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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生


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第37話:喪失の痛みと、反撃の狼煙

1. 檻の中の比較

剣崎の野営地。蓮は泥と血にまみれながら、荒野の砂を噛み締めていた。


剣崎恭吾による暴力と罵倒は続いている。


「おい、Eランク。その『片腕』で何ができる? 腕一本ない状態で、俺に勝てるとでも思ってるのか?」


剣崎は、蓮の右肩にある**『欠損した断面』**を足先で小突き、嘲笑った。


蓮は、肩から先が存在しない右側の虚無感と、そこに走る幻肢痛ファントムペインに顔を歪めた。概念管理者によって『概念的切断』を受けた傷跡は、未だに世界そのものに否定されているかのような激痛を発している。


しかし、蓮の精神は、肉体の欠損とは別の次元にあった。


(腕の一本くらい、なんだ……。ユリアは、存在そのものを消されたんだぞ……)


蓮の脳裏には、数日前の光景が焼き付いていた。銀色の鎧を纏った概念管理者たち。そして、ガラスのような「時間の檻」に閉じ込められ、永遠の狭間へと消えていったユリアの姿。


それに比べれば、右腕を失った痛みなど、耐えられる。


(僕が味わった『喪失の概念』に比べれば、お前の『屈辱の概念』など、児戯に等しい。ユリアを奪われた絶望が、僕の理性を冷徹に研ぎ澄ませてくれる)


蓮にとって、今の剣崎は恐怖の対象ではなく、ユリアを取り戻すための旅路を邪魔する、排除すべき障害物でしかなかった。


2. 解析完了と魔力の送信

蓮の『強化された知性』は、ついに剣崎の『絶対防御』の解析を完了した。


剣崎の防御は、彼自身の「自分は選ばれた勇者である」という傲慢な精神状態によって維持されている。それは強固だが、外部からの干渉を一切想定していない、独りよがりな概念だ。


(ユリア。君が守ろうとしてくれたこの命、こんなところで終わらせはしない。この残った左手だけで、全てをひっくり返す)


蓮は、拘束された唯一の腕である左手の指先だけで、極限まで圧縮した魔力の塊を練り上げた。


そこには、剣崎の防御を崩すための「概念の穴」のデータと、仲間たちへの具体的な指示が込められている。


(セラフィナ殿、リサ、フィーネさん。聞こえるか。これが、僕たちの反撃の狼煙だ)


蓮は、管理者から逃げる際に誓った「必ずユリアを救い出す」という執念を魔力に乗せ、荒野の彼方へと解き放った。


3. 届いた意志と三人の覚悟

野営地から離れた岩陰。フィーネが突如として目を見開き、胸を押さえた。


「来ました……!蓮様からの、概念データです!」


フィーネの精神を通じて、蓮の解析結果がセラフィナとリサにも共有される。その情報の密度と、片腕を失いながらも折れていない蓮の凄まじい執念に、三人は息を飲んだ。


「これは……剣崎の『絶対防御』を無力化する手順。そして、蓮自身を囮にした、乾坤一擲の作戦……」


セラフィナは剣の柄を強く握りしめた。彼女の脳裏にも、ユリアが消滅したあの瞬間の悔しさが蘇る。


「ユリア殿は、身を挺して私たちを逃がしてくれた。そして蓮は、その身を削って私たちを守った。今度は私たちが、蓮を……この理不尽な世界から守り抜く番だ」


リサが立ち上がり、獣人の瞳を鋭く光らせた。


「行こう。蓮様が作った『道』を、私たちが走り抜ける。あの勇者気取りの男に、本物の絶望を教えてあげるのよ」


4. 作戦開始:結界の破壊

リサは、蓮から送られたデータに基づき、剣崎の野営地を取り囲む魔力結界の「継ぎ目」へと疾走した。


蓮の解析によれば、この結界は「外部からの敵意」には反応するが、「自然現象」と誤認させることで透過が可能だという。


リサは自身の『速度の概念』を調整し、風と一体化した。


「見えた。あそこね」


彼女は音もなく結界の死角に滑り込み、その基点となる魔石を、素手で粉砕した。


パリン、という微かな音が荒野に響く。


野営地全体を覆っていた警戒網が、誰にも気づかれることなく消失した。

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