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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第140話:砕かれた絆、あるいは虚無の沈黙

1. 忘却の境界線、泥濘の残響

目の前の男が、一歩踏み出すたびに世界から「意味」が消えていく。漆黒の右腕から溢れ出す虚無の波動は、アレックスの黄金の障壁を紙細工のように引き裂き、その背後にあったはずの大地さえも灰色の空白へと変えていく。


リサは、泥にまみれた膝を震わせながら、叫ぶことさえ忘れてその背中を見つめていた。 さっき、目が合った。 確かに視線は交わったはずだ。 だが、その暗い瞳の奥に宿っていたのは、共に修羅場を潜り抜けた相棒への信頼でも、軽口を叩き合う親愛でもなかった。それは、道端に転がる石ころを見るような、あるいは排除すべき障害物を測定するような、無機質で冷徹な「観測」の光だった。


「……うそだろ。あんなの、蓮じゃない。ただの、空っぽの化け物じゃねえか……!」


リサの爪が、手のひらに食い込んで血が滲む。隣では、セラフィナが震える手で地面を掻きむしり、フィーネは折れた杖を握りしめたまま、祈りの言葉さえ失って絶望に呑まれていた。


2. 簒奪の牙、アレックスの嘲笑

「ははは! 見ろ、これがあの英雄の末路だ! 救おうとした者たちの顔を忘れ、自らの魂を削りカスにして、ただの『消しゴム』へと成り果てた姿を!」


上空に浮かぶアレックスの巨大な貌が、歓喜に歪む。彼は、蓮が虚無を放つたびに生まれる「存在の欠落」を、黄金の粒子で即座に埋め立て、自らの支配領域を広げていく。


アレックスの手が、ゆっくりとリサたちの方へ伸びた。その指先には、黄金の糸が幾千も絡みついている。 「蓮、貴様にはもう、この娘たちが誰かも分からないだろう? ならば、私が有効活用してやろう。神の残骸と、この娘たちの『ヒロインとしての因果』を掛け合わせれば、私は真の意味で、この世界の創造主を超えられる!」


アレックスの黄金の糸が、獲物を狙う蜘蛛のように、少女たちの頭上へ降り注ぐ。


3. アルマの揺らぎ、中立の糸

「……蓮。貴方は本当に、それでいいの?」


戦場の中央、瓦礫に座るアルマが、掠れた声で呟いた。 彼女の指先から伸びる透明な糸は、アレックスの攻撃を防ぐこともあれば、蓮の暴走を抑制するようにその足元を絡め取ることもある。その動きは、まるでどちらの勝利が「世界という器」にとってマシな結果をもたらすかを、極限の天秤で計っているかのようだった。


彼女は味方ではない。だが、完全な敵でもない。 アルマの目的はただ一つ、この新世界を「存続」させること。 たとえその世界が、記憶を失った英雄と、狂った簒奪者の残骸で構成されることになっても。


「……私は、編むだけ。どちらか一方が『柱』として完成するまで、私はただ、この因果の崩落を繋ぎ止めるだけよ」


アルマの冷徹な言葉と共に、透明な糸が少女たちの周囲を包囲した。それは守護の結界か、あるいはアレックスへの「献上品」として逃げ道を塞いだのか。その真意は、誰にも分からない。


4. 決死の覚悟、泥濘の反撃

「……ふざけんな、神様。ふざけんな、アルマ!」


リサが吠えた。 彼女は黄金の重圧に逆らい、強引に立ち上がる。獣の耳を伏せ、喉を鳴らし、真っ直ぐに蓮の背中へと駆け出した。


「忘れたんなら、思い出させてやるだけだ! その右腕が全部食っちまったんなら、あたしたちが、新しく記憶を刻み込んでやるよ!」


リサの叫びに呼応するように、フィーネが消えかけた聖なる光をその身に纏わせ、セラフィナが残された計算機を叩き壊して魔力を暴走させる。 彼女たちが選んだのは、待機でも逃走でもない。自分たちを忘れた「災害」としての蓮の中に、再び「人間」を呼び戻すための、特攻に近い戦いだった。


蓮の視線が、自分に向かって走ってくるリサを捉える。 右腕の黒い痣が脈打ち、冷酷な虚無の波が彼女を飲み込もうと膨れ上がった。

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