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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第二部「大罪と新国家編」

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第69話:死せぬ怒りと、東方の狂戦士

屍の進軍


東方の大国、ガレリア帝国。かつて大陸最強の騎馬隊を誇ったその国は今、生ける屍たちの地獄と化していた。


国境付近の砦。守備隊長は、信じられない光景に震えていた。


地平線を埋め尽くす数万の軍勢。だが、彼らは行進していない。獣のように四つん這いで走り、口から泡を吹き、絶叫しながら押し寄せてくる。


「て、敵襲! 撃て! 矢を放て!」


雨のような矢が降り注ぐ。


だが、矢が身体に突き刺さっても、彼らは止まらない。首を射抜かれても、腕を落とされても、痛みを感じていないかのように笑いながら突進してくる。


「死なない……!? 化け物か!」


砦の門が、素手で、あるいは自らの頭蓋骨をハンマー代わりにした狂人たちによって破壊される。


その中心に、一頭の巨大な黒馬に跨る男がいた。


全身を深紅の鎧で包み、兜の隙間からはマグマのような赤い光が漏れ出している。


かつて帝国の英雄と呼ばれ、謀略によって処刑されたはずの将軍、ヴォルグ。


彼こそが、第二の大罪『憤怒』の適合者だった。


「殺せ。全てを殺せ。我らの怒りは、血でしか購えない」


ヴォルグが大剣を振るうと、衝撃波だけで砦が半壊した。


砦の兵士たちは、雪崩れ込んできた狂戦士たちに生きたまま食いちぎられ、そして数分後には、彼ら自身もまた赤く目を光らせて立ち上がり、新たな「怒りの感染者」となって軍勢に加わった。


死が死を呼び、怒りが怒りを増幅させる。終わりのないパンデミックが、西のアヴァロンへと向かっていた。


感染する殺意


アヴァロンの地下司令室。


パラガスが、東方から届いた魔法映像をモニターに映し出した。


「酷い有様です。ガレリア帝国は一夜にして壊滅。ヴォルグ将軍率いる『憤怒の軍団』は、生きている人間を見つけると無差別に襲いかかり、自らの同類に変えています」


映像の中では、かつての一般市民までもが、武器を手に取り、見境なく殺し合いを演じていた。


「『憤怒』の権能か」


蓮は冷静に分析した。


「奴らは死者じゃない。怒りによってリミッターを外され、痛覚を遮断された生きた人間だ。脳が焼き切れるまで戦い続ける、使い捨ての兵隊だ」


「数は推定十万。しかも、倒した敵を吸収して増え続けています。このままでは、アヴァロンに到達する頃には倍に膨れ上がっているでしょう」


セラフィナが進言する。


「蓮様、迎撃しましょう。彼らをアヴァロンに入れてはなりません。感染が広がれば、せっかく築いた国が内部から崩壊します」


「ああ。国境で食い止める」


蓮は立ち上がった。


「バルバロスの時は金だったが、今度は暴力の津波か。相手にとって不足なしだ」


鋼鉄の防衛線


アヴァロン東部国境、荒野の峡谷。


そこは、ヴォルグ軍がアヴァロンへ侵入するために必ず通らなければならない要衝だった。


蓮たちは、そこに防衛ラインを敷いていた。


「来るぞ! 衝撃に備えろ!」


現場指揮を執るカイルの声が響く。


地平線が赤く染まり、耳をつんざくような絶叫と共に、十万の狂戦士たちが押し寄せてきた。


武器など持っていない者も多い。だが、その数と勢いは、物理的な質量となって防壁を揺るがす。


「撃てぇぇぇッ!!」


アヴァロン軍――武装したスラムの住人たちが、蓮によって強化された『魔導ガトリング砲』を一斉掃射した。


元は工事用のパイプだったそれは、今や毎分六千発の魔力弾を吐き出す殺戮兵器となっていた。


弾幕が狂戦士の波を薙ぎ払う。肉が飛び散り、前列が消滅する。


だが、後続は死体の山を乗り越え、さらに加速してくる。


「ヒャハハハハ! 殺せ! 殺せェ!」


狂戦士たちは、仲間がミンチになっても止まらない。むしろ血の匂いに興奮し、速度を上げている。


門番の鉄槌


「数が多すぎる! 壁を登ってくるぞ!」


兵士の一人が叫ぶ。


狂戦士たちは、人間梯子を作って高い防壁を乗り越えようとしていた。


その時、アヴァロン軍の後方から、巨大な影が立ち上がった。


蓮が王国から奪い、支配下に置いた『門番ゲートキーパー』――巨神ゴーレムだ。


「潰せ」


蓮の命令一下、巨神が唸りを上げる。


巨神は、その巨大な腕で、峡谷の崖そのものをへし折った。


ズゴォォォォォン!!


数万トンの岩盤が、狂戦士の群れの上に落下する。


一撃で数千人が圧死した。


さらに巨神は、目から極太の熱線『オメガ・ブラスト』を放ち、地表を焼き払った。


「すげえ……! これが俺たちの守護神か!」


アヴァロン兵たちが歓声を上げる。


戦況は一方的な虐殺に見えた。古代兵器と、蓮の強化装備。アヴァロンの火力は圧倒的だった。


だが、蓮だけは警戒を解いていなかった。


(おかしい。敵の大将……ヴォルグの姿が見えない)


怒りの特攻


その直後だった。


巨神ゴーレムの足元で、赤い閃光が走った。


「ヌゥンッ!!」


野太い咆哮と共に、巨神の右足が、足首から「切断」された。


「……は?」


カイルが目を疑う。


全長50メートルの超質量を支える、オリハルコン装甲の足。それが、人間サイズの何者かによって、一撃で斬り飛ばされたのだ。


バランスを崩した巨神が、スローモーションのように倒れ込む。


その土煙の中から、一人の男がゆっくりと歩いてきた。


深紅の鎧。手には身の丈を超える巨大なノコギリのような大剣。


ヴォルグ将軍だ。


彼は、倒れた巨神を見上げもしない。ただ、防壁の上にいる蓮を、兜の奥の赤い瞳で睨みつけていた。


「見つけたぞ……。我が怒りを鎮めるための、極上の生贄を」


ヴォルグが咆哮すると、周囲の空気が赤く歪んだ。


彼の能力『憤怒』は、自身や部下が傷つけば傷つくほど、そのダメージを力に変換して無限に強くなる。


アヴァロン軍の圧倒的な火力は、皮肉にもヴォルグにとって最高の「燃料」となっていたのだ。


「オオオオオオオッ!!」


ヴォルグが跳躍した。


狙うは蓮の首ただ一つ。

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