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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生


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第2話:最初の仲間と最強の木の枝

1. 森の奥で

王都から追放されて一日。


神崎蓮は、最強の武器となった『木の枝』を携え、広大な森の中を歩いていた。魔力の消費と回復を繰り返しながら、さらに枝を強化し続けた結果、その強度はもはや測定不能の域に達していた。


「【全能化】の力はすごい。地道だけど、裏切らない」


蓮は歩きながら、瑛太が王都で何をしているかをぼんやりと考えていた。きっと今頃、SSランクの【神の光】を使い、華々しく魔物を討伐しているだろう。そして、自分の存在など、頭の片隅にもないはずだ。


そんなことを考えていると、突然、遠くから悲鳴が聞こえた。


「きゃあ!誰か、助けて!」


蓮は思考を止め、音のする方向へ駆け出した。


2. エルフの少女フィーネ

そこは、古い岩場に囲まれた小さな広場だった。魔力によって生成されたかのような霧が立ち込めており、その先に、小さな洞窟が見える。どうやらこの辺りが、この世界の言う**「ダンジョン」**の入り口らしい。


広場の中心には、一匹のゴブリンがいた。一般的なゴブリンよりも一回り大きく、赤黒い皮膚を持つレッドゴブリンだ。


そのゴブリンに追い詰められていたのは、一人の少女。長いプラチナブロンドの髪を持ち、先が尖った耳――エルフの少女だった。彼女は杖を構えていたが、魔力が尽きたのか、震えるだけで何もできない。


「くっ……もう、魔力が……」


レッドゴブリンは勝利を確信したように、不快な笑いを上げながら、手に持った粗悪な鉈を振り上げた。


蓮は迷わなかった。助けを待つ余裕はない。


「危ない!」


蓮は地面を蹴り、全力でゴブリンに突っ込んだ。


3. 最強の一撃

レッドゴブリンは、突然現れた地味な制服姿の男を見て、獲物を奪われたとばかりに怒鳴り声を上げた。


「人間!邪魔だ!」


ゴブリンは、蓮に対して鉈を振り下ろした。蓮はそれを避けることなく、手に持つ『木の枝』で受け止めた。


キンッ――!


まるで、神々の金属がぶつかり合ったかのような甲高い音が響き渡った。


蓮の木の枝は、傷一つない。対して、ゴブリンの鉈は、根元からへし折れていた。


ゴブリンは呆然とする。そして、蓮は感情のない目でゴブリンを見据えた。


「邪魔なのは、お前だ」


蓮は、その木の枝を、まるで釘を打つかのように、ゴブリンの頭部に振り下ろした。


ガッ――!


木の枝は、防具も骨も皮膚も、抵抗を受けることなく粉砕し、ゴブリンを地面に叩きつけた。ゴブリンは呻き声を上げることもなく、一瞬で光の粒子となって消滅した。


その光景を見ていたエルフの少女は、言葉を失っていた。彼女の目には、蓮がただの木の枝で、レッドゴブリンを一撃で消滅させた事実しか映っていなかった。


4. 不遇な治癒師

蓮は枝についた魔物の血を払い、エルフの少女に駆け寄った。


「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」


少女はまだ震えていたが、蓮の優しい声に我に返った。


「あ、ありがとうございます……私は、フィーネです。治癒師です……」


蓮は自己紹介をした。フィーネは蓮の地味な服装を見て首を傾げた。


「あの……神崎様は、いったい何者なのですか?その……武器は?」


蓮は木の枝を眺めた。


「これはただの木の枝ですよ。僕のスキルは【全能化】。物を少しだけ強化する能力です」


フィーネは驚愕した。


「そ、そんな馬鹿な!普通の木の枝でレッドゴブリンを一撃で……?それに【全能化】は、最低ランクのEランクスキルのはず……」


フィーネは悲しそうに続けた。


「私も、Eランクスキルなんです。【微小治癒】。傷を少ししか治せないから、パーティを組むときにいつも嫌がられて……」


彼女は、自分と同じく不遇なスキルを持つ者として、蓮に親近感を覚えた。


蓮は優しく笑った。


「Eランクでも、使い方次第ですよ。僕のスキルも、無限に使えば最強になれると気づきました。フィーネさんの【微小治癒】も、きっと何か使い道があるはずです」


蓮は、フィーネが持っていた古びた杖に目を留めた。杖の先端がひび割れており、魔力を通すには危険な状態だった。これが魔力切れの原因だろう。


「この杖、僕に預けてくれませんか?少しだけ、良くしておきますから」


フィーネは半信半疑だったが、命の恩人である蓮に杖を渡した。


蓮は杖を受け取り、【全能化】を起動させた。


5. 神具の誕生

杖の『魔力伝導率』に対して、スキルを発動する。


《スキル【全能化オール・エンハンス】を発動。対象:『古びた杖』の『魔力伝導率』を向上させます。効果:0.1%》


この杖には、ゴブリンの枝への強化とは比較にならないほど、大量の魔力を注ぎ込んだ。何時間も、何万回も強化を続けた。


魔力伝導率、耐久度、そして杖に込められた「癒やしの力」そのものまでを、蓮は極限まで強化した。


やがて、ひび割れていた杖は、温かい光を放ち始めた。ひびは消え、杖の先端には、微細な魔力の粒子が輝くようになっていた。


蓮がフィーネに杖を返すと、彼女は恐る恐るそれを受け取った。そして、杖からあふれ出す無限に近い魔力に、目を見開いた。


「これ、は……!まるで、伝説の神具のような魔力の流れ……私のEランクスキルが、この杖を通すと、まるでSSランクの治癒魔法のように膨大に魔力が湧き出てくる……!」


フィーネは、自分を「底辺」と見下した者たちが欲しがるような、規格外の力を目の当たりにした。そして、その力を生み出した蓮を、心から信頼し、尊敬した。


蓮は静かに言った。


「これなら、フィーネさんの【微小治癒】も、最大限に活かせますね」


フィーネは涙ぐみながら、深く頭を下げた。


「神崎様……!ありがとうございます!わ、私でよければ、あなたの旅にお供させてください!微力ですが、全力でサポートします!」


蓮は微笑み、その手を取った。


「こちらこそ。頼りにしていますよ、フィーネさん」


こうして、Eランクスキルを持つ追放された少年と、Eランクの治癒師のエルフ少女による、最強のパーティが結成された。


そして、森の中、蓮の耳に、偶然流れてきた噂が届く。


「聞いたか?王都の光の勇者様が、ゴブリンロードの討伐に失敗したらしいぞ。大怪我で、治癒師も手が出せないって……」


蓮は木の枝を軽く握りしめた。王都で何があろうと、もう自分には関係ない。今はただ、目の前の仲間と共に、新しい道を歩くだけだ。

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