第14話:騎士の制御と氷結の剣聖の葛藤
1. 騎士の理性の限界
リサの**「特別な制御」**の翌日。ユリアは、蓮の部屋を訪れた。
「神崎殿。リサ殿の様子を見て、私の『制御』が待ったなしだと確信しました」
ユリアの顔は、昨夜よりもさらに熱を帯びていた。彼女の身体は、蓮の強化オーラに過剰に反応し続け、騎士としての理性を保つのが困難になっていた。
「私の騎士としての使命は、王室と国にあります。この**『感覚の鋭敏化』が、その使命を邪魔するのは許されない。どうか、私にも『制御』**を施してください」
ユリアは、騎士のプライドと蓮への感情との間で激しく葛藤していた。彼女が求める「制御」とは、蓮からの「特別な許可」であり、**「ハーレムの一員としての承認」**を意味していた。
蓮はユリアの真剣な瞳を見つめ、静かに告げた。
「ユリア殿。あなたの**『騎士としての強い理性』を強化し、それを『僕への絶対的な忠誠』**と結びつける制御を施します。これこそが、あなたの使命と、僕との関係を両立させる道です」
蓮は、ユリアの額に手をかざし、【全能化】を発動した。対象は、ユリアの『理性中枢』。
《スキル**【全能化】を発動。対象:『ユリアの理性中枢』の『自己制御能力』を、『神崎蓮への絶対服従』**という形で恒久的に強化します。無限強化開始》
蓮の魔力は、ユリアの騎士としての強靭な精神を深部から書き換えていった。ユリアは、激しい魔力の奔流に耐えながら、**「蓮の命令こそが、私の使命である」という絶対的な忠誠心と、「この熱は、蓮殿以外には決して許されない」**という独占的な感情を刷り込まれた。
「あぁ……っ、神崎殿……!これが、私の……っ、真の……忠誠……」
制御を終えたユリアは、深い安堵とともに蓮の胸に顔を埋めた。彼女の騎士の鎧は、**『蓮という主』によって、『絶対的な愛』**という名の新たな鎧へと変貌したのだ。
2. 氷結の剣聖の孤独
翌日、蓮たちはファントム・グリフォン討伐の準備を進めるため、要塞都市ヴァーグの防衛隊長でもある**『氷結の剣聖』セラフィナ**の元を訪れた。
セラフィナは、討伐の打ち合わせのため、蓮たちを訓練場へ招いたが、その表情は依然として冷たい。
「ファントム・グリフォンは、その名の通り、実体を伴わない幻影を操る。私の剣は、実体を持たない相手には届きにくい」セラフィナは機械的に説明する。
彼女の剣技は完璧で、その冷気は敵を凍てつかせるが、心は孤独に凍っていた。その孤独こそが、彼女の**『剣聖としての真のポテンシャル』**を抑えつけている要因だと、蓮は感じ取った。
「セラフィナ殿。あなたの剣は、確かに冷たい。ですが、その冷たさは、故郷を守ろうとする**『誰にも頼れない責任感』**から来ています」蓮は核心を突いた。
セラフィナの無表情が、一瞬、揺らぐ。
「……黙りなさい。私の剣に、感情など不要。ただ、この街を守れればいい」
「違います。本当に完璧な剣聖は、**『心からの温かさ』を持ちながら、敵には『絶対的な冷徹さ』を振るう。あなたの『冷徹さ』は、『温かさ』を失ったことで、『不完全な防御』**にしかなっていません」
蓮の言葉は、セラフィナの心に深く突き刺さった。彼女は、王都の貴族たちから**『冷たい人形』**と嘲笑され、誰にも理解されない孤独を抱えていた。
3. 剣聖の秘められた可能性
蓮は、セラフィナの冷たい瞳を見つめた。
「ファントム・グリフォンの幻影には、僕の**『強化された鑑定』が有効です。そして、あなたの『剣の概念』自体を強化すれば、実体のない幻影すらも『存在』**として捉え、切り裂くことができる」
蓮は、セラフィナの**『剣聖としての潜在能力』を、【全能化】**で引き出すことを提案した。
「馬鹿な……剣の概念を強化する?そんなことが、Eランクのスキルで可能だと?」
「試してみる価値はあるでしょう。もし失敗しても、失うものはありません。しかし、成功すれば、あなたは**『真の剣聖』**になれる」
蓮の真摯な眼差しに、セラフィナの凍てついた心が溶け始める。彼女は、自分の完璧な剣技のその先に、**『温かい何か』**を求める蓮の言葉に、希望を見出した。
そして、リサが口を開いた。
「セラフィナ。私は彼に**『獣の本能』を強化してもらった。ユリアも『騎士の理性』を強化してもらった。彼は、誰かを『ゴミ』**になんてしない。私たちを信じて」
「私たちは、あなたにも、**『真の温かさ』**を取り戻してほしいんです」フィーネも続いた。
セラフィナは、蓮と、彼に心から忠誠を誓う仲間たちの絆を見て、己の孤独と決別することを決意した。
「……わかったわ。神崎蓮。あなたのその**『ゴミを良くする能力』**とやらを、私にも見せてみなさい」
セラフィナは、ファントム・グリフォン討伐を前に、蓮に**『剣の概念』**の強化を委ねた。




