣を降り下ろす。荒々しいが僕には敵わない。剣で対抗しようとしたが力に押され剣が吹き飛ばされてしまった。十メートルは吹っ飛んだ。これでは取りにもいけない。そしてもう一回シュバルツさんが降り下ろした所で、後ろに下がろうとして転んでしまう。これで明らかに僕が絶体絶命だ。剣を防ぐものはなにもない。相手は凄く集中しているらしく、殺すこともなんとも思わないような目をしていた。なにか現状を打破するものはないか?そう思い何となくポケットに手を突っ込んでみる。すると手になにやら感触が。そうだ僕にはあったじゃないか。唯一僕が持っていた物が現状を打破できるかもしれない。そう思い相手に立ち向かう。諦めたらそこで人生終了だ。立ち向かうことを諦めてはいけない。そして僕は起き上がる。きっとなにかが起きると信じて。残り30秒




