第30話:概念を統べる者と、終焉の儀式
1. 概念の祭壇と不吉な渦
蓮たち一行は、激しい痛みを右腕に抱えながらも、ついに**『概念の祭壇』**と呼ばれる広大な地下空洞へと足を踏み入れた。空間は古代の魔力に満ち、その中央には、巨大な円形の石版が不気味に浮かび上がっている。
石版の上には、黒い光を放ちながら渦巻く**佐野瑛太の『光の勇者の概念の残滓』**があった。それは、かつて世界を照らした存在の、悍ましい亡霊のようだった。
その祭壇の前でローブを脱ぎ捨てたのは、闇の魔術師、ゼラス。彼の肌は青白く、金色の縦長の瞳孔を持つその姿は、明らかに人ならざる種族のものだった。
ゼラスは、鋭利なガラスが打ち砕かれるような、高周波の響きを持つ声で蓮を迎えた。「よく来た、Eランクの底辺よ。驚きはしない。君の**『修復の概念』は封じたが、君の『左手の概念』**がここまで進化するとはね」
フィーネは、蓮の隣で激しく震えながら、彼に問うた。「貴方は、人間ではない!一体何者なの!?」
「我々は**『概念を統べる者』」ゼラスは誇りを滲ませた声で答えた。「遥か古代、『概念戦争』を生き延びた種族の末裔だ。名はゼラス**。そして、我々の目的は一つ――不完全なこの世界をリセットし、真の概念の神を降臨させること」
2. 汚染された光の触媒
ゼラスは、祭壇に浮かぶ佐野瑛太の残滓を指さした。
「君たちの光の勇者は、最高のエネルギー源だ。彼の**『光の概念』は、憎悪によって完全に汚染された。この汚染された『光』こそ、世界を『終焉の概念』**へと反転させる、触媒となる!」ゼラスの声は、高周波の響きを増し、狂気を帯びていた。
ゼラスが術式を発動すると、佐野瑛太の残滓から発せられる黒い光が、祭壇の巨大な石版へと凄まじい勢いで流れ込み始めた。石版に刻まれた古代文字が、世界の**『崩壊』**という概念を現実のものにしようと、不吉に輝き出す。
「ふざけるな!そんなことをさせるために、私たちがここまで来たんじゃない!」リサは怒りに燃え、斬りかかろうとする。
だが、ゼラスは無数の**『憎悪の鎖』という概念的な罠を周囲に展開し、リサの動きを瞬時に封じた。「この憎悪は、単なる魔力ではない!触れるだけで、『絶望の概念』**が心に侵入してくる!」リサは苦悶の声を上げた。
3. 左手の『概念の否定』
蓮は、右腕の激痛に耐えながらも、冷静にゼラスの術式と祭壇を鑑定し続ける。このままでは、儀式は止められない。
「セラフィナ殿、ユリア殿、リサ!ゼラスが操る**『憎悪の概念』の濃度が高すぎる!僕たちの『絆の概念』だけでは、正面から突破できない!」蓮は、左手に握った木の枝を、まるで概念操作の杖**のように掲げた。
「フィーネさん!僕の左手の**『概念術式』と、あなたの『治癒の根源』を連結します!僕の『左手の概念』を『概念の逆流』**へと強化する!」
蓮は、心の中で【全能化】の術式を構築した。《対象:『左手の概念』を、**『概念を逆流させる絶対的な『概念の否定』の術式』へと無限強化。対象:『闇の鎖』の『憎悪の概念』**を源へ押し戻します!》
蓮が左手を振るうと、彼の左手そのものから、概念を否定する光の奔流が生まれ、ゼラスが展開した**『憎悪の鎖』**を、ゼラス自身へと押し戻し始めた。
「なっ……!私の**『憎悪の鎖』が、逆流しているだと!?何という概念の操作**……!」ゼラスは驚愕し、儀式の手を止めざるを得なくなった。
4. 欠損の概念が呼ぶ激痛
蓮は、一瞬の優位を得たが、この強力な**『概念の否定』の術式は、右腕の『概念的切断』**の傷に強烈な負荷をかけた。
「ぐっ……!」蓮は、再び激痛に襲われ、膝をついた。右腕の断面からは、黒い靄が激しく噴き出し、空間の安定を揺るがす。
フィーネは、蓮の左手に触れ、自分の**『治癒の概念』を必死に注ぎ込んだ。「神崎様!私たちが、あなたの『命の概念』**を支えます!決して、倒れないで!」
ゼラスは、蓮の苦痛を嘲笑し、勝利を確信した。
「やはり、君の力は不完全だ!その**『欠損の概念』が、君の命を蝕む!」ゼラスの声が響き渡る。「これで、儀式は完了する!さあ、光の勇者の概念よ。『概念神』の礎となれ!そして、この世界を『リセット』**せよ!」
蓮たちは、右腕の概念的切断という絶望的なハンデと戦いながら、世界の概念の崩壊という、最大の危機に直面していた。




