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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第153話:鏡の亡霊、あるいは自己嫌悪の受肉

1. 聖域を穿つ、漆黒の「掃除針」

大天だいてんの円卓で、道化の神ファンタズムが嘲笑と共に指を鳴らした瞬間、神無き空白地――開拓地「ゼロ」の空に、一筋の不吉な亀裂が走った。


それは巨大な隕石でも、神罰の雷でもなかった。ただ、音もなく静かに突き刺さった、細長い黒い影。神々が「掃除針クリーニング・ニードル」と呼ぶその存在は、着弾と同時に波紋のように「不快な空気」を戦場に振りまいた。


「……なんだ。魔力の反応じゃない。これは、もっと……泥のような」


修行の手を止めた蓮が、右腕の虚無を昂ぶらせて砂煙の先を睨む。その隣で、ユリアもまた本能的な嫌悪感に眉をひそめていた。


2. 招かれざる「過去」の具現

砂煙の中から現れたのは、怪物ではなかった。 それは、よれよれの安物スーツを纏い、脂汗で顔をテカらせ、猫背で地面を這うように歩く一人の男。


かつて、IT企業「ブラック・ロジスティクス社」で、部長の怒号に震え、同僚の田中からの嘲笑に耐え、ただ使い潰されるためだけに生きていた頃の――**「高橋 翔太」**そのものだった。


「……あ、申し訳……ございません。私の、私のせいで……。すみません、田中さん。谷村部長、すぐに直しますから……」


亡霊は、戦場の土をオフィスフロアの絨毯であるかのように錯覚し、見えない誰かに向かって何度も何度も、深々と頭を下げる。その卑屈な所作、自分を無価値だと決めつけた者の濁った瞳。それは、今の英雄「神崎 蓮」が最も奥底に封じ込めたはずの、剥き出しのトラウマだった。


3. 感染する「無力感」

この掃除針の真の恐ろしさは、物理的な攻撃力ではない。 亡霊が発する「自己嫌悪の波動」が、開拓民たちの精神を内側から蝕み始めたのだ。


「……俺、何やってるんだろ。こんなところで土を掘って……どうせ、神様に勝てるわけないのに」 「昨日まで頑張ってたけど、急に虚しくなってきたわ。私なんて、誰の役にも立ってないんじゃないかな……」


修行に励んでいた若者たちが、一人、また一人と武器を落とし、うつむき始める。 それは、伝染する心の病だった。翔太という亡霊が放つ「自分は使い捨ての部品である」という歪んだ確信が、人々の「個」としての尊厳を、じわじわと真綿で首を絞めるように奪っていく。


活気のあった開拓地は、数分も経たぬうちに、あの息の詰まるような「ブラック企業のオフィス」と同じ、重苦しい沈黙に包まれた。


4. 英雄への囁き

亡霊の翔太は、ゆっくりと、震える足取りで蓮の前まで辿り着いた。 そして、血の通わない瞳で蓮を見上げ、粘りつくような声で囁いた。


「……蓮くん。君は、自分が変わったと思っているのかい? レベルが上がって、力が手に入って……。でも、中身は僕のままだ。君の虚無は、ただの『現実逃避』だよ」


「だまれ……」


「君が守ろうとしているユリアさんも、仲間たちも……いつか君を捨てるよ。だって君は、ただの便利な『置物』なんだから。田中くんが言っていた通りだ。……ねえ、一緒に謝ろうよ。僕たちの、居場所へ帰ろう」


蓮の右腕が激しく痙攣する。 最強の武器である「虚無」は、相手を否定することで発動する。だが、目の前の敵は、否定したい自分自身そのもの。虚無の刃が、自分へと向かいそうになる矛盾した激痛が蓮を襲う。


5. 傲慢なる憤怒

「――目障りだ、三下が」


その不気味な対峙を切り裂いたのは、傲慢スペルビアの放った黒紫の雷だった。 雷鳴は亡霊の翔太を吹き飛ばすが、亡霊は泥のように形を崩しながらも、すぐに再び卑屈な笑みを浮かべて再構成される。


「神崎蓮。貴様がかつてこれほどのゴミだったとは、私の監視データにもなかったぞ。……反吐が出る。この『掃除針』、貴様の過去を触媒に、この世界の住民全員の精神プライドを泥に沈めるつもりか」


傲慢は、自分の復讐対象が、こんな醜悪な幻影に心を乱されていることに、激しい不快感を露わにしていた。

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