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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第178話:岐路に立つ共同体

1. 膨れ上がる境界

ミディアム北域の集落は、もはや単なる「村」の規模を越えつつあった。 蓮の知恵による「奇跡なき豊穣」の噂は、神の理不尽な天災に怯える各地の難民たちを呼び寄せた。毎日、異なる角や鱗を持つ多種多様な中間体たちが、痩せ細った身体を引きずって境界線に辿り着く。


「……蓮さん、これ以上は無理だ。食料の備蓄も、住居を作るための木材も足りない。新しく来た連中を追い返さないと、共倒れになる」


ゼフの言葉には、かつての憎悪ではなく、現実的な「統治者としての悲鳴」が混じっていた。 移民の流入は、リソースの枯渇だけでなく、文化や風習の違いによる衝突をもたらした。新参者たちは、蓮が守り続ける「魔力を使わない」という戒律を理解できず、空腹に耐えかねて禁じられた魔力行使に手を染めようとする者も少なくなかった。


2. 古き信仰の呪縛

さらに深刻なのは「信仰」の問題であった。 難民たちの中には、神崎蓮を新たな「神」として崇めようとする過激な一派が現れ始めていた。彼らは、蓮がかつて振るった白銀の力を伝説として語り継ぎ、現在の「知恵による労働」を、神が与えた試練(苦行)だと解釈していた。


「我々に力を! 神崎様、貴方の奇跡でこの乾いた大地を一瞬で楽園に変えてください!」


広場に集まった難民たちが、蓮に向かって跪き、祈りを捧げる。 蓮はそれを、苦い表情で見つめるしかなかった。力による救済を望む心は、神への依存そのものだ。それは、蓮が最も危惧していた「神の支配構造への逆戻り」を意味していた。


3. 異邦の旅人

混乱を極める集落の境界で、一人の奇妙な男が静かに土をいじっていた。 彼は中間体のような外見をしていたが、どの種族にも属さない不思議な雰囲気を纏っている。ボロボロの麻布を纏い、黙々と荒野の石を拾い集めては、見事な石積みの壁を作っていた。


「……見事な手際だな。君もどこかの村から逃げてきたのか?」


巡回中の蓮が声をかけると、男は手を止め、穏やかな笑みを浮かべた。


「いいえ。私はただ、土が寂しがっているのを感じて、ここに座っただけです。……神崎蓮殿。あなたは、この人々に『答え』を与えすぎている。だから彼らは、自ら考えることをやめ、あなたを新たな偶像に祭り上げようとしているのです」


その言葉は、蓮の胸の奥を鋭く射抜いた。 蓮は知恵を与えてきたつもりだった。だが、それがいつの間にか「蓮という個人の知識への依存」にすり替わっていたことに、彼は気づかされた。


4. 忘れ去られた神「テラ」

男が指をパチンと鳴らす。 瞬間、蓮の視界が歪んだ。魔力反応はない。だが、そこにあるのは神の権能ギフトとは本質的に異なる、根源的な「理」の顕現であった。


「……お前、ミディアムの住人じゃないな。何者だ」


蓮が警戒し、右腕に力を込めようとする。しかし、男は動じずに地面を撫でた。


「私はかつて、この地が『ミディアム』と呼ばれるよりもずっと前、泥と労働を愛した神の一人でした。大天の連中が『効率的な娯楽』に耽るようになり、忘れ去られた存在です。……名は、今はもうありません。ただの『土の隠者』とでも呼んでください」


彼は、大天の四神のような支配を好まない、原始の神の一柱であった。彼もまた、ファンタズムたちの「美しく、劇的な破壊」を嫌い、泥臭く時間をかける人間の営みを愛でる性質を持っていた。


5. 奇妙な共闘

「私は、あなたたちの『退屈な建国』に興味があります。神の監視を潜り抜ける知恵、そして信仰に頼らない強さ。……蓮殿。移民たちの衝突を収めるのは、力でも、あなたの知恵でもない。『共通の苦労』です」


自称・隠者の神は、蓮に一つの提案をした。 それは、新しい「神殿」を作ることでも、食料を配給することでもなかった。全ての種族、新参者も古参者も関係なく、巨大な「貯水池」を人力だけで掘り進める、終わりなき共同作業の提案だった。


「私が、この地の深い層にある『真水の脈』を指し示しましょう。ただし、掘り出すのは彼らの腕です。……信仰が生まれる暇もないほどに、彼らを泥まみれにさせるのです」


蓮は男の瞳の中に、大天の神々にはない「慈愛を伴う残酷さ」を見た。 それは、人間が真に自立するための、最も険しく、しかし確かな道であった。


「……いいだろう。お前のその『知恵』、借りることにする」

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