悲しい道化師
ヤンデレ企画というものが開催されていたので、過去に書いた作品に微妙に手を加えてみました。
多分、ものすごく駄文だと思います。
悲しい道化師 桜ノ夜月
サアアアアアッ…
どんよりとした空から、突き刺すような雨が降っている。
例えようの無いじめじめ感は私をいっそう暗くする。
自分の本当の居場所がない事を、嘲笑されているようで。
「よっしゃあー!雨だあっ」
クラスメイト達が騒ぐ。
はっきり言って五月蠅い。
子供のような笑顔に鳥肌が立つ。
嫌いだ。
人の楽しそうな笑顔も、キラキラした横顔も。
まるで私とは違う世界の人に思えてしまうから。
でも、みんなと合わせて笑う。
嘘でも無邪気に笑えたらって思う。
嘘でも無邪気に笑えたら。
嘘でもみんなと合わせてくだらないことで笑えたら…
それはどんなに幸せだろうか。
苦いものが胸にたまる。
所詮、私はピエロだ。
ピエロの私は、笑えない。
笑っては、いけない。
だって、私は人と違うのだから。
「おはよーっ、零羅っ」
無邪気なクラスメイトの女の子が話しかけてくる。
その無邪気な笑顔に鳥肌がたつ。
「おはよーっ、雨だねー、嬉しいなー」
周りに合わせて、一生懸命営業スマイルふりまいて、自分のキャラをつくってる。
ツクリモノナワタシ。
人の無邪気な笑顔が嫌い。
泣き喚く馬鹿な蝉みたいに、騒がしい声が嫌い。
吐き気がするほど大嫌い。
…でも、それも前ほどには感じない。
私は、好きな人ができた。
いつもみんなの中心にいる男の子。
彼はみんなに優しくて、人望がある。
だから、私だけのものになってほしくて。
彼は私だけのもの。
だれにも渡さない。
絶対に渡さない。
私だけの、男の子。
「あっ、蒼君だーっ。今日もかっこいいなぁ…。」
彼女が頬をそめる。
永倉蒼。
私が、心から愛する男の子。
彼はクラスのリーダーで、悪口も酷いうわさも一度も聞いたことがない誰からも好かれる
男の子。
誰にでも優しくて、でも自分を常に持つ明るくて陽だまりみたいな男の子。
私の大事な男の子。
私はまっ黒なファイルの中身を見る。
そこには彼―永倉蒼の隠し撮りの写真。
永倉蒼の部活中の写真。
永倉蒼が落ち込んでいる写真。
永倉蒼が住んでいるマンションから出ていく写真。
それらを眺めながら、私は思わず頬を緩める。
それらを撮っているのは、私の協力者で理解者の「S」。
Sはうまく立ち回り、私の欲しい写真を撮ってくる。
一月三十一日。
Sは月の最後の日に写真を持ってくる。
一月三十一日。
今日だ。
ピロピロピロ…。
「禁じられた遊び」の音楽が鳴った。
Sと私の唯一の連絡方法は、Sが小型に改造したタブレット。
画面にSのメールが表示される。
指先で操作して、メールを見る。
「撮影完了。計画順調。」
そっけなく書かれたメール。
いつもの、日常。
退屈で、色褪せた日常。
「了解。」
「零羅?どうしたの?」
彼女が不思議そうに聞いてくる。
「ううん、なんでもないよ。一時間目、なんだっけ?」
「数学だよ~。」
私は、数学の用意を取り出す。
嘘だ。
ほんとは知ってた。
心の中で舌をだす。
人を疑うことをしない、無垢なクラスメイト達が正直私は嫌いだ。
ガキっぽくて、馬鹿で、うるさくて。
「零羅ーっ、可愛いーっっ」
ガキっぽいクラスメイトのなかでも、特にガキっぽい女子が抱きついてきた。
生温かい無邪気な生き物にゾッとした。
「あーちゃん、おはよーっ。」
私は、一生懸命元気にあいさつをする。
ああ、嫌だ。
汚い。笑えない。笑いたくない。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
急に胃から酸っぱいものがこみ上げてきて、私は口元に手をあててトイレに駆け込んだ。
「うげっ…。げええっ…!」
トイレで吐く自分の姿を惨めだと思いながら、それでも吐かずにはいられなかった。
助けて、助けて!
昔見た、人の刺すような視線を思い出す。
おとうさん…。
スーツ姿の父が、私に背中を向けて去っていく。
―あの子のお父さん、家を出て行ったんだって。
―あの子、捨てられたんだよ。
「―ッ」
私は耳を塞ぐ。
バンッ!
トイレのドアが勢いよく開いた音がした。
「霧咲ッ!」
澄んだ、それでいて明るい太陽のような聞き覚えのある声にハッとした。
永倉蒼だ。
どうして…?
「大丈夫か?」
トイレの扉を通して、彼の声が私の耳をくすぐる。
嬉しくて。
彼が私だけにむけてくれる言葉が嬉しくて。
でも、彼が優しい笑顔をすることも心が澄んでいる事も
きっとみんな、知っている。
トイレのドアを、ゆっくりあける。
「―!」
しかし、目の前にはだれもいなかった。
空耳だったのだろうか。
私は、首をかしげる。
キーンコーンカーンコーン…
頭上では、授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いていた―。
人気のない廊下を歩く。
当たり前だが、どこのクラスも授業を開始している。
次は―ああ、数学か。
ため息をつきながら自分の教室へ向かう。
言い訳をなんと言おうか?
教師への言い訳を考えている間に、教室へ着いてしまった。
ガラッ…。
教室の戸を開く。
生温かい生き物の集団が、一斉にこちらを見る。
「―遅れてすみません。お腹が痛くて、トイレに行っていました。」
すると、中年の女教師は納得した表情と安堵の表情を浮かべて
「そう。それなら、いいんだけど。」
私は、再度頭を下げて自分の席に着いた。
クラスで流行っている人気キャラクターがでかでかと描かれている筆箱のチャックを開ける。
正直、どこが可愛いのか全く分からない。まあ、分かりたくもないが。
ノートを開き、黒板の無機質な数式を解く。
つまらない、面白味の無いこの世界で私は後何年生きるのだろう。
終わりの見えない人生に、心はもう飽き飽きしている。
さっさと壊れてしまえばいい。
こんな理不尽なセカイも、こんな壊れた私も。
もう、こんなセカイは飽き飽きだ。
数式の答えは出ていても、この答えは、きっと…
―キーンコーンカーンコーン…。
しばらくして、授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
「起立!礼!」
学級委員が号令をかける。
「ありがとうございましたー。」
それをずっとくり返して、気がつくと部活の時間になっていた。
「レイ、また明日ね。」
クラスメイトに言われて、反射的に笑顔で答える。
「うんっ。また明日。」
スクールバックを持ち、部室を出る。
「先輩方も、お疲れさまでしたーっ」
先輩たちが手をふる。
「あら、霧咲さん。帰るの?」
顧問に引きとめられた。
「はい。」
顧問は、笑って
「気をつけてね。」
と言った。
「はいっ!ありがとうございます!さようならっ!」
にこにこ、にこにこ。
「よー!零羅!」
自転車置き場の近くで男子の先輩に引きとめられた。
「シン先輩!え~っ、バスケ部は?」
「ついさっき終わったんだ。今、帰り?」
見れば分かるんじゃないだろうか。
心の中で突っ込む。
見ると、シン先輩の手が少し震えている。
顔をあげると、整った顔の頬が赤く染まっている。
ああ、これはもう決まりだな。
「…今、時間ある?」
うざいくらいに明るい声が耳の中にはいる。
決まり文句。
心の中で舌を出す。
「…零羅?」
シン先輩が、訝しげに眉を寄せる。
「ごめんなさい…。私、友達と約束してて…。」
私がシュンとすると、先輩は慌てて
「や、大丈夫だよ。じゃ、気をつけてな。」
何この人勘違いしてるんだろう。
笑いをこらえながら、歩きだした先輩を見送る。
ああ、汚い。
シン先輩なんて、本当は大嫌い。
優しくて、かっこいい先輩のふりして本当の顔は自分勝手でわがままな自己中人間。
Sが教えてくれた。
別にシン先輩だけじゃない。
日本中の人や、世界中の人が平然と汚いことをやってのける。
ああ、ああ、ああ。
みんなどうしてこんなに汚いんだろう。
ぐらぐら。
世界が廻る。
私を置いて、この世界は廻り続ける。
今日も、明日も、明後日も。
ピロピロピロ…。
「禁じられた遊び」の音楽が鳴った。
Sだ。
私は慌ててメールを見る。
「今、どこ?」
時間を見ると、もう五時過ぎだった。
私は慌ててメールの返信をする。
「学校。」
ピロピロピロ…。
「すぐ来て。」
私は慌てて自転車に飛び乗り、学校を出る。
Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。Sが呼んでる。
神様のような、Sが私を呼んでいる。
ガシャ、ガシャッ…
自転車が音をたてる。
「はあっ、はあっ…!」
行かなきゃ。Sが呼んでる。
ガヤガヤと騒ぐ生徒たちとは反対方向に自転車を走らせる。
何だかわからない恐怖感に心臓がねじ切れそうになる。
「はあっ…!はあっ…!」
痛い!
心臓が痛い!
助けて!
誰か助けて!
頭の中に「禁じられた遊び」の曲が鳴り響く。
―いいかい。僕らがやることは、禁じられた遊びなんだ。
Sの声が響く。
ああ、これはあの日だ。
Sと私が初めて計画をたてた日。
―どうして?
あの日、無邪気に尋ねた私をSは軽蔑したように見た。
そんなことも分からないのかって顔で。
「…零羅。」
すると、Sが立っていた。
Sははっきり言って格好いい顔ではない。
本当に平凡な、どこにでもいる顔だ。
でも、なぜか人を惹きつけるおかしな魅力がある。
危なげな、それでいて神秘的な…。そう、まるでロボットのような…。
「S…。」
Sは冷たく、感情のこもらない瞳で私を見る。
「…永倉蒼の写真だ。」
そう言って茶色い封筒を私に差し出す。
「うん…。」
ありがとうと伝えたいけれど、喉でひっかかったみたいに上手く言葉が出てこない。
私が封筒を受け取ったちょうどその瞬間、運動部の生徒達が集団で帰り始めた。
その中には、永倉蒼とその友人数人の姿もあった。
「永倉蒼…。」
私が思わず呟くと、Sが急に苦しそうに顔をしかめた。
言うべきか、言わざるべきか迷っているように私には見えた。
「…どうしたの?」
Sは意を決したように言った。
「…永倉蒼には、好きな人がいる。」
世界が、色鮮やかな色彩が急に色見を持たない無彩色へと変化した。
生徒たちのガヤガヤ騒ぐ声など、もう耳に入ってこなかった。
―永倉蒼には好きな人がいる。
―好きな人がいる。
Sの声が脳内で何度も繰り返し聴こえて…。
「嘘でしょ?」
私の声が掠れて、口の中が粘つく。
どうか嘘だと言って欲しい。
―…でも、運命は予想よりも遥かに残酷で苦かった。
「違う。真実だ。」
真実だ。真実だ。真実だ。
Sの声がエコーして響く。
急に私の手から力が抜けて、封筒が足元におちる。
バサッと音をたてて、写真が道路へばらまかれる。
Sがかがんで写真を拾う。
「…これが、証拠だ。」
私は震える手で写真を受け取る。
「―!」
写真には、永倉蒼と彼の好きな人が手を繋ぎ寄り添っている姿が映し出されていた。
愛おしくてたまらなそうな永倉蒼の表情が私の胸を貫く。
私の心臓が、ナイフで抉られているみたいにどうしようもなく痛くなる。
どうしよう。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。
盗られちゃう。
あの子に、私の永倉蒼が盗られちゃう。
私の瞳に涙が滲む。
Sが、私の涙を指で拭う。
「…消さなきゃ。」
私が思わず呟くと、
「…ああ。」
Sが気の乗らなそうに答えた。
―この記憶の断片を、今でも時々思い出す。
そのたびに、名前も顔も分からないSという少年への罪悪感で胸が掻き毟られる。
そう、記憶を失くした私の唯一の手がかり。
自分の罪を知る、唯一の手がかりはひたすら苦く遠いこの記憶だけだった―
「永倉蒼の好きな人は誰なの?」
Sに連れてこられた大嫌いなカラオケボックスで、唯一好きなオレンジジュースを飲みながら尋ねる。
学校の校門で大嫌いな生き物の集団が家へと帰り始めたのを見て、気分が悪くなった私を気遣ってか個室のあるカラオケボックスへと連れてきた。
むしろ、こちらの方こそ気持ちが悪くて吐きそうなのだがそこを堪えてSといつものように相談する。
「永倉蒼の好きな人は誰なの?」
するとSは冷徹なほどまでの無表情さで冷たく言い放った。
「…朝霧唯だ。」
私は精一杯頑張って笑顔をつくる。
しかし、心の中には熱くて焼け死んでしまいそうなほどの嫉妬心と、狂おしいほどの彼への愛情が存在していた。
憎らしい!
朝霧唯が憎らしい!
憎くて憎くてたまらない!
なんでっ!
なんであんな人間を彼は好きなのっ!
なんで私じゃないのっ!
このままじゃ私は彼への執着心でいつか死んでしまう!
消えてしまえばいいんだ!
朝霧唯なんて消えてしまえばいいんだ!
「…消えればいいんだ。朝霧唯も、私も、みんなみんな。」
Sは静かに傍で聞いていてくれる。
そうだ。
終わらせよう。
こんな、薄汚い穢れた世界。
無くなっても、誰も傷つかない。
「…零羅がいなくなると、困る。」
ふいに、Sの涼やかな声がした。
「…零羅がいなくなると、困る。
考えると、怖い。
愛とか、世界とか、平和とかそんなものはなくなっても構わない。
…けど、零羅がいなくなるのはとても寂しい。」
寂しい?
なにそれ、分かんない。
初めて、生まれて初めて聞いた。
Sは無表情で、シートに座っている。
この人は、私がいないと寂しいと言っている。
こんな、ピエロで生きていても意味の無い私が必要だといっている。
プルルルルッ…。
カラオケボックスの電話が鳴った。
「はい…。」
Sが対応してくれる。
人と話すの、好きじゃないって言っていたのに…。
「…はい。いえ、帰ります。」
Sが電話をもとに戻して
「帰ろう、零羅。…送っていく。」
―Sと初めて帰ったあの日、Sは何を思っていたのだろう。
カラオケボックスを出て、見上げた空は泣きたくなるほど悲しくて懐かしい赤い色に染められていた。
泣いたSを、私は一度も見たことがない。
激しく怒ったSを、私は一度も見たことがない。
いつも静かにいてくれて、相手の触れて欲しくない部分には絶対に触れてこない。
Sは、そんな男の子だった…。
コツン。
Sの冷たい手が、私の手にあたる。
「ごめん…。」
Sが謝る。
手が冷えるほど、待っていてくれていたのだろうか?
あの、生温かい生き物たちのなかで…?
胸がいっぱいになって、気がつくと私は彼に自分の手袋を差し出していた。
「…これ、使って。」
Sは迷ったような表情をして、
「…いいのか?」
と、恐る恐る聞いてきた。
私が頷くと、Sはゆっくりと手袋をはめていった。
まるで、壊れ物を扱うみたいに丁寧に、慎重に。
Sが白い息を吐く。
「…ありがとう。」
そう言って、少し笑った。
Sの微笑みにつられて、私も笑い返す。
この気持ちが何だかは分からないけれど、ただひたすら幸せで。
この時間が永遠になればいいのに。
このまま、時が止まってしまえばいいのに。
Sの白い手に私の黒い手袋がはまる。
「零羅…。」
Sが私を呼ぶ。
美しい、鈴の音のように凛とした声に耳を傾ける。
「なに…?」
Sは心配そうな顔で、
「本当に、消していいのか?零羅は、それを望んでいるのか?」
Sのまっすぐな視線が突き刺さる。
…答えられなかった。
「…………………………。」
黙り込んでしまった私を、Sが澄んだ瞳でまっすぐに見据える。
そうだ。
Sはいつも、私が黙り込むと私が話し始めるまで静かにまっている。
「…よ。」
私もSを見据えて、
「…いいよ。」
Sが軽く瞳を見開いて、真剣な顔で頷いた。
「…わかった。」
―それから、私達は朝霧唯を消す計画に没頭した。
Sと私は共犯者で、お互いの性質を誰よりも良く知っていた。
私は人間が怖くて、心の底から大嫌いでSは人間不信だ。
人を信じたことは、生まれてから一度もないというS。
人が怖くて、ピエロでしか生きられない私。
私達は、違うようでよく似ている。
「零羅…。」
Sが私に言う。
「何…?」
Sは何か言いたげな表情をしていたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻った。
「いや、なんでもない…。」
「そう…。」
しばらく二人で黙って、お互いに何かを考えていた。
「永倉蒼は、傷つくのかな…。」
Sは切なく、苦しそうな表情になって
「…そうなんじゃないか…?」
そう言って黙り込んでしまった。
「そう…。」
そんなやり取りをしている間に、私の家へとついてしまった。
「ありがとう…。」
「ああ…。」
そう言って、Sは帰って行った。
家の鍵を開けて、自分の部屋へと走る。
ほんの少しの距離なのに、いやに長く感じられた。
自室のドアを開けると、すぐに黒いカバーのかかっているベッドへ倒れこむ。
―永倉蒼には、好きな人がいる。
―朝霧唯だ。
「唯…。」
まだ、私から何かをとるの?
唯、お願いだから。
もう私から、なにもとらないで。
その日は珍しく、永倉蒼の夢を見なかった。
ピピッ…。
半分壊れかけた、五月蠅い目覚まし時計を止めて起き上がる。
脳も、心も、生活のすべてが永倉蒼によって支配されている。
ああ、また学校か…。
カレンダーを見ながら心の中で呟く。
朝食をコーンフレークで済ませ、支度をして学校へと向かう。
私はクラスの中でも朝が早い方だ。
だから、大体一番乗りで使わない定期入れに大切に仕舞った永倉蒼の写真を眺めるのだ。
「―だよなー!」
永倉蒼の声が聞こえた。
その声をはっきり聞きたくて、自然と歩調が速くなる。
「俺、朝霧がクラスの中で一番好きだよ。ていうか、女子として好き。」
教室のドアの窓でとろけそうな顔でいう永倉蒼を見て、全身が凍りつく。
―永倉蒼の好きな人は、朝霧唯だ。
胃酸が逆流して、口元を手で覆う。
本当だった。
その時、私は世界の理不尽さが分かったような気がした。
どれだけ私が永倉蒼を想っていても、彼の心を占めるのは唯なのだ。
唯はずるい。
そう思ったら、私の中の何かがぷつりと切れた。
ずるいよ。
唯はずるい。
ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。
ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。
ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。
ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。
消さなきゃ。
唯も少しくらい、傷つけばいいのだ。
「じゃあさじゃあさ、霧咲は?」
しばらくして、永倉蒼の友達が言った。
ドクン…。
心臓が高鳴る。
すると、永倉蒼は急に冷たい表情になって
「…俺、あいつ嫌い。腹の中で何考えているのかわからないし、暗いし。
ストーカーってうわさもあるし。」
えっ…?
「話し方も、表情も地味で暗いし。
やっぱり、女子って言えば朝霧だよなーっ。」
足元が、音をたてて崩れていくような気がした。
「…ッ!」
惨めだった。
本当に惨めだった。
心の中に、ふつふつとどす黒い憎しみの感情がわく。
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!憎い!
永倉蒼が憎い!
どうして!?
君は私の事しか眼中にないはずでしょ!?
私と結ばれるはずでしょう!?
おかしいよ!
…ねえっ!?
その場を離れて人目に付かない場所で私はタブレットを取り出す。
そして、Sへ電話をかける。
プルルルルッ、プルルルルッ…。
「はい…。どうした?零羅…。」
「S…。消して、いい…?」
Sが不思議そうに訊ねてくる。
「…どうしたんだ…?なにか、あったのか…?」
その声を聴いて、瞳に涙が溢れる。
「零羅…?」
「私のこと、嫌いだって。唯のほうが好きだって、永倉蒼がっ…!」
Sが息を呑む気配がした。
「消そうよ…っ!もう、永倉蒼のこと想えないよ…っ!
もう、全部終わらせようよ…っ!」
Sは何も言わずに、ただ黙って聞いていてくれる。
いつもみたいに、静かに。
「…うん。わかったよ、零羅…。わかったから…。」
Sは一呼吸おいてから言った。
「もう、もう泣かないでくれ…。頼むから、泣かないでくれないか…?
零羅に泣かれると、僕はどうしていいかわからないから…。」
Sの声が優しくて、涙が頬をつたう。
「うん…。」
涙がとめられなくて、床には私の涙がいくつもの水滴をおとした。
「とりあえず、教室に戻って。放課後、永倉蒼をそうだな…美術室って開いているのか…?」
私は少し考えてから答える。
「うん…。」
「いいね、僕の言うことをこれからよく聞いて行動するんだよ?」
そしてSは話し出した。
長い長いこの物語の結末を―
午前12時00分、32秒。
私は美術室の窓から、輝く月を眺めていた。
「これで、もう終わるのかな…?S…。」
私は月を眺めながら呟く。
永倉蒼は、もう少しで現れる。
「終わるよね…?もう、おしまいだよね…?」
物語は、終わる。
カラカラカラ…。
「…霧咲…?居るのか…?」
私は、左手に見えないようにカッターナイフを忍ばせ答える。
「…居るわ。」
すると、暗闇の中から永倉蒼の姿が現れた。
昼間の明るさは完全に消え失せ、少しクマが出来ていた。
「あのさ、昼間の事なんだけど本気で言ったんじゃないっていうか…。
その、つい、言っちゃったっていうか…。
あ、あいつらが女子で好きなやつと嫌いなやつ言えって言ったから…。」
人のせいですか、そうですか。
私が心から愛した男の子は、人のせいにする卑怯者だったのですか!
「…でも、あなたが私を嫌いなことに変わりはないわ。」
だから、ユルサナイ。
ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ、ユルサナイ。
ゼッタイニ、ユルサナイ。
「私に、惨めな思いをさせたのはあなたよ。自分でもわかっているのでしょう!
思わせぶりな態度とって、弄んで、ボロボロに傷つけた!
あなたに、身を焦がし続けたことがまるで嘘のよう!」
私はカッターナイフを永倉蒼の首筋にあてる。
…ネエ、アオイサン?
アナタヲダレヨリモ愛シテいルの。
だから、貴方が私以外を見られないようにしてあげる。
ね?余計な女なんてみたら、正しく私を愛せないものね?
ホントウハダレヨリモワタシガスキナノヨネ?ソウヨネ?
…デモネ?
「サヨウナラ。私は、あナたヲ生涯許さナい。」
ズブズブと、永倉蒼の首にカッターナイフが刺さる。
バッと赤い液体が私と、永倉蒼と、美術室を染めあげる。
終わった…。
「…フフフッ…あははははっ!あはははっ!あははははははははははははははははっ!」
真っ赤な姿の永倉蒼をぎゅっ、と抱きしめる。
「大丈夫だよ…。もう…」
絶対に、離さないから。
窓から見た月は、血のように赤かった―
ああ、やっと手に入った。
追い続けて、追い続けて。
捕まりそうで捕まらないキミガ。
「モウ…コマッタコダネェ…。」
冷たくなった永倉蒼を抱きしめて、私は微笑む。
君の真っ赤な血液が私を染めあげるの。
これで、私は君のものだよ。
これで、君は私だけを―
しばらく笑い続けて、ふと窓に映った自分の姿を見てハッと我に返った。
紅い紅い誰かの、血。
誰の…?
腕を見ると、血にまみれた永倉蒼が床に横たわっていた。
左手を見ると、血に染まったカッターナイフをしっかりと握っていた。
「永倉、蒼―?」
私…?
私が、永倉蒼を、殺した―?
急に目の前が真っ暗になって、私はそのまま暗く深くそして黒い世界へと呑み込まれて行った―
音が、止んだ。
僕は、古ぼけた美術室のなかで行われているやりとりをドア越しに黙って聞いていた。
体のどこも悪くはないはずなのに、なぜだか心臓がじくじくと痛む。
「…ッ」
痛い。
まるで、心臓を無数の針で刺されたような痛みだ。
零羅の声は、いつもの綺麗な声ではなかった。
声を荒げて、憎しみの感情をむき出しにして、それでも蒼を心から愛していた。
蒼は卑怯だ。
零羅からも、みんなからも愛されてそれでも朝霧を選ぶ。
―友達になろうぜ!
ふと、初めて会った時の蒼を思い出した。
だから、中途半端な友達なんていらなかったのに。
僕と蒼が初めて出会ったのは、中学一年生のときだった。
その頃、僕は生きている意味も目標もなくただ毎日を死人のように起きて、ひたすら勉強をする生活をくり返していた。
僕の母親と父親はどちらも教師で、ひとつ年上の兄が優秀で有名な大学へと進学するとその弟の僕に大きな期待をかけ始めた。
もともと僕は外自体が好きではなくて、家にいることが多かったから親からかけられた期待を喜んで受け入れた。
僕たちが住んでいたのは、大きなマンションで蒼と僕は同じ三階に住んでいたから嫌でも顔をあわせなければいけなかった。
「おはよう。俺、永倉蒼って言うんだ。お前は?」
初対面で他人から「お前」呼ばわりされたことにまず戸惑った。
「はあ…。僕は…」
最初は、ただ明るくてうざいやつだと思っていた。
もともと僕は人を心から信じたことなど一度もなくて、でもそれなりに世の中を上手く渡ってきたからこいつも適当にあしらえばいいだろうと思っていた。
でも、蒼は予想以上にうざくていつも常識では考えられないことをしでかした。
僕はどう考えても夢の無い、現実的な人間だった。
でも、成績や生活態度の優秀ないわゆる模範生だったから周りの教師は基本的に僕には甘かった。
しかし中には僕を毛嫌いしている教師もいて、その教師たちで僕を万引き犯にしたて上げようとした。
もちろん、そんなたくらみが分からないはずもなくすぐにばれてクビとなった。
でも、いくらボロがでるとはいえ大人の、しかも教師のしたことだ。
そんなにすぐにばれるものだろうか。
そう思って調べていくと、蒼がすぐに発覚するようにしていたことが分かった。
放課後に蒼を問い詰めると、
「暇だったから、ちょっと悪戯しただけだよ。」
とあっさりと言われた。
「友達のピンチは救うのが男ってもんでしょ。」
そう言って笑った。
なんだか蒼なら信じてみてもいいような気がして、気がつくと僕らは「友達」になっていたようだ。
もう、蒼は殺されたのだろうか。
僕がこの後にすることは、蒼ともう一人、朝霧唯を消すこと。
過去の思い出に囚われている時間はない。
やらなければ、計画を企てた意味がない。
全ては零羅を、零羅の未来を守るために。
カラカラカラ…。
たてつけの悪いドアを力まかせに引っ張る。
「…!」
口の中に酸っぱいものがこみ上げてくる。
死体なんて見ても何も感じないはずなのに。
零羅は全身に赤い蒼の血液を付着させ、眠るように倒れていた。
「……。」
僕は一瞬触れるのを躊躇して、零羅を抱き上げた。
「もう絶対に、誰にも傷付けさせない…。」
それは別に特別な意味で言った訳ではなく、ただ自分が零羅に全く意識してもらえないという現実から逃れるために苦しまぎれに呟いた言葉だったのかもしれない。
幸い人には出会わなかったから、僕は零羅を堂々と保健室へ運んだ。
人がいないのは分かっていたから、勝手に保健室のドアを開けて零羅を白いシーツの敷かれているベッドへゆっくりと寝かせた。
零羅に付着している蒼の血液をハンカチで拭きとり、躊躇いがちに零羅の頭を撫でる。
さあ、そろそろこの物語を終わらせに行こう。
すべては零羅の新しい未来のために。
カラカラ…。
僕は、蒼の死体が置いてある美術室をふたたび訪れた。
電気の消えた美術室の中で、唯一明るい月の光を背中に感じながら僕は蒼の血液を雑巾で拭きとる。
蒼の死体をどうしようかと考えていると、不意に外のダストシュートが目についた。
―あのダストシュートの中身、年に一回しか回収しないの。だから、すごく臭う…。
不意に零羅の言葉を思い出した。
―いけるかもしれない。
僕は蒼の死体をかついで外に出た。
ヒュウッ…。
外は、少し風がふいていて僕は一度零羅に借りたきり借りっぱなしになっていたピンクの手袋をはめる。
ダストシュートは思ったほど遠くはなくて、少し歩くとすぐに着いた。
ガコッ…。
ダストシュートの扉をひく。
「うっ…。」
独特の臭いに思わず顔をしかめる。
中を覗くと、人が一人入りそうな隙間は十分にあって僕はそこに蒼の死体を押し込んだ。
しばらく、悪戦苦闘していたがなんとか押し込むことができた。
ぽたり…。
蒼の血液が僕の洋服の腕についた。
幸い服は黒だったから、特に気にはしなかった。
ダストシュートの扉を閉める。
「はっ…はあっ…」
―時間は?
時計を見ると、すでに午前1時をまわったところだった。
まずい。タイムオーバーだ。
僕は急いで携帯をひらいて朝霧に電話をいれる。
「今から会えないか?西体育館の倉庫で待ってる。」
朝霧は嬉しそうな声で、ふたつ返事でOKをだした。
僕は外の水道で蒼の血を洗い流し、大きなため息をついた。
正直、朝霧は苦手だ。
蒼や零羅と違い、何を考えているのか本当に分からないのだ。
僕は西体育館へと向かう。
ポケットには、零羅の手袋と倉庫の鍵が入っている。
倉庫を管理する教師は、もうだいぶ年をとっているからよく鍵をかけ忘れる。
今日は丁度体育の授業が五時間目にあって、体育館も今日の六時間目くらいから改装工事を始めた。
そのせいで体育館の部活は各教室に集まれと教師が言っていたと零羅から報告があった。
「…朝霧。」
倉庫に朝霧がいる事は分かっていたから、僕は低く静かに大嫌いなあいつの名前を呼ぶ。
「………………………。」
すると、暗闇から真っ青な顔をした朝霧が現れた。
「…どうしよう。アオがどこにもいないの。私、零羅に殺されちゃうっ!」
そう言って、白い手で僕の服の裾を掴む。
「ねえ…私を守ってよ。あんた、昔から零羅と仲が良かったじゃない。
ねえ!…し」
「その名前で、僕を呼ぶなっ!」
―S。S。…ねえ、S。なんで、名前を捨てたの?
頭の中に、零羅の声が響く。
なんで、捨てたの?
なんで…な…
「五月蠅いっ!」
その瞬間、僕の世界が憎しみの色で染められた。
ニイサンノセイダ…。
ニイサンガ、ボクヨリデキガヨカッタカラ…。
ニイサンノ…。
―お前が愛されないのは仕方がないだろう?だってお前は、僕より出来が悪いんだから。
やめろ。やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!やめろ!
―母さんたち言ってたぞ?お前は期待外れだって。お前なんか、産まなきゃ良かったって。
僕はゆっくりと朝霧に微笑みかける。
朝霧はまるで救世主が現れたように頬を赤くそめ、すがるような瞳で僕を見る。
―お前を見ていると、イライラして吐き気がするって。
「お前を助ける訳ないだろう?僕はお前の事が吐き気がするほど大嫌いなんだ。」
そう言って僕はほこり臭い倉庫の扉を閉めた。
―ギイイイイッ…バタン!
それは、僕から朝霧への罪の判決の音だった…。
倉庫の鍵を取り出して鍵をかける。
「出してっ!出してよ、お願い!お願い、出して!森羅!」
―森羅、名前嫌いなの?
―…うん。大嫌い。
―なんで?こんなに優しい名前なのに。
―偽善者がつけた名前だ。優しいもなにも無い。
―じゃあ私は、森羅を「S」って呼ぶわ。S、森羅の頭文字だね。
―ありがとう。零羅…。
ああ、神様。
どうか、彼女が幸せでありますように。
全てを忘れ、新しい道を歩めますように。
そのためなら僕は、どんな大罪だってやってやる。
零羅は新しい道を歩むべき人なのだから…。
ヴーッ、ヴーッ…。
携帯が低く、アラーム音を鳴らす。
「時間か…。」
僕は、黒いパーカーをはおりポケットへ手を入れる。
その中には、中国行きの航空チケットと国際通信が可能な携帯電話が入っている。
今日の午前七時に僕はこの国を去る。
僕がいると、零羅はきっとこの事を思い出してしまう。
これは、一番初めから決めていたこと。
彼女が実行したら、僕は彼女の前から姿を消す。
彼女には伝えてない。
僕は道路を歩きながらふっ…と自嘲気味に笑う。
最後の日本が殺人か…。でも、大好きな大事な女の子といれた。
彼女に出逢えた。
彼女と同じ時間を過ごせた。
一番近くで、彼女を眺めていられた。
大好きな彼女のために、大嫌いだったこの頭脳を使えた。
もしかしたら、最高の失恋の仕方かもしれない。
訳もなく、可笑しい。
「さよなら。」
さよなら。僕の大事な零羅。
僕の初恋は、叶わない初恋だったけど。
どうかこのさき君がする恋が、幸せでありますように。
ただ一つ、心残りなのは―
君の幸せを、傍で見られないことだ。
僕は倉庫の外へ置いたアタッシュケースを持って、学校を出た。
幸せな彼女の未来を信じて―
ガヤガヤガヤ…。
空港は人が多く、たくさんの声が飛びかっていた。
ガラガラガラ…。
空港の中をアタッシュケースを牽きながら歩く。
ああ、幸せだったな。
ああ、彼女に逢えて本当に良かった。
さようなら。僕の大事な可愛い零羅。
君に逢えて、本当に幸せだった。
僕は飛行機に乗り込む。
「…さよなら。零羅…。」
さよなら。心から好きだった。
ゴオオオオオオッという音とともに飛行機が加速を始める。
「S!」
ふいに零羅の声が聴こえた。
「…零羅?」
でも、そこに零羅の姿は無くて…。
ぎゅっと心臓を掴まれたように苦しくなった。
さようなら、零羅。そして、またいつか逢えたらその時は…
遠い遠い、昔の話をしようか。
目が覚めると、私は保健室のベッドに横になっていた。
頭がガンガンして、とても気持ちが悪かった。
―私、なんでこんなところにいるんだろう…?
自分がここにいるまでの経過が分からなくて、首を傾げる。
時刻を見ると、午前七時丁度。
ふいに保健室のドアが開いた。
「わあっ!」
すると、保健の先生が驚いた顔で立っていた。
「霧咲さん!どうしてここにいるの?」
直感で誤魔化したほうがいいと思い、お決まりの嘘が口を吐いてでた。
「あ…気分が悪くなって…。保健室の鍵が開いていたから、勝手に入ってしまいました。
すみません。」
保健の先生は納得した顔をして
「そうなの。今の気分はどう?」
私は笑って、
「大丈夫です。そろそろ教室に戻ります。」
保健の先生は笑って
「そう。お大事に。」
私は再度頭を下げて、保健室を後にした。
ガラガラッ…。
教室のドアを開けて、中に入る。
「あれー、零羅。今日は遅いじゃん。どうしたの?」
綺麗な顔の女の子が話しかけてきた。
「ちょっと、気分が悪くって…。」
「えー、大丈夫?」
他の女の子たちも話しかけてきた。
「うん。もう大丈夫。ありがとう。」
他の子にもお礼を言いながら、自分の席につく。
「そういえば、昨日のテレビ見た?零羅の好きな俳優が出てたんだよ。」
「えーっ、うそ!見逃した~っ。」
みんなで笑いながら、次の授業の用意をする。
ああ、私普通の女の子だったんだ。
ふと見上げた青空は、朝日を浴びて輝く海のようにどこまでも青く澄んでいた―。
「悲しい道化師」 END
これがヤンデレなのかいまいちよく解らないのです…
月夜の闇猫様、このような企画を開催してくださり誠にありがとうございました!
感想、指摘、アドバイス等お待ちしております!