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2032/07/17
今日も彼女は、俺に昔の笑顔を向ける。
『今って7月なんだよね?嬉しいね、ひまわりの時期だね!
さつき夏好きだもんね。あ、オレスタさんってまだ活動してるの?
そういえば、結局最後までひまわり畑って行かなかった?』
社会人になって、季節にさほど感動を覚えなくなっていた俺には新鮮な感想だ。
夏が好き、Orangestarが好き。そうだった。毎日聞いていた。
夏の明け方に聞く【午前四時半】が好きだった。
少なくともそれらの話は、中学三年のときにしたもの。
ツバキは今、大学三年の記憶で話しているはず。
ずっと覚えていたのだ。ひまわり畑の約束も。
なんだか無性に申し訳ない気持ちになった。
26歳のツバキが覚えているとは限らないのに。
そんな昔話をしていると、中学時代の女友達が病室を訪れた。
〈ツバキ―!よっ!〉
『え!もしかして渚?
うっわー!変わって無くて安心したー』
〈…って、あれ?さつき?
あんた二年前に結婚したんじゃなかったけ?〉
ツバキの表情が少し曇り、
『そ』
とだけつぶやいて、視線は渚に移った。
明るく渚との会話を弾ませるツバキをしばらく眺め、気付かれぬほどに息を殺し、病室を後にした。
そ、と放つ彼女を見るのは初めてではない。
新しい恋人ができたと報告したときも同じ顔をしていた。




