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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第171話:虚無の代償、あるいは憎悪の檻

1. 狭間の地の静寂

境界世界「ミディアム」の深奥に位置する、厚い石壁に囲まれた牢獄。そこが、神殺しを誓った蓮たちの現在の居場所であった。窓一つない空間に、魔力を抑制する重い鎖の音だけが虚しく響く。


蓮は冷たい床に座り、自身の右腕を見つめていた。神域を揺るがすほどの力を手に入れたはずのその腕は、今や皮肉にも、彼を縛り上げる理由の一つとなっていた。


「……蓮様、お食事です」


ユリアが差し出したのは、粗末なパンと水だった。彼女の瞳には、修行で得た鋭さよりも、拭いきれない困惑が色濃く滲んでいる。彼らは神々によってこの地に送り込まれ、修行の末に強大な力を得た。だが、その過程で周囲から向けられる視線は、自分たちが想像していたものとは全く異なっていた。


2. 鉄格子の向こう側

牢獄の鉄格子の向こう側では、中間体の衛兵たちが冷ややかな視線を送っている。彼らは単なる神の被造物ではない。この過酷なミディアムの地で、手を取り合い、家族を作り、誰かのために今日を生きようとする「人」としての営みを持っていた。


蓮たちは、神を倒すという大義に没頭するあまり、その足元にある小さな命の息吹を直視していなかった。


「……見てみろ、あのアクマどもの顔を」


一人の若い衛兵が、震える声で蓮を指差した。その隣には、彼を心配そうに見つめる仲間の衛兵や、遠巻きに怯えた瞳で蓮を見つめる住人たちの姿がある。


「あいつの『白銀』が通り過ぎるたびに、俺たちの生活は壊された。友も、家族も、あいつの言う『秩序』の名の下にすべて奪われたんだ」


衛兵の言葉には、神への怒りではなく、蓮個人に対する純粋で深い「憎悪」が宿っていた。


3. 英雄から災厄へ

蓮は言葉を失う。自分はただ、神の支配を拒絶するために戦っていた。不協和音を消し去り、この世界を平定すれば、それが正義だと信じていた。だが、ミディアムの住人たちにとって、蓮は神の尖兵と何ら変わりない、あるいはそれ以上に理解不能で理不尽な「災厄」に映っていた。


「……笑えない冗談だな。神を殺すために得た力が、守るべき対象から最も恨まれる理由になるとは」


傲慢が背後の壁に寄りかかり、自嘲気味に鼻で笑った。彼はかつて仲間を失った経験から、誰よりも「恨み」の重さを知っている。


「蓮。貴様が良かれと思って振りかざした白銀の虚無は、奴らにとっては全てを奪う死の光だったというわけだ。……今の俺たちは、奴らが必死に守ろうとしている平穏を壊す、侵略者でしかない」


4. 軟禁の鎖

蓮たちは身体能力や魔力においては、この世界の住人たちを圧倒している。その気になれば、この牢獄など瞬時に粉砕し、衛兵たちを皆殺しにして脱出することなど造作もない。


だが、蓮の右腕は動かなかった。目の前の衛兵が抱えている誰かへの想いや、守ろうとする意志が、自分を「化け物」を見るような目で射抜いている。その光景が、神々の理不尽な暴力に抗おうとしていた蓮の芯を、激しく揺さぶっていた。


「……俺は、何をしていたんだ」


蓮の呟きは、誰に届くこともなく虚空に消えた。神々の掌の上で踊らされ、修行という名の「破壊」を繰り返してきた結果、彼は自ら望んだわけでもないのに、無実の人々を苦しめる加害者へと成り下がっていた。


5. 静かなる対峙

牢獄の外では、ミディアムの住人たちが集まり、蓮たちの処遇を巡って怒号を上げている。神々は今、この光景をどこかで酒の肴にしながら笑っているに違いない。


蓮は目を閉じ、自身の右腕に溜まった虚無の重さを改めて感じ取った。物理的な鎖ではない。この世界の人々から向けられる、数え切れないほどの「憎しみ」という名の鎖が、蓮たちをこの場所に繋ぎ止めていた。


復讐の刃を研ぎ澄ませたはずの三人は、今、最も皮肉な形でその足を止められていた。

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