エンカウント(1)
間が空いてしまい申し訳ありません。
拝啓。お父様お母様。こちらの世界の住民に出会って早3週間が経とうとしています。
今まで何していたかと言いますと、ひたすら王城目指して歩いていました。
いやね、3週間歩き続けてたんだよ、本当なんだって、文字通り3週間ずっと歩き続けてた。
この世界は私が思っているよりもずっと深刻な状態らしく動物を従わせることすらできないようで、王子が出発する前に申し訳なさそうに私に帰りは歩きだと申告してきた。
別に王子が悪いわけではないから笑顔で了承したけど、正直言ってあの時の私は徒歩を舐めてた。
毎日朝早く太陽が昇る前に目覚めて歩き出し太陽が沈むまでにテントを立てて眠りにつく、そんな生活をこの3週間続けてきた。
良く発狂しなかったと褒めてほしいくらいだよ。
3週間歩き続けてきた道は、どうみても人が住んでいなさそうな草原やら砂漠やら過酷な道だった。
しっかりと休憩の時間や睡眠時間は確保してくれるし、食事もしっかり出してくれる。
けど、やっぱり完全に安心はできないし、地面は固い。良質な睡眠なんてとれやしない。
言いたいことがわかるかい?
寝ることが趣味な私には!!!!!!
この生活が!!!!!!!
苦痛でしかない!!!!!!!
いやね、いやね、わかってはいるんだよ。それは私のわがままだって。
今でさえ、騎士の彼らは私にできるだけ負担をかけたくないと奔走してくれている。
でもね、平成の穏やかな生活に慣れ切っていた私にはどうやら早朝に起きて長時間歩き続けて寝る、そんな生活に耐えきれなかったようだ。
『睡眠時間が不足しています。残り残量40%です。速やかに睡眠を取ってください。』
頭の中でアラームのような警報が鳴り、音声が流れた。
音声さんよ睡眠不足とは何ぞや。
今の私はしっかり、騎士たちの御蔭で1日9時間は睡眠時間を取ってる。
まぁ、元の世界でなら12時間は取ってたから、足りないと言え足りないけど。
でもそれは私にとっての話だし、一般の人なら9時間は十分な時間だろう。
なのに睡眠時間が不足してる……だと?
いや、睡眠時間が不足している件は一旦置いておいて、
ここまでの道のりで幻聴が聞こえるほど精神的に追い詰められてるとは感じなかったんだけどなぁ。
こんな幻聴が聞こえるくらいには限界に近づいてるってことかなぁ。
自動音声のように無機質な男とも女とも取れる声。感情のこもらないそれは私に睡眠を取ることを勧めた。
まるで携帯の充電がないから充電してね、みたいなノリで睡眠とってねと言われても、はぁそうですかとしか言えないよね。うん。
むしろ、この音声は私にどんな反応を求めているのだろうか、寝なきゃと焦る反応が正しいのだろうか。
「ルナ?」
突然頭の中に流れた音声に戸惑って考え込んでいたら、足を止めてしまっていたようで、隣を歩いていた王子も立ち止まりどうしたのだという風に私の顔を覗き込んできた。
あの出会い以降、鬱陶しい敬語はやめてくれ、私は一般人だと説き続けてきた御蔭でやっと騎士たちの私への敬語と様付けが取れた。
王子も同様で、最初は遠慮していたのだが様付けで呼んでも応えなかったり、敬語で話しかけられたら顔をしかめたりと小さな反抗をしていたら折れてくれた。
「…ルナ?…大丈夫でs…大丈夫?」
まだまだ敬語でないことに慣れない様に微笑ましくなって少し笑ってしまう。
にやにやと笑いながら大丈夫だと告げる。
王子を見ていたら、少し心が軽くなった気がする。
きっと、あの音声は私の睡眠を求める欲望が作り出した幻聴だろう。
そう無理やり納得して、追求することをやめた。
「大丈夫」
心配そうな王子に笑顔を見せて、もう一度大丈夫だと言う。そんな私をまだ心配そうに見つめる王子はそっと無視し、今の現状を把握しようと今後の予定を聞いた。
「う~ん、後、4日くらいで着くかな?」
4日。
長いなぁ。
さっきの幻聴から考えても私は結構追い詰められてるのだろう。
現時点でこの調子であと4日。耐えられるのだろうか。
別に気持ち的に辛いわけでも堪えてるわけでもない。それでも幻聴が聞こえてしまっている。
幻聴が聞こえる=精神的に追い詰められてる、と考えるなら、そうなのだろう。
「4日か~」
私の声に申し訳なさそうに眉を下げる王子。口を開きかけたところを遮る。
「着いたらどうするの?」
この王子は責任感が強いのか、同情心からなのか、私の今の状態に申し訳ないと感じているようで何かと謝ってくる。
正直言ってうざったい。毎回毎回気を使って大丈夫だと声をかけているのだが、私の言葉が信じられないのか満足できないのか聞き入れてはくれずにことある度に謝りたがる。
最初はあの容姿の王子様を謝らせるとは!世界の皆様ごめんなさいと思っていたのだが回数を重ねてくるともうなんなの?いじめなの?と言いたくなってくる。この王子は謝罪の言葉で病ませるつもりなのだろうか。
この頃はその言葉すら聞きたくなくなって、謝る隙すら与えないようにしている。
「まず、王との謁見ですね。」
王様との謁見。
難易度高けぇ~
いくら私が平和を愛するいたいけな少女だとしてもよ?現代社会に生きてきた私としては王様との謁見など体験したくもないイベントな訳であってですね。
まず、位が高い人と関わるとそういう類の小説でよく見かけるシガラミが生じましてですね、面倒くさいことになるんですよね。これを人はテンプレと呼びます。
何故好き好んでそんな高貴な御方とエンカウントなどしなければならないのか。それはひとえに、この隣の王子にあると思いますね。確実にそうですね。
「王様かぁ~どんな人な」
「大変だ!!!!!白虎だ!!!!!」
私の呑気な言葉を遮り後ろを歩いていた騎士が叫んだ。
振り返るとそこには
伝説の神獣白虎がいた。
ーーーはいはい、テンプレテンプレ




