利点
二ヶ月前、姉のシズカは私達の前から忽然といなくなった。自分で言うのもなんだけど、とっても仲のいい姉妹だった。一度もケンカなんてしたこと無いから尚更、姉さんの言葉が引っ掛かって頭から離れない。
今の世の中じゃ珍しくないかもしれないけど、動機がまったく思い付かない。だって本当なら、今日結婚するはずだったんだもの。
姉さんの部屋を隈無く探したり、思い当たる限りの友人知人に話を聞いたりしたが、何も手掛かりは掴めなかった。姉さんはあまり几帳面な人ではないから日記なんてもとより、ケータイにスケジュールすら書き込まない。全て頭の中で整理がついているらしく、大雑把な性格だったのかもしれない。
自分の部屋で途方に暮れていた時、姉さんの婚約者のシンジさんから電話が入った。
「シノブちゃん! シズカの居場所がわかったんだ! 今すぐボクの家に来てくれ!」
「本当ですか!? すぐに行きます!」
早々に仕度を済ませ家を飛び出そうとした途端、停電が起きた。一瞬にして闇が部屋を支配した。私はケータイのライトを付けて玄関に向かっている途中、部屋に人の気配を感じた。
「誰かいるの!?」
するとケータイの電源が勝手に落ちて、消え入るような声が部屋の四方から響いてきた。
「シノブ……」
紛れもなく姉さんの声だ。
「シノブ……もう私を捜さないで。既に死んでいるし、何より死体を見つけ出したところで、みんなが不幸になるだけだから……」
「姉さん何でよ!? 誰かに殺されたの!? それなら犯人は償うべきだわ!」
しばらく黙り込んで、声だけの姉さんは答えた。
「私を殺したのはね……」
必ず犯人を見つけ出してやると固く心で誓った。
「私を殺したのはね、シノブ……あなたなのよ」
頭の中で何かが弾けて、目の前が真っ白になった。
「シノブは何にも覚えていないでしょうけど、あなたに殺されたのは事実よ。シンジさんのことで揉めて、逆上したあなたは私を殺した。だけど気にしないで、きっと死体は見つからないから。それにシノブは明日になれば忘れるわ。あなたは前日の事を忘れる短期記憶障害を患っているから。それすら覚えていないでしょうけど……」
話を聞いて精神が崩壊しかけた私は、そのまま気絶して深い眠りに落ちた。




