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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第181話:知恵の回廊、あるいは沈黙の使者

1. 観察者ガルの旅路:広がる「知恵の網」

若者ガルは、今や北域連合の「巡回官」として、週に一度は隣接する集落へと足を運んでいた。 かつては魔獣が闊歩し、飢えた住人が石を投げ合っていた荒野には、今や蓮が記した「街道整備の知恵」に基づいた平坦な道が続いている。


道中、ガルは立ち寄った村々で、蓮の写本を手にする若者たちに出会う。 「ガルさん、見てくれ! この蓮さんの『水車』の図面通りに組んだら、脱穀がこれまでの十倍の速さで終わったよ!」 「こっちじゃアルマ先生の『衛生管理表』のおかげで、赤ん坊の病死が半分以下になったんだ」


そこにあるのは、神への感謝ではない。自分たちの手で生活を便利にしたという、誇らしい笑顔だ。 蓮が蒔いた「知恵」という名の種は、ミディアムの土壌に深く根を張り、神の奇跡を必要としない強靭な共同体を形成しつつあった。


2. アルマの学校と、失われた「呪言」

拠点となる村の診療所には、アルマが私塾を開いていた。 彼女が教えるのは、神々が人間に与えた「呪言(魔法)」ではなく、事象を論理的に分解する「科学」の初歩であった。


「アルマ先生、魔法を使えば一瞬で火が点くのに、なぜ摩擦や火打石を使うの?」 子供の無邪気な問いに、アルマは慈愛に満ちた表情で答える。


「魔法の火は、神様が気まぐれで消してしまったら、私たちは凍えてしまいます。でも、自分の手で点けた火の作り方は、誰にも奪えません。……私たちは、奪われない力を学んでいるのですよ」


その教育は、ミディアムの住人たちを「思考する個」へと変貌させていた。 依存を捨て、自律を重んじる。それは神々にとって、どんな反乱軍よりも御しがたい「不協和音」の正体であった。


3. 沈黙の使者:傲慢からの「贈り物」

そんな平穏な村の入り口に、一人のボロボロになった中間体が辿り着いた。 彼は、蓮たちが築いた秩序とは対極にある、凄惨な「暴力の残り香」を纏っていた。


「……神崎、蓮……は……どこだ……」


男が差し出したのは、漆黒の魔力が封じられた「歪な宝石」であった。 それは、別行動をとり神域を荒らし回っている『傲慢』からの、沈黙のメッセージだった。 蓮が宝石を手に取ると、傲慢の嘲笑うような声が直接脳裏に響く。


『……蓮よ、泥遊びは捗っているか。貴様が土をいじっている間に、私は神の騎士どもを百柱ほど屠り、その玉座の一角を焼き払った。……貴様のその「無」は、いつまで眠らせておくつもりだ? 牙を忘れたのなら、その平穏ごと私が踏み潰してやろうか』


傲慢は、蓮の「静かなる建国」を弱さと断じ、挑発を続けていた。 彼は一人で神の注意を惹きつける「囮」としての役割を果たしながらも、蓮が真の「王」として再び立ち上がることを、渇望にも似た憎しみで求めていた。


4. 大天の揺らぎ:見落とされたバグ

大天の最上層では、四神たちが傲慢の暴走に手を焼いていた。


「あはは! もう、あの黒い子、しつこいよ! 聖域の柱をあんなにボロボロにして!」 ファンタズムは怒り狂い、傲慢を仕留めるために大量の守護騎士を投入し続けている。


その背後で、ヴェスペラが不意にモニターの端を掠めた「僅かな数値の欠落」に目を留めた。 ミディアム北域。魔力反応ゼロ、信仰心ゼロ。神のシステム上は「完全に死んだ土地」として処理されている領域だ。


「……おかしいわ。あそこ、観測上は『無』のはずなのに、物理的な質量だけが異常に安定している。まるで、神の定義とは別の『理』で、世界が再構築されているような……」


しかし、その疑念は、再び傲慢が起こした大爆発の報告によってかき消された。 神々は、自分たちの足元で「神を必要としない世界」が物理的に完成しつつあることに、まだ気づいていない。


5. 蓮の選択

傲慢からの宝石を握りつぶし、蓮は静かに立ち上がった。 かつてのような怒りはない。ただ、自らが守り、育ててきたこの「知恵の国」が、神の理不尽な破壊を跳ね返すための「盾」として完成したことを確信していた。


「蓮様……どうなさいますか」 ユリアが問いかける。彼女の背後には、蓮の知恵を学び、自らの手で村を守ろうとする住人たちの静かな熱気があった。


「……傲慢には、勝手に暴れさせておけ。奴の破壊が激しいほど、俺たちの『空白』は深くなる」


蓮は、自らの右腕に宿る「虚無」の感触を確かめた。 それはもはや、単なる破壊の力ではない。 神が定めたこの世界の「システム」そのものを、知恵という名のナイフで切り刻み、自分たちの意志で上書きするための、究極の修正プログラムであった。


「そろそろ、神々の酒杯に『毒』ではなく『終わり』を注ぎに行く頃合いだ」

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