第66話:廃棄物の逆襲と、黄金の悪夢
ガラクタたちの行進
バルバロスの黄金馬車から放たれた『コレクション』たちは、生きた悪夢そのものだった。
多頭の魔獣、機械化された巨人、そして虚ろな目をしたかつての英雄たち。彼らは首輪に繋がれ、自我を奪われ、ただ殺戮を命じられた道具として、アヴァロンの防壁へと殺到した。
「ヒャハハ! 潰せ! 壊せ! 私の損害を埋め合わせるために、略奪し尽くせ!」
後方からバルバロスの狂った指令が飛ぶ。
対するアヴァロンの防壁の上には、ボロボロの服を着たスラムの住人たちが並んでいた。
彼らの手にあるのは、蓮が廃棄場から拾い集め、強化した武器だ。錆びた鉄パイプ、欠けた包丁、折れた槍。見た目は粗大ゴミの山にしか見えない。
「来るぞ……!」
指揮を執るカイルが、身の丈ほどもある巨大な――元は配水管だった――キャノン砲を構えた。
「撃てぇぇぇッ!!」
神話級のゴミ
轟音と共に、アヴァロン軍が一斉射撃を開始した。
錆びた鉄パイプから放たれたのは、S級魔法を凌駕する極大ビームだった。
「ギャァァッ!?」
先頭を走っていたキメラたちが、一瞬で消し飛び、炭化する。
「な、なんだと!?」
バルバロスが目を剥く。
さらに、防壁から飛び降りた老人部隊が、欠けた包丁を振るう。
「わしらの国を、荒らすな!」
老人の一閃が、機械化された巨人の装甲を、まるで紙のように両断した。
蓮の能力『ゴミを良くする』によって、ただの包丁は『物質透過の神剣』へ、鉄パイプは『魔力収束砲』へと概念ごと書き換えられていたのだ。
かつてゴミと呼ばれた人々が、ゴミだった武器を使い、金で買われた最強の兵器たちを一方的に蹂躙していく。
「馬鹿な……! 私のコレクションは一体数億ゴールドだぞ! それが、あんな乞食どもに!」
英雄の成れの果て
「ええい、役立たずどもめ! 『特級』を出せ!」
バルバロスが叫ぶと、馬車の奥から一人の男が現れた。
全身を黄金の鎧で拘束され、両目を縫い合わされた剣士。かつて『剣聖』と呼ばれ、行方不明になっていた男の成れの果てだ。
「殺せ。私の所有物を壊す者は、全て殺せ」
「……ウ、ア……」
元剣聖は、呻き声を上げながら、目にも止まらぬ速度で抜刀した。
その斬撃は、空間ごと老人部隊を切り裂こうとした。
ガキィィン!!
その一撃を受け止めたのは、セラフィナだった。
「……師匠?」
セラフィナの声が震える。目の前の男は、ガラルドとは違う、彼女が心から尊敬していた本当の師匠だったからだ。
だが、今の彼に理性はない。脳をバルバロスの『強欲』によって書き換えられ、ただの殺人人形と化していた。
「許さない……バルバロス!」
セラフィナの剣に、激しい怒りの炎が宿る。
王の出陣
戦況が膠着しかけたその時、戦場の中央に黒い影が降り立った。
蓮だ。
彼は、漆黒の義手『虚空の右腕』をぶら下げ、バルバロスの馬車へと真っ直ぐに歩き出した。
襲いかかってくるキメラや改造兵士たち。
蓮は、彼らに視線すら向けない。
「邪魔だ」
蓮が義手を軽く振るうだけで、触れてもいない敵が、重力崩壊を起こしてペシャンコに潰れていく。
「ひぃっ……!?」
バルバロスは、モニター越しに見る蓮の姿に戦慄した。
自分のコレクションが、まるで玩具のように壊されていく。
蓮は、馬車の前で足を止めた。
「バルバロス。お前の商売は終わりだ」
蓮は、義手を馬車に向けた。
「お前が溜め込んだ金も、兵器も、命も……全て僕が『接収』する」
「ふ、ふざけるな! 私は『強欲』の適合者だぞ! 世界の富は全て私のものだ!」
バルバロスは、自らの身体に埋め込まれた『強欲の魔石』を発動させた。
馬車が変形し、巨大な黄金の魔神へと姿を変える。
「私の価値を見せてやる! 貴様のその右腕も、私のコレクションに加えてやるぞ!!」




