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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第二部「大罪と新国家編」

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第79話:暴食の顎と、食い荒らされる大地

世界の欠損


アヴァロンの北方に広がる穀倉地帯。かつて黄金色の小麦が実っていたそこは今、地図から消滅していた。


焦土と化したわけではない。文字通り「無」になっていた。


地面は岩盤ごと半円状に抉り取られ、山は断面を晒して消失し、川の水は一滴残らず飲み干されている。


「……腹が、減った」


その荒野の中心を、一人の小柄な少年が歩いていた。


ボロボロの布を纏い、痩せこけた体躯。一見すると飢えた孤児のようだ。


だが、彼が大きく口を開けた瞬間、その顎は関節を外して背丈の数倍まで開き、目の前にある巨大な岩を一口で飲み込んだ。


第六の大罪『暴食』の適合者、グラ。


「足りない……。石も、木も、土も、味がしない……」


グラが鼻をひくつかせた。


「……いい匂い。甘くて、濃厚な、魔力の匂い」


彼の虚ろな瞳が、南の方角――アヴァロンへと向けられた。そこには、ドルミンを変換して作られた『怠惰機関』が放つ、莫大なエネルギーの光があった。


「いただきます」


グラが地面を蹴ると、その足元の空間までもが「喰われて」欠損した。


捕食される防御壁


「北の監視所、全滅! 敵影確認! たった一人です!」


アヴァロンの司令室に、悲鳴のような報告が入る。


「一人だと? 一人で山を消したというのか?」


パラガスが驚愕する中、モニターにグラの姿が映し出された。


彼はアヴァロンの外壁――蓮が『黒鋼』に強化した絶対防壁の前に立っていた。


「硬そう。でも、美味しそう」


グラが防壁に噛み付いた。


ガリィッ!! ゴリィィィッ!!


信じられない音が響いた。核攻撃にも耐えうるとされた黒鋼の壁が、ビスケットのように砕かれ、少年の胃袋へと消えていく。


「馬鹿な……! あの壁には、魔法耐性と物理耐性の概念が付与されているはずだぞ!」


「概念ごと食べているのです!」


フィーネが叫ぶ。


「彼の唾液は、あらゆる魔術構成を分解する『消化液』です! 結界も、魔法も、全て彼にとっては栄養素でしかありません!」


食べ放題の宴


「迎撃だ! 撃て!」


カイルが指揮を執り、アヴァロン軍が一斉射撃を行う。


魔導砲、矢、銃弾の雨。


だが、グラは口を大きく開け、それら全てを掃除機のように吸い込んだ。


「ごちそうさま」


グラの腹が少しも膨れる様子はない。彼の胃袋は、無限の容積を持つ異次元へと繋がっているのだ。


「もっと。もっとちょうだい」


グラがゲップをすると、衝撃波で最前列の兵士たちが吹き飛ばされた。


さらに、彼はアヴァロン全土を覆う『怠惰機関のシールド』に手をかけた。


「これ、一番美味しそう」


グラがシールドを綿菓子のように手で千切り取り、口に運ぶ。


バチバチバチッ!


高密度のエネルギー障壁が、咀嚼音と共に消失していく。


「ああっ!? 街の出力が低下しています! このままでは動力が食い尽くされます!」


アヴァロンの心臓部が、おやつのように消費されていく。それは、国家存亡の危機だった。


飢餓の王


「食い意地の張ったガキだ」


絶望的な空気の中、防壁の上に蓮が立った。


「蓮様!」


「下がっていろ。あいつに餌を与えるな」


蓮は、漆黒の義手『虚空の右腕』をぶら下げ、グラを見下ろした。


グラが食事の手を止め、蓮を見た。


「……お前、すごく美味しそうな匂いがする」


グラの口元から、大量の涎が垂れる。


「その右腕……高カロリーだね。神様の味がする」


「グルメだな。だが、こいつは腹を壊すぞ」


蓮が防壁から飛び降りた。


「いただきまぁす!」


グラが人間離れした速度で突進し、蓮に噛み付こうとする。その口は、蓮の全身を丸呑みできるほど巨大に裂けていた。


蓮は、真正面から義手を突き出した。


「喰えるものなら喰ってみろ」


捕食者対捕食者


ガブゥッ!!


グラの巨大な顎が、蓮の義手を噛み砕こうと閉じた。


「蓮様!!」


ユリアが悲鳴を上げる。


だが。


ギギギギギ……ッ!!


グラの歯が、蓮の義手に食い込めず、嫌な音を立てて軋んだ。


「……硬い。噛めない」


「当たり前だ。僕の腕は『虚空』だ。存在しないものを、お前の胃袋に入れることはできない」


蓮は、グラの口の中に腕を突っ込んだまま、ニヤリと笑った。


「それにな、食べるっていうのは、強者の特権だ」


蓮の義手が、グラの口の中で黒く発光した。


「お前は今まで、動かない山や、抵抗しないエネルギーばかり食ってきただろう?」


蓮の魔力が、グラの消化器官を逆流し始める。


「教えてやるよ。お前より『飢えている』奴が、ここにいるってことをな」


蓮の能力『ゴミを良くする』が発動する。


だが今回は、相手を強化するためではない。


蓮が定義したのは、グラの『満腹中枢の破壊』と『消化能力の暴走』。


「吐き出せ。お前が食ったもの、全部僕の国に返してもらうぞ」


「が……ぁ……!?」


グラの顔色が変わり、腹部が異常に膨張し始めた。


世界を喰らう暴食と、神を喰らう右腕。


二つの捕食能力が、互いの存在を賭けて激突した。

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