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濁流の中で  作者: 一宮 沙耶


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2話 暴動

白い煙に包まれていた。

耳はキーンと鳴り響き、よく聞こえない。

遠くからは叫び声のような音が聞こえる。


ここは、どこだろう?

そう、出張でガーナに来ていたんだ。

国連の委託で後進国支援コンサルとして。


そこで、大統領選挙の暴動に巻き込まれた。

一緒に来ていた1歳下の女性コンサルタントと一緒に。

この国の発展に向けて動いているのに、どうしてこんなことに。


力をふりしぼり横を見ると、同僚の女性の頭は銃弾に貫かれていた。

血がどくどくと流れ出し、生きているようには見えない。


目がかすれてきた。

自分の下半身が転がっているのがかすかに見える。

体が爆破で半分に切り裂かれたみたいだ。


意識が遠のいていく。

もう助かることはないんだろうな。

真っ暗となっていった。


ここはどこだろう。

カーテンからそよ風が吹き込む。

窓から漏れる陽の光は暖かい。

助かったのだろうか。


「先生、患者が目をさましました。来てください。大丈夫ですよ。わかりますか?」


白衣を着た先生が走って近寄ってきた。

目になにやら眩しい光を受ける。

体に力が入らない。傷がひどいのだろう。


「大丈夫のようだ。大変でしたね。まだ、起き上がれないので、まずはしばらくベットでお過ごしください。今、薬を入れるので、少し、眠たくなりますよ。」


薬のせいか、眠りの底に落ちていった。


「目覚めましたか?」

「ええ、今日は何日ですか?」


少し違和感を感じた。

自分の声のようではなかったから。

まだ、耳とか元に戻っていないのかもしれない。


「なにか話しましたか?」

「ええ、今日は何日かと。」

「意識はしっかりとしてるんですね。」

「ええ」


先生は私に、ゆっくりと話し始めた。


「今日は、9月3日。あなたは、ガーナの暴動に巻き込まれて傷つき、ガーナの病院で治療を受けた。ひどいケガだったんですよ。でも、幸いなことに、世界でトップクラスの外科医がガーナに観光に来ていて、なんとか一命をとりとめることができました。その1か月後、日本に移送されて、この病院に7カ月いたんです。だから、あなたから見ると8カ月ぐらい経っています。大きな手術だったから心配していたけど、意識もしっかりしているし、大丈夫のようです。よかった。まずは、まだ動けないから、安静にしておいてください。あと1カ月ぐらいすると包帯をとって、ベットで座れるぐらいにはなれると思いますから。」

「わかりました。ところで、声が違うようですが、耳がおかしいんだと思います。大丈夫でしょうか?」

「大丈夫。まずは、安静ですからね。」

「わかりました」


体は固定され、違和感はあった。

それはそうだよね。体が半分に切れたんだから。

それを治療するなんて神業だ。


2週間ほどすると、体の固定は外された。

でも、手足はしびれて上手く動かせない。

今日は包帯がとれる日。


ただ、顔を見たときの衝撃は大きかった。

1歳下の後輩の女性の顔が目の前の鏡に映っていたから。

そして、下を見ると、胸にはふくらみがあった。

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