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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第173話:礼節の深淵、あるいは神の盲点

1. 絶望の檻と、異種の視線

冷徹な石壁が、蓮たちの吐息を白く染める。 鉄格子の向こう側では、ミディアムの住人であるゼフが、不気味なほど静かに蓮を睨みつけていた。ゼフはこの境界世界の先住民であり、蓮の故郷である「人の国」とは、言葉の響きも、魂の拠り所も異なる種族である。


彼らにとって、蓮がこれまでの修行で振るった「白銀の力」は、救済などではなかった。それは、彼らが何世代にもわたって築き上げてきた平穏な営みを、一瞬で無へと帰す「異界の天災」に他ならない。


「……何か言いたげだな、人間。神に飼われ、我らの大地を汚した加害者が、今更何の慈悲を乞うつもりだ」


ゼフの声は低く、地を這うような憎悪が混じっていた。


2. 人の礼、最下位の請願

蓮は無言で立ち上がり、ゆっくりと、しかし迷いのない動きで床に両膝を突いた。 そのまま額を冷たい石に擦り付ける。それは「人の国」において、自らの命すら相手に預けることを意味する、最大級の謝罪の作法だ。


「……ゼフ殿。私は、救いようのない大罪を犯した」


蓮の声が、牢獄の床に反響する。その声には、神を殺すという目的のために周囲を切り捨ててきた「白銀の王」の威厳など、欠片も存在しなかった。


「お前たちの国、お前たちの家族。神を倒すという大義の陰で、私はお前たちの『当たり前の今日』を、この右腕で踏みにじった。……どんな言葉を尽くしても、奪った命は戻らない。だが、もし許されるなら、私の命を削ってでも、この地の再生に知恵を貸したい」


「蓮様……」


ユリアもまた、その横で静かに膝を突き、深々と頭を下げた。彼女の頬を、後悔の涙が伝い落ちる。


3. 魔力なき再建の策

蓮は、牢の床に落ちていた鋭利な小石を拾った。彼は自身の右腕に宿る虚無の力を完全に封印し、震える手で床に緻密な図面を刻み始める。


「ゼフ殿、見てほしい。今、お前たちの集落を襲っている『土壌の死』。あれは神の魔力が地脈を強引に捻じ曲げたことで起きた不治の病だ。魔力で治そうとすれば、地はさらに毒される。……だが、私の国の古い知恵がある」


蓮が描いたのは、魔力に一切頼らない「輪作」と「堆肥」による土壌改良の理論であった。


「これは魔法ではない。土に眠る生命力を、人の手でゆっくりと呼び戻す知恵だ。時間はかかる、苦労も伴う。だが、これは神の力を一切借りない、お前たちのための、お前たちの手による復興だ。……頼む。私を殺すのは、この知恵を伝えた後にしてくれないか」


その必死の訴えは、力による支配とは真逆の、泥にまみれた「人間」の叫びであった。


4. 監視の翳り:神の退屈

その光景を大天から覗き見ていたファンタズムは、大きく口を開けて欠伸をした。


「……あはは、何だいこれ。最高級の劇薬ぜつぼうを期待してたのに、ただの土いじりの相談? 蓮くん、君って本当に、時々信じられないくらいつまらない人間になるよね」


少女の姿をしたファンタズムは、手元のグラスを乱暴に放り出した。 神々の監視回路は、高密度の魔力反応や劇的な感情の爆発を感知することで維持されている。蓮が一切の力を封じ、泥臭い「知恵と礼節」の対話を始めたことで、彼らにとっての「娯楽価値」は急落していた。


「……視界がボヤけるわね。あんな地味なやり取り、記録する価値もないわ」


ヴェスペラもまた、不快そうに視線を逸らす。神々が「つまらない」と感じた瞬間、大天の監視モニターには激しいノイズが混じり、蓮たちの詳細な動向を追うことが不可能になり始めていた。


5. 交渉の始まり

ゼフは、床に描かれた歪な図面と、額を擦り付ける蓮の姿を交互に見つめた。 神の奇跡を謳う傲慢な侵略者たちは、かつて一度も、自らの非を認めて頭を下げたことなどなかった。


「……その図面が、私の村を救うというのか」


「……ああ。私の命にかけて、必ず」


ゼフは鼻で笑ったが、その瞳にはわずかな困惑と、これまでになかった「対等な他者」への疑念が宿っていた。


「……勝手にしろ。その知恵とやら、長老たちに回してやる。……ただし、明日になっても芽が出なければ、その頭をこの槍で叩き割るからな」

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