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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第177話:情報の根、静かなる連帯

1. 観察者ガルの広がる世界

集落の若者ガルは、今や村の枠を超えて「伝令役」としての任に就いていた。 彼の背負うカバンには、蓮が考案した「紙」の技術で作られた簡素な手引書が詰め込まれている。そこには、魔力を使わずに作物を育てる方法や、流行病を防ぐための知恵が、ミディアムの共通言語で丁寧に記されている。


かつて、この地の村々は孤立していた。神の支配下で資源を奪い合い、隣村は常に「奪うべき敵」だったからだ。だが、蓮が示したのは、奪い合うのではなく「知恵を共有する」という未知の概念であった。


「ガル、隣の岩礁の村へ届けてくれ。あそこの塩害に効く作物の組み合わせを蓮さんと考えたんだ」


ゼフに送り出され、ガルは荒野を駆ける。その足取りは軽い。彼は今、破壊の連鎖ではなく、再生の糸を紡いでいるという誇りを感じていた。


2. 知恵の連邦:ミディアム連合

蓮のいる拠点には、連日のように他の集落から「使節」が訪れるようになっていた。 彼らはかつて蓮の白銀の力に怯えた者たちだが、今その目に宿っているのは、明日を生き抜くための切実な期待である。


「蓮殿。我らの村でも、教わった『水路の整備』が完了した。おかげで、神の気まぐれな雨を待たずとも作物が枯れずに済んでいる」


「それは良かった。次は、余った作物を隣村の石材と交換する仕組みを作りましょう。力による統治ではなく、互いの欠如を補い合う『円卓』を作るのです」


蓮は王として君臨することを頑なに拒み続けていた。 彼はあくまで、一つの集落の相談役として振る舞う。しかし、その知恵に救われた村々が自発的に繋がり始めたことで、ミディアムの北域には巨大な「情報の網」が形成されつつあった。それは、神の物理的な占領を無効化する、精神的な建国であった。


3. アルマの医学書と、失われた「奇跡」

診療所では、アルマが自らの手で書き溜めた医学書の写本が作られていた。 かつて彼女が放った「神聖な光」は、傷を塞ぐ代償として、患者の生命力を前借りする性質を持っていた。だが、今彼女が推奨する「薬草と休息」による治療は、時間はかかるが、患者自身の生きる力を強く育てる。


「魔法は依存を生みます。でも、知恵は自立を助けます」


アルマの言葉は、神への祈りを捧げることしか知らなかったミディアムの住人たちに、衝撃を与えた。 自分の病を自分で治せる。その確信は、神という巨大な偶像を必要としない「個」の覚醒を促していた。


4. 大天の盲点:娯楽の終焉

大天の最上層では、極彩色の酒がその輝きを失っていた。 ファンタズムは、真っ暗になったモニターを枕にして、退屈そうに鼻提灯を膨らませている。


「……ねえ、ヴェスペラ。もうあの『人間くん』のことは放っておこうよ。ただの農夫になっちゃったあの子を見てても、一滴もいいお酒が取れないんだもん」


ヴェスペラもまた、退屈を隠そうともせずに溜息を吐く。 神々にとって、魔力を使わない人間の営みは、蟻が土を運ぶ光景を眺めるのと同じだ。そこには劇的なカタルシスも、魂を揺さぶる悲鳴もない。


「……そうね。今は、どこかの聖域を片っ端から焼き払っている『傲慢』の方が、ずっと芳醇な香りを放っているわ。あの子の監視(観測)はもう打ち切りましょう。どうせ、数年もすれば寿命で朽ち果てるわ」


神々の関心は、派手な破壊を繰り返す傲慢へと完全にシフトした。 蓮たちが築き上げた「知恵の国」は、神の認識から完全に脱落した。それは、この世界において「神の法から自由になった」ことを意味していた。


5. 胎動する真の反撃

夕暮れ時、蓮は村の高台から、かつてないほど平穏なミディアムの風景を見渡していた。 彼の右腕の虚無は、今や深く静かに眠っている。だが、その内側には、かつての白銀の光とは異なる、重厚で確固たる「世界の重み」が蓄積されていた。


「蓮様……準備は整いつつあります。神々が私たちを『無価値』だと断じた今こそが、私たちの真の進撃の始まりですね」


ユリアが隣に立ち、沈む夕陽を見つめる。 神が支配する占領地を、知恵と礼節で塗り替えた蓮たちの戦いは、ここから第2フェーズへと移行しようとしていた。


「ああ。力ではなく、この世界の『システム』そのものを、俺たちの知恵で書き換えてやる」


神々が忘却という名の安眠を貪る中、ミディアムの地下では、神の玉座を根底から揺るがす巨大な根が、確実に、そして深く張り巡らされていた。

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