窓際後ろから3番目
最近、気になっている事がある
〝あ、またいる。〟
北村 晴香
席は窓際後ろから3番目。
ここ最近、窓の外に妙な人がいる。
〝この間はなんだっけ…えーと、あぁそうだ、確か折り紙してた!〟
窓の外、ここは2階なので少し下の地面。
そこの草むらの切り株、そこになぜか最近一人の男子生徒がいるのだ。髪は栗色でふわふわとしている、なんだか優しそうな男子生徒だ。
来る時は不定期で、ある時はスケッチ、またある時はあやとり。で、確かこの間は折り紙でツルを折っていた。…え?なんでみえるのかって?ふふふ、私、視力はいいんですよね。(どやぁ
…と、まぁ私の事は置いておいて。
私が気になっているのは、なぜここに来て色々しているか、そして何でわざわざそこでやるのか、という事だ。
〝あれ位だったら教室でも出来るのに〟
わざわざ授業を抜けて来ているのだろうか??うーん、謎は深まるばかり。
きーんこーん
4時間目も終わり、お昼休み。
〝あ、そーいえばあの人いなくなってたなー。自分のクラスに帰ったのかな?〟
少し残念に思いながらも私は席を立つ。
今日のお昼は購買のパンにしよう。
あ、ちなみに私はお昼は基本一人で食べる。
友達?いや、いないわけじゃないんだけど。なんとなくお昼は一人で食べたい。…そんなに仲良しな訳でもないし、、、。
美味しそうなパンが沢山残っていたため、いつもより少し多いパンを抱えながら、私は天気が良いため、今日は外で食べようと中庭へ向かった。
「ふあー!!気持ち良いー!」
トサッと今から食べるメロンパン以外のパンを置いて私は伸びをした。
ちなみに、私はパンではメロンパンが一番好き。あのサクサクがたまらない。
さて一口、とメロンパンをかじろうとしたその時…。
ひゅっ
「?!」
どかっ…と鈍い音をさせて、ボール?が私とメロンパンにクリーンヒットした。
私はボールに当たった反動でそのまま倒れてしまった。
地面が草でほんっと良かったと思う。
「…ぃ…いっつー…。…な、なに今の…?…てかああぁ!?私のメロンパンが!!」
メロンパンは草に落ちてボール(サッカーボールだった)につぶされ、ぐちゃぐちゃになっていて。
「あぁぁ〜…。今日1番の楽しみが …」
サッカーボールが頭にヒットしたのも痛かったが、こっちの方が泣きそうだ。
と、私が半べそでメロンパンをみていると…。
「あの、すいません…。もしかして、ボール、当たりましたか?」
「え?…あっ!ああぁー!!!?」
そこにはあの生徒がいた。
栗色のふわふわな髪、やさしそうな雰囲気。顔はちゃんとみたことないけど、間違いない、この人だ。
「……え、と」
〝はっ!しまった、つい話を無視してガン見を!!〟
「あ!えぇと、大丈夫でー…いや、大丈夫じゃないんですけど、えーと…はい、当たりました。ボールここです。メロンパンのうえです。」
緊張やら驚きやらで私はこの時日本語をほとんどしゃべれてはいなかっただろう。
「…どこ当たりました?」
「へ?!」
人の話をきいていたのか、という位マイペースにその人はきいてきた。
〝黙ってたのは考えてたからなのね…〟
本当に不思議な人
「いや、顔をちょっと…でも当たったのはほとんどメロンパンなので!大丈夫ですよ!!あははー…」
「…。」
〝…な、なぜ無言…!?なんかみられてるし、ま、間が苦しい…。〟
と、いきなりすっと彼が手を出してきた
「えっ」
そして私の顔をひとなで。
〝……て、ええぇえぇぇえええ?!?!ななななんだ?!どーしたのこの人?!〟
「…少し、赤い。やっぱり湿布をもらってきます。あと、メロンパンも。」
「えぇ?!いやいや!大丈夫ですって!!」
「いや、でも」
「あ!あの!!それじゃあ!!!」
この時の私は
「お昼!一緒に食べませんか??買いすぎて困ってたんです!!」
なにかが取り憑いていたんじゃないだろうか。
もぐもぐもぐ
〝あああああーなにやってんだ私ー!〟
もぐもぐもぐもぐもぐ
〝確かにずっと気になってはいたけど、これじゃまるで逆ナンじゃないかーー!!〟
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
〝……。〟
とりあえず日の当たる中庭で二人パンを食べているわけ…なの…です、が。
〝…こ、の人、さっきからずっと無言だ…。ひたすらパンを食べてる!!〟
「あ…あの、そのパン美味しいですか?口にあいます??」
もしかしたら口に合わないのかなーと思って声をかけてみた。
「…。」
もぐもぐもぐもぐもぐもぐ
〝…え?…しかと?!〟
もぐもぐもぐ
〝…え、えー…。私どうしたら〟
もぐもぐもぐ……ごくん
〝…そ、そんなに嫌だったかなー、不機嫌?〟
「美味しいですよ。」
「……へっ?」
「このパン、好きな味です。」
〝…え、も、もしかして口に物入ってたから喋らなかっただけ??!タイミングなの?!〟
突然返ってきた言葉に私は驚く
「えっ、あ、それなら良かったです!それ好きならこっちのもオススメですよー」
そう言って私はモンブランパンを渡した。
「……なんですか?これ」
彼はパンをひたすら見つめながらきいてきた
「え?モンブランパンですよ!甘いパンの上にモンブランの栗の所が乗ってるんです!…あ、栗嫌いですか?」
「…いや、好きです。」
そしてじーっとみつめたあと
「いただきます。」
はむっと一口。
そしてまたもぐもぐもぐもぐもぐもぐ
〝この人表情あんまり変わらないから美味しいのかどうかわからないなー…。大丈夫かな…。〟
もぐもぐ…ごくん
「……!」
〝あれ、表情が少しほわーってなった??〟
「…どうですか??」
「…これ、美味しいです。すごく」
そう言って彼はこちらを向いた
「ぶっ」
しまった、吹いてしまった。
「……??」
こちらを向いた彼の顔には白い粉がヒゲのようについていた。
「ふっ…ふふふ。く、口に…っ粉砂糖ついて…っふふ、ヒゲが出来てますよ?」
「えっ」
そう言ってあわてて拭く姿もなんだかおかしくて、私は思い切り笑ってしまった
「…これ、食べるの難しいんですよねっふふ、あはは!」
「……。」
「は…。」
調子に乗って笑っていると、いつの間にか彼が顔を拭きながらこちらをむーっと睨んでいた。
〝しまった!笑いすぎた〟
「あ、えーっと、すいませんわらいすぎまし…。」
「……です。」
「へ?」
「…恥ずかしいです。」
そう言った彼の顔は少し赤かった。
「……っ///!!」
〝…びっ、くりした!!こっちが照れたよ!…か、可愛いなーこの人〟
「あっ、あの、そういえば!名前!!名前きいてなかったですよね!私は2.-4 北村 晴香です」
「え…と、3年の片山 碧です。」
「あ、片山先輩ですね!今日はありがとうございました!」
ぺこーと深いお辞儀をする
「その、すいません、片山先輩はちょっと。」
「え?」
「なんだか…変なので先輩は無しで苗字か名前で呼んで下さい。」
「え?…ええ?」
〝え、ど、どう呼ぼう??…どっちでもいいのかな?〟
「あ、えと…じゃあ……碧くん…で。」
〝…だあああああー!やばい!なんか馴れ馴れしかった?!!〟
「はい。」
「っっ!!」
碧くんはなんだか嬉しそうにふわっと笑った
〝……わ、わわわわわらっっっ///!!〟
「こちらこそありがとうございました。北村さん、お陰で今日は楽しかったです。」
「え!あ!いやいや本当にすいません!ありがとうございました!!えと、良かったらまた一緒に食べてください」
「はい。よろこんで」
こうして、私の好奇心はこの不思議な時間でもっと膨らんで
私は…
もっと碧くんの事が知りたくなっていたのだった。
碧くんみたいな男の子が書いてみたかったんです!
こういう子は表には出さないけど大切なものを色々もっていると思います