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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第176話:見放された地の胎動

1. 観察者ガルの手記

集落の若者ガルは、村の広場に設置された「掲示板」を眺めていた。 それは、蓮が発案し、村の大工たちが木材を組んで作ったものだ。そこには魔法の術式ではなく、その日の当番や、余った作物の交換希望といった、泥臭い「生活の記録」が記されている。


半年前、この村は絶望に沈んでいた。神の気まぐれな平定によって大地は枯れ、住人たちは互いに疑心暗鬼に陥っていた。だが、牢獄から出た「人間」神崎蓮は、一度も魔法を使わなかった。彼はただ、村人たちと共に膝をつき、土をいじり、対話を重ねた。


ガルの目から見て、蓮はもはや「空無の王」という恐ろしい存在ではない。 彼は、最も効率的で、最も粘り強い「知恵の提供者」であった。


2. 統治なき秩序

蓮は村の長老たちを集め、一つの提案をしていた。 それは「王による支配」ではなく、ミディアムの住人たち自身による「ルール」の策定であった。


「力で縛る必要はない。この村を維持するために必要な決め事を、自分たちで言葉にすること。それが、神の理から脱却する第一歩だ」


蓮は助言者に徹し、決して決定権を握ろうとはしなかった。 ユリアは、その横で静かに護衛を務めているが、彼女の剣が抜かれることは一度もない。彼女の役割は、力の行使ではなく、蓮が示した「礼儀」の象徴としてそこに立つことであった。


住人たちは、自分たちの手で村を運営し始めた。誰かに命じられるのではなく、自分たちのために汗を流す。その実感が、神の占領地として死にかけていた村に、本物の活力を与えていた。


3. アルマの巡回、あるいは公衆衛生

「救済のアルマ」は、村の外れに新しく作られた「診療所」にいた。 彼女もまた、その神聖な癒しの光を封印したままである。アルマが住人たちに教えていたのは、手洗い、うがいの徹底、そして汚水の処理方法といった、極めて現実的で地道な衛生知識であった。


「アルマ先生、この薬草を煎じれば、本当に熱が下がるの?」


「ええ。魔法の光は一瞬で痛みを消しますが、この薬草はお話を聞きながら、ゆっくりと身体を整えてくれます」


アルマは微笑み、子供の頭を撫でる。 奇跡に頼らない回復は、住人たちに「自分の身体は自分で守れる」という自信を与えた。それは、神への依存を断ち切るための、最も静かで強力な治療であった。


4. 盲目の円卓

大天では、四神たちが極度の退屈に苛まれていた。 ファンタズムは、監視モニターを足で蹴飛ばし、ふて腐れたように寝転がっている。


「……もう最悪。蓮くん、あんなに強くなったのに、毎日毎日『村の会議』とか『ゴミ拾い』とか。見てるだけで、こっちの神性が腐っちゃいそうだよ」


ヴェスペラもまた、監視を放棄し、別の次元で暴れ回る「傲慢」の動向に意識を向けていた。


「……あの子たちは、もう観測する価値もないわ。魔力の揺らぎすらない、ただの原始的な生活。神の酒を醸すための『劇的な変化』が絶たれた以上、あそこはただの死んだ土地よ」


神々にとって、魔力を使わない復興は「静止画」に等しい。 彼らの興味が完全に離れたことで、ミディアムの辺境は、真の意味で神の目から消え去った「空白地帯」となった。


5. 境界の拡大

収穫を終えたゼフが、蓮の元を訪れた。 その表情には、半年前にあった険しさはなく、代わりに一種の覚悟が宿っていた。


「……蓮。隣の集落の連中が、我らの噂を聞きつけてやってきた。あいつらも、神の理不尽な天災に喘いでいる。お前の『知恵』を貸してやってくれないか」


蓮は、荒れた自らの手を見つめ、静かに頷いた。


「喜んで。……力は貸せませんが、知恵ならいくらでもあります」


一つの村から始まった「知恵の伝播」は、神の監視が届かない暗闇の中で、ミディアムの各地へと根を広げ始めていた。 建国。それは力で領土を奪うことではなく、知恵を共有し、絆を紡ぐこと。 神崎蓮が始めた「静かなる建国」は、確実にその規模を拡大させていた。

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