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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第175話:開かれた扉、静かなる胎動

1. ガルの日記、あるいは半年後の光景

集落の若者ガルが綴る記録には、かつての恐怖は微塵も残っていない。 あれから半年が過ぎた。季節は巡り、ミディアムの乾燥した大地には、蓮の教え通りに作られた「知恵の畑」が広がっている。


それは神の奇跡のような一瞬の緑ではない。村人たちが毎日泥にまみれ、蓮の指示を仰ぎながら、自らの手で耕し続けた結果だった。


「……信じられないな。本当に、魔法を使わずに芽が出るとは」


ガルは収穫された、不格好だが重みのある穀物を手に取る。 牢獄の中の男、神崎蓮は一度も力を使わなかった。壁を壊すことも、衛兵を脅すこともなく、ただ静かに、絶え間なく知恵を出し続けた。その誠実さは、いつしか「呪い」を「信頼」へと書き換えていた。


2. 牢獄の解放

集落の長であるゼフが、重い足音を立てて牢獄へと向かう。 その手には、半年前から一度も使われることのなかった錆びついた鍵が握られていた。


「……人間。いや、神崎蓮よ。今日で半年だ」


ゼフは鉄格子越しに、静かに座る蓮を見据えた。 蓮の服はボロボロになり、頬はこけている。だが、その瞳に宿る光は以前よりも深く、澄み渡っていた。


「お前の知恵は、我らの冬を救った。傲慢という男が壁を壊して逃げ出した時、お前がその穴を塞がずに、ただ座り続けていた理由……今なら理解できる」


ゼフは鍵を差し込み、ゆっくりと回した。 重い鉄の扉が、音を立てて開く。それは力による脱獄ではなく、種族を超えた「対話」によって勝ち取った、真の自由の瞬間であった。


3. 神々の忘却

その瞬間、大天の監視ルームでは、少女の姿をしたファンタズムが盛大に欠伸をしていた。 彼女の目の前にあるモニターは、ノイズでほとんど何も映っていない。


「あーあ、つまんない。蓮くんたち、本当にただの村人になっちゃったんだね。もういいよ、こんなの。それより、あの『傲慢』って子が暴れ回ってる映像を見せてよ。そっちの方がずっとお酒が進むわ」


神々の監視は、もはや蓮たちを追っていなかった。 神にとって、魔力を使わない復興や、地道な農作業は何の娯楽価値もない「静止画」に過ぎない。 蓮が意図的に作り出した「退屈」という名の目隠しは、完璧に機能していた。


4. 救済のアルマ、慈愛の礎

牢獄を出た蓮の隣には、ユリア、そしてアルマが並んで立っていた。 アルマの周囲には、いつの間にか村の子供たちが集まっている。


「アルマ先生、またあのお薬を作って! お母さんの咳が止まったんだ!」


アルマは魔法を使わず、手作業で薬草を煎じ続けてきた。その指先は荒れているが、彼女を「神の使い」としてではなく「村の医者」として慕う住人たちの声は、どんな賛美歌よりも温かかった。


「……蓮様。私たちは、新しい国を、ここから始めるのですね」


ユリアの問いに、蓮は深く頷いた。


「ああ。神が支配する『占領地』でもなく、俺たちが力で捻じ伏せる『戦場』でもない。知恵と礼儀で結ばれた、俺たちの場所だ」


5. 静かなる進撃の始まり

蓮たちは、ゼフの案内で村の中心へと歩き出した。 住人たちの視線には、もう殺意はない。そこにあるのは、共に明日を作ろうとする、不器用な仲間としての連帯だった。


離脱した傲慢がどこかで神の怒りを買っている隙に、蓮たちはミディアムの底辺で、神の理が通用しない「人の国」を建国し始めていた。

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