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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第133話:腐敗の連鎖、あるいは身代わりの聖母

アルマが語った過去の断片は、冷たい霧のように俺の肺にこびりついた。死者の肉を縫い合わせ、自分の体と因果を代償に命を繋ぎ止める。その凄惨な救済の果てに、今の彼女がある。そして、その延長線上に、俺たちが手に入れたはずの「新世界」が乗っかっている。


俺は横たわるユリアの影を見つめた。 そこには、アルマの指先から伸びた、どす黒い赤色をした糸が絡みついている。それは血管のように脈打ち、ユリアの体から何かを吸い上げ、あるいは何かを注ぎ込んでいるようだった。


「……アルマ。その糸を、今すぐ外せ」


俺の声は、自分でも驚くほど低く、地を這うような殺意を孕んでいた。


「できないわ、蓮。それを外せば、ユリアさんはその瞬間に砂に還る。彼女は神の第6射で一度死んでいるのよ。今、彼女をこの世に繋ぎ止めているのは、私の過去に溜まった数千人分の『死』という名の重石おもし


アルマはふらつきながら一歩、俺に近づいた。彼女の腕の皮膚が、パサリと乾いた音を立てて剥がれ落ちる。その下に見えたのは、筋肉でも骨でもなく、ぎっしりと詰まった、赤く変色した古い布の塊と、無数の縫い目だった。


「神は去り際に、この世界の『帳簿』を清算していったの。生きる価値のない不純物は、存在するだけでコストがかかる。ユリアさんを一人活かすために、この荒野のどこかで、別の誰か一人が砂になって消えている。それが私の編んだ世界の、本当のルール……」


その時、背後のテントで激しい咳き込みが聞こえた。


「ゲホッ、……ゴホッ!!」


俺は弾かれたように中へ飛び込んだ。 そこには、シーツを真っ赤に染め、さらにその血の中に「白い砂」を吐き出しているユリアの姿があった。リサが半狂乱で彼女の背中を擦り、フィーネが必死に治癒の祈りを捧げている。だが、セラフィナが握る計測器は、すでに測定不能を意味するエラー音を虚しく響かせていた。


「蓮様……、大丈夫、ですから……」


ユリアが顔を上げる。その瞳の端が、わずかに欠け始めていた。まるで古い肖像画が剥がれ落ちるように、彼女という存在の輪郭が、世界の「滅菌」に耐えきれず摩耗している。


「嘘をつくな!!」


俺は彼女を抱き寄せた。だが、腕の中に伝わる感触は、かつての柔らかい熱ではない。冷たく、崩れやすい、砂の塊を抱いているような、恐ろしい感覚。


「アルマ、お前は言ったな。お前を殺しに来いと」


俺は振り返り、アルマを睨みつけた。 漆黒の痣に覆われた俺の右腕が、熱を帯びる。神を殺した虚無。それが今、この理不尽な救済の糸を断ち切るために、再び胎動を始めた。


「救いなんて、もういらない。他人の死の上に成り立つ命なんて、ユリアは望まない。……俺たちが神に勝ったというのなら、こんな呪われた糸、俺が全部まとめて虚無に葬ってやる」


「……いいわ。やってみなさい、蓮。でも、その糸を切るということは、私という『柱』を壊すということ。世界はさらに加速して崩れ始める」


アルマは、悲しげに、そしてどこか解放を望むような顔で両手を広げた。 その指先からは、今や血のように赤い糸が溢れ出し、テントの中を、そしてリサたちの足元をも侵食し始めている。


「死なせない。誰一人、こんな理不尽な帳尻合わせで消させはしない」


俺は右腕を掲げた。 定義など、もういらない。 ただ、目の前のこの残酷な優しさを、真っ向から否定するために。


神が残した「敗北」の残り香が、新世界の夜を赤く染め上げていく。 俺とユリア、そしてアルマの因果が、最悪の形で絡み合い、火花を散らした。

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