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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第二部「大罪と新国家編」

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第73話:汚染される血管と、腐食の女王

甘い水の猛毒


「水だ! 水をくれ!」


「喉が渇いて……焼けるようだ……!」


エリザの正体が暴かれ、精神支配の霧が晴れたのも束の間、アヴァロン市街は新たなパニックに見舞われていた。


今度は精神ではない。肉体の異変だ。


街の至る所にある給水所や、家庭の蛇口から水を飲んだ市民たちが、次々と高熱を出して倒れ始めたのだ。彼らの肌は桃色に上気し、苦しみながらも、どこか恍惚とした表情でさらに水を求め続けている。


「フィーネ! 状況は!?」


「酷いです! ただの毒ではありません!」


臨時野戦病院と化した広場で、フィーネが悲鳴を上げる。


「水の中に、微細な『魔虫』の卵が混入しています! それが体内で孵化し、宿主の脳内物質を強制的に操作して、快楽と渇きを与え続けているんです!」


喉が渇く、水を飲む、さらに卵を取り込む。


それは、アヴァロンの民を、愛欲と渇望の奴隷に変えるための生物兵器パンデミックだった。


地下への再潜入


「水源だ。奴らは、僕が整備した上水道に入り込んだ」


蓮は即断した。


「リサ、フィーネ。僕についてこい。パラガス、お前は地上で感染拡大を防げ。感染者を隔離し、真水以外の飲料を配給しろ」


「はっ! 命に代えても!」


蓮たちは、マンホールを蹴破り、再び地下水路へと飛び込んだ。


かつて蓮が『ミスリル合金』へと強化し、清浄な水が流れていたはずの地下道。


しかし今、そこは異界と化していた。


「うっ……。何、この臭い……」


リサが鼻を押さえる。


壁も床も、ピンク色の粘液スライムで覆われ、脈打っている。水路を流れる水はドロリと白濁し、甘ったるい腐臭を放っていた。


「アヴァロンの血管が、犯されているな」


蓮は、壁にへばりつく粘液を漆黒の義手で焼き払った。


ジュウウウ……という音と共に、粘液が悲鳴のような音を立てて蒸発する。これは単なる汚れではない。この粘液そのものが、巨大な「生物の一部」なのだ。


肉の浸食


水路の奥へ進むにつれて、光景はグロテスクさを増していった。


配管が肉のチューブのように変質し、ポンプ施設が巨大な心臓のように鼓動している。機械と生物が融合し、汚染水を全土へ送り出すポンプとなって稼働していた。


「キシャァァァッ!」


粘液の中から、人の形をしたスライム状の怪物が襲いかかってくる。かつて水源管理をしていた職員たちの成れの果てだ。


浄化ピュリファイ!」


フィーネが聖なる光を放つが、怪物の再生速度が速すぎる。


「無駄だ。元を断つ」


蓮は足を止めず、襲い来るスライムの群れを義手の衝撃波で粉砕しながら直進した。


「出てこいよ、女王様。人の作ったインフラに寄生して、恥ずかしくないのか?」


蓮が、最深部にある巨大貯水槽の大扉を蹴り飛ばした。


腐食の女王、アスモディア


貯水槽の中は、地獄のようだった。


かつて蓮が浄化し、クリスタルのように澄んでいた巨大な水瓶。


今はその中央に、赤紫色の肉塊が浮かび、無数の触手を水中に伸ばしていた。


肉塊の上半身は、妖艶な美女の形をしている。だが、下半身は貯水槽の底まで広がり、排水パイプと完全に融合していた。


第三の大罪『色欲』の本体、アスモディア。


「あらん、いらっしゃい。怖い顔をした王様」


アスモディアが、粘着質な声で囁く。彼女の吐息だけで、空中のマナがピンク色に染まる。


「どう? 私の『体液』の味は。貴方の国民たち、喜んで飲んでくれたかしら?」


「吐き気がするな」


蓮は、侮蔑の視線を向けた。


「貴様は『色欲』というより、ただの『汚物』だ。僕の国の上水道を、トイレと勘違いしているんじゃないか?」


「酷いことを言うのねぇ。私はただ、全てを一つにしたいだけよ」


アスモディアが笑うと、貯水槽の水面が盛り上がり、巨大なスライムの津波となって蓮たちに襲いかかった。


「水も、人も、街も、全てドロドロに溶け合って、私の中で愛し合えばいいのよ!」


概念の浄化、あるいは改造


「きゃあっ!?」


フィーネとリサが、迫り来る汚染水の波に飲み込まれそうになる。


だが、波は二人の手前でピタリと止まった。


蓮が、貯水槽の水面に義手を突き刺していたからだ。


「全て溶け合いたい、だと?」


蓮の瞳が、冷徹に光る。


「いいだろう。その望み、叶えてやる」


蓮は、能力を発動した。


「良く、なれ」


対象は、この貯水槽を満たす『汚染水』と、それに融合している『アスモディア自身』。


蓮が定義したのは「浄化」ではない。それではアスモディアを殺すだけだ。蓮は、もっと残酷で、効率的な「利用法」を思いついた。


「お前は、混ざり合うのが好きなんだろ? なら、お前自身が最強の『濾過フィルター』になれ」


「え……?」


アスモディアの顔が凍りつく。


ズズズズズ……ッ!!


蓮の黒い魔力が、水を媒介にしてアスモディアの細胞一つ一つに侵入する。


『個の崩壊』と『機能への再構築』。


「嫌ぁぁぁっ! 私の意識が! 形が! ただの『膜』になっていくぅぅぅ!」


「安心しろ。これからはアヴァロンの全て水がお前を通る。お前は永遠に、毒を取り除き、水を清めるだけの『生きた浄水器』として生きるんだ」


蓮は、義手を捻った。


「システム書き換え完了。働け、ゴミ」


バシュゥゥゥッ!!


アスモディアの悲鳴が水音にかき消される。


彼女の肉体は拡散し、貯水槽の底に張り付く「超高性能な生体フィルター」へと姿を変えた。


ドロドロだった水が、瞬く間に濾過され、ダイヤモンドのように輝く聖水へと変わっていく。

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