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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

初期掌編

利点

作者: 高槻全壱
掲載日:2026/08/16


二ヶ月前、姉のシズカは私達の前から忽然といなくなった。自分で言うのもなんだけど、とっても仲のいい姉妹だった。一度もケンカなんてしたこと無いから尚更、姉さんの言葉が引っ掛かって頭から離れない。


今の世の中じゃ珍しくないかもしれないけど、動機がまったく思い付かない。だって本当なら、今日結婚するはずだったんだもの。

姉さんの部屋を隈無く探したり、思い当たる限りの友人知人に話を聞いたりしたが、何も手掛かりは掴めなかった。姉さんはあまり几帳面な人ではないから日記なんてもとより、ケータイにスケジュールすら書き込まない。全て頭の中で整理がついているらしく、大雑把な性格だったのかもしれない。


自分の部屋で途方に暮れていた時、姉さんの婚約者のシンジさんから電話が入った。

「シノブちゃん! シズカの居場所がわかったんだ! 今すぐボクの家に来てくれ!」

「本当ですか!? すぐに行きます!」


早々に仕度を済ませ家を飛び出そうとした途端、停電が起きた。一瞬にして闇が部屋を支配した。私はケータイのライトを付けて玄関に向かっている途中、部屋に人の気配を感じた。

「誰かいるの!?」


するとケータイの電源が勝手に落ちて、消え入るような声が部屋の四方から響いてきた。

「シノブ……」

紛れもなく姉さんの声だ。


「シノブ……もう私を捜さないで。既に死んでいるし、何より死体を見つけ出したところで、みんなが不幸になるだけだから……」

「姉さん何でよ!? 誰かに殺されたの!? それなら犯人は償うべきだわ!」


しばらく黙り込んで、声だけの姉さんは答えた。

「私を殺したのはね……」

必ず犯人を見つけ出してやると固く心で誓った。


「私を殺したのはね、シノブ……あなたなのよ」

頭の中で何かが弾けて、目の前が真っ白になった。


「シノブは何にも覚えていないでしょうけど、あなたに殺されたのは事実よ。シンジさんのことで揉めて、逆上したあなたは私を殺した。だけど気にしないで、きっと死体は見つからないから。それにシノブは明日になれば忘れるわ。あなたは前日の事を忘れる短期記憶障害を患っているから。それすら覚えていないでしょうけど……」


話を聞いて精神が崩壊しかけた私は、そのまま気絶して深い眠りに落ちた。

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