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傘旅  作者: m2lab
9/18

リョウスケとボク

 何かがボクに触れた。

 それは何か温かく、ボクの意識はフワリと浮き上がるような感じがして、ふっと音と光が、回りの景色がボクを取り巻いた。

 ボクはまた世界の中に居た。

(そういえば……)

 ボクは辺りを見渡した。

 あの温かく優しい物の正体が知りたかった。

 ボクは隣に人の気配がして、チラリと見上げた。

 見た感じでは年齢も職業もよく分からない男性だ。

 何か書いているようだ。

「うぅん、こんな感じか?」

 小さなノートを自身の目の高さに持ち上げて、リョウスケは唸っていた。

「確かこの電車、折り返しだったよな」

 そう言ってリョウスケは、胸のポケットからスマホを取り出し、小さなノートを中指と薬指で器用に挟んで、右手ではペンを小指で握って人差し指はスマホの上を滑らせた。

「うん、間違いないな」

 リョウスケはスマホをポケットにしまうと、今度はカバンの中をごそごそと探りだした。

「あれ?おっかしいな……入ってるはずなんだけど……」

 リョウスケは呟きながら、カバンを大きく開けて中を覗きこんだ。

(よく、しゃべるな……)

 ボクはリョウスケの独り言を聞いて、あの小さな傘を思い出した。

 あの傘もよくしゃべっていたなと、ぼんやり思い出した。

(今、どこでどうしてるんだろう)

 小さな傘は確か、何度も持ち主が変わったと言っていた。

 もう何度も置き去りにされたとも言っていた。

 ボクも、あの小さな傘のようになるのだろうか。

 ボクはまた苦しくなった。

「よし、外れないでくれよ」

 明るいリョウスケの声に、ボクは隣を見ると、リョウスケが両手に紙を持ってボクを見ていた。

 リョウスケはボクの持ち手に、手に持っていた紙を貼り付けた。

 ボクに触れたリョウスケの手は温かかった。

(さっきの温かい感じはリョウスケだったんだ)

 ボクはボクを目覚めさせた温もりに、とても複雑な思いを抱いた。

「持ち主の元に戻ってくれると良いんだけどな」

 そう言いながらリョウスケは立ち上がり、ボクの紙が貼り付けられた持ち手を、人差し指で弾いた。

 駅に着くとリョウスケは、電車を降りた。


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