表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

2032/07/24

 ツバキは今日も昔と同じ笑顔を向けてくる。

心なしか疲れた顔で。


『ごめんね先週は。いつの間にか帰っちゃってたね』



目は合わない。



『よかったね。結婚ってことはさ、対等に歩いて行ける人が見つかったんだ。私みたいにおんぶにだっこじゃなくって。』



昔も同じことを言われたことを思い出した。

今聞いたら全部わかるような気がする。

 窓の方を向く彼女に尋ねる。



「あれから6年経った。精神的に言えば、俺は今、ツバキの6個上だ。情けなくていい。ずるくてもいい。

 いま思ってること、教えてくれないか」



呼吸荒く、ゆっくりと話し出す。



『あなたの隣を、対等に歩きたかった。ずっとそばにいるために離れたほうがいいって思ってた。でも、あなたの人生を約束で縛るなんてできない。ちゃんと切ってあげないと対等じゃないって思った。だから別れたかった。好きだから、別れたかった。あなたのことが、自分よりずっと、大事だから』


 利口だと思っていたツバキは、こんなに不器用な人間だったのかと、10年遅れて知った。

また泣きじゃくる彼女を慰めるために抱きしめる。


『ねえ、さつき、私、終わらなきゃね』


「もしかして、俺に嫌われたいって思ってる?」


『…できるの?

 …できた?』



 ここまで言われて、ようやくすべてが彼女の作戦通りだということに気が付いた。

俺に誰と歩むかの選択肢を与え、俺からの気持ちを自分の手で終わらせたのに、

自分は終わらせられなくて、俺から縁を切るように仕向けたのだ。



「できるわけないだろ」



 二人で歩いた六年が溢れる。

鼻歌も会話も音楽も、すべてが笑顔の思い出。

最後がどうあったとしても、それだけは残り続ける。


二人の馬鹿の物語。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ