表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/198

第179話:泥と汗の聖域

1. 偶像の破壊、労働の号令

集落の広場には、何百人もの難民と住人がひしめき合っていた。熱狂的な信奉者たちが蓮の前に跪き、奇跡を求めて声を張り上げる。その異様な熱気は、知恵による復興を根底から揺るがそうとしていた。


蓮は、自らを拝もうとする群衆の前に立ち、隣に立つ「土の隠者」を一瞥した。隠者は黙って頷き、足元の土を一つかみして、蓮の手のひらに乗せた。


「皆、静かにしてほしい」


蓮の声は低かったが、喧騒を切り裂く重みがあった。


「私を神と呼びたいのなら、この土を見ろ。これは奇跡で生まれたものではない。何千年もかけて、この地で朽ちた命が積み重なったものだ。……私が与えるのは救済ではない。明日、お前たちが喉を潤すための『仕事』だ」


蓮は隠者が指し示した、集落の北端にある巨大な岩盤地帯を指差した。


「あそこに、巨大な貯水池を作る。魔法は一切使わない。全員で、人の手で掘り進めるんだ。……私を崇める暇があるなら、すきを持て。私に祈る時間があるなら、隣の者の手を引け。それが、この地で生きるための唯一の礼儀だ」


2. 大発掘プロジェクト

翌日から、ミディアムの歴史上類を見ない規模の「人力工事」が始まった。 「土の隠者」は、かつての神としての権能を一切封じ、一人の現場監督として泥にまみれた。彼は、どの深さに岩盤があるか、どの角度で石を積めば崩れないかという「大地の声」を的確に蓮に伝えた。


移民も、古参の住人も、種族の違いも関係なかった。 皆、同じ泥にまみれ、同じ重い石を運び、同じ渇きを共有した。祈ることで腹が膨れることはないが、共に掘り進めることで、確実に地面からは冷たい湿り気が漂い始めていた。


「……蓮さん、あの新しく来たミノタウロス族の連中、最初は暴れるかと思ったが、今じゃ一番の力仕事を買って出てるよ。住人たちも、あいつらの怪力に助けられて、少しずつ打ち解けてきた」


ゼフが、汗を拭いながら報告する。 共通の、そして過酷な目標。それが、宗教的な狂信や種族間の対立という「毒」を、労働という「熱」で中和させていた。


3. アルマの衛生管理と、信仰の変質

「救済のアルマ」は、工事現場に隣接した休憩所で、負傷者の手当に追われていた。 彼女が作るのは、魔法の聖水ではない。隠者が教えてくれた薬草と、清潔な真水だ。


「アルマ先生、神崎様は本当に魔法を使ってくださらないの?」


一人の子供が問いかける。アルマは優しく微笑み、子供の手に握られた小さな石ころを見つめた。


「ええ。蓮様が使わないのは、皆さんが自分の力を信じるためですよ。魔法で治った傷は神様のものですが、皆さんが一緒に頑張って治したこの街は、皆さんのものですから」


次第に、蓮を拝もうとする者は減っていった。 人々は、蓮を「神」ではなく、自分たちと共に泥にまみれて図面を引く「最も頼りになるリーダー」として再定義し始めていた。


4. 大天の盲点:ノイズの海

大天の最上層では、少女の姿をしたファンタズムが、真っ暗なモニターの前で死んだ魚のような目をしていた。


「……ねえ、もう本当に無理。何なのこれ、数千人がかりで地面を掘ってるだけじゃない。魔力反応ゼロ、ドラマチックな展開ゼロ。ただの土木工事の記録映像なんて、一秒も見てられないよ」


神々の監視回路にとって、魔力を使わない大規模な集団行動は、ただの「地殻変動」や「背景ノイズ」として処理される。 蓮が仕掛けた「退屈」という名の防御壁は、隠者の神の知恵が加わったことで、さらにその秘匿性を高めていた。


「……あの子のことは、もう存在しないものとして扱いましょう。ミディアムの辺境で、ただの土塊に還っていくのを待つだけよ」


ヴェスペラもまた、監視の維持を完全に放棄した。


5. 地底からの返答

工事開始から数ヶ月が経った夕暮れ。 隠者の神が、一つの岩盤を指差した。


「蓮殿。ここです。最後の一打を、あなたたちの手で」


蓮とゼフ、そして移民の代表者が共に重いつちを振り下ろした。 砕けた岩の隙間から、これまでミディアムの住人が見たこともないような、澄み渡った真水が噴き出した。それは魔法で作られたものではない、この地が数千年の眠りから覚めた「真実の恵み」であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ