景色と雨とボク
電車に乗るとユウコはシートの一番端に座り、ボクを手摺に立て掛けた。
ユウコの顔をこんなに間近で見るのは、ボクを買ってもらった時以来ではないだろうか。
あの時は緊張からしっかりユウコの顔を見れなかったが、今は違う。
毎日出掛けるユウコを玄関で見送り、帰ってくるのを出迎えている。
きっとユウコは、ボクにとっては家族なのだろうと思う。
ユウコの顔を見ていると安心する。
(あっ……)
ユウコがボクの側に肘を掛け、目を閉じた。
どうやら眠るようだ。
毎日見ているユウコだけど、寝顔は見たことはなかった。
電車に乗るとユウコはこうしていつも寝ているのだろうか。
(乗り過ごしたりしないのかな?)
ボクは少し心配になった。
そんなことを考えながらユウコを見ていると、急に辺りが真っ暗になった。
ボクは驚いて正面の窓を見た。
そこには何もなく、車内のライトが映した、車内の光景があった。
ボクとユウコが並んでいた。
多くは無いが、他の乗客も映っていた。
何となく電車のガタゴト音が大きくなったような気がした。
ボクは怖くなってユウコを見た。
ユウコは気持ちよさげに眠っていた。
ボクは助けを求めるように、車内の乗客を見た。
ユウコのように眠っている人、スマホを操作している人、本や新聞を読んでいる人。
誰も不安そうな人はいない。
みんなが連れている訳ではないが、彼らの側に居る傘達も澄まし顔だ。
(なんで……)
怖がってるのはボクだけのようだ。
ボクはきつく目を閉じた。
(落ち着け、自分)
ボクはボクを励ました。
すると、やや瞼ごしに明かりが射した。
ボクはそっと目を開けた。
真っ暗だった世界が、水玉の世界に変わった。
「雨かあ」
「こっちは降るの早いなぁ」
どこからか声が聞こえた。
(これが、雨……)
車窓は雨粒を受けて外の景色がちゃんと見えなくなった。
ボクはよく見ようと目を凝らした。
糸のような水が窓でパチンと弾けて張り付いた。
ボクはちらりとユウコを見た。
(この雨からユウコを守らなきゃ)
ボクは、きっとすぐに戦うことになるだろう相手をじっと見つめた。




