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「ゴミを良くする能力」と笑われたEランクの俺、無限強化で神を超え、光の勇者を踏み潰します  作者: 限界まで足掻いた人生
第三部「神葬と黎明編」

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第104話:狂信の残滓と、断罪の選択

荒野の狂い火


北の爆心地を目指す馬車を止めたのは、街道を埋め尽くす異様な一団だった。 白いボロ布を纏い、顔を血で染めた「神罰代行者」を名乗る教会の過激派たちだ。


「虚無の王よ! 貴様が生き延びることが神への冒涜なのだ!」


彼らの背後には、縄で繋がれた数十人の避難民たちがいた。 第5射の影響で記憶を失い、恐怖で震えるだけの老人や子供。狂信者たちは彼らの首に刃を当て、蓮を呪う言葉を吐き続ける。


「この者たちの命を救いたければ、その右腕を差し出し、神にひれ伏せ!」


騎士の合理


「……王、指示を」


ユリアが馬車から降り、剣を抜いた。 その瞳に、人質への同情は微塵も感じられない。記憶を失った今の彼女にとって、目の前の光景は「守るべき対象」ではなく、任務を阻む「障害物」として処理されていた。


「人質を救出するには、機動力の低下が予想されます。目的地への到着は二日遅れるでしょう。……私の推奨は、人質ごと敵を排除し、予定通り進軍することです」


ユリアの淡々とした言葉が、蓮の心臓を冷たく撫でた。 かつての彼女なら、涙を流しながらも「それでも救いたい」と叫んだはずだ。 そのユリアを壊したのは神であり、そして彼女にそんな冷酷な正論を言わせているのは、他でもない自分を忘れた現実だった。


卑怯な王の独白


(ああ、やっぱり俺は最低だ)


蓮は馬車の影で、拳を強く握りしめた。 もし今、ここにフィーネがいたら「助けましょう」と微笑んだだろう。リサなら「私が隙を作る」と駆け出しただろう。 彼女たちをアヴァロンに残してきたのは、彼女たちの正しさに触れて、俺の決意が鈍るのが怖かったからだ。


(ユリア、お前が俺を忘れたから、俺はこんなに冷酷になれる。……俺は、お前の無垢な残酷さに甘えているんだ)


俺は、本当に駄目な男だ。 そう心の中で呟きながら、蓮は一歩、狂信者たちの前へ踏み出した。


虚無の審判


「神を語るなら、その神が守った理に従え」


蓮の右腕から、漆黒の魔力が溢れ出す。 その圧力を受け、狂信者たちが怯え、人質の首に刃を食い込ませる。


「動くな! こいつらが死んでもいいのか!」


「いいさ。死なせてやれ」


蓮の冷たい声に、狂信者だけでなくユリアさえも一瞬動きを止めた。


「ただし、地獄へ行くのはお前らだけだ」


五の指を、蓮が空へ掲げた。 良くなれ。 定義するのは、人質の肉体における『因果の切り離し』。


一、瞬時に。 二、精緻に。 三、冷徹に。


蓮が腕を振り下ろすと、狂信者たちの振るった刃が、人質の肌をすり抜けて自分たちの足を斬り裂いた。 虚無の力が空間の性質を書き換え、数秒間だけ人質たちの存在を「そこにはあるが、物理干渉を受けない」状態へと変えたのだ。


非情な決着


「ぎゃあああッ!? な、何をした!?」


混乱する狂信者たちに向け、蓮は感情の消えた声を投げた。


「ユリア。敵を殲滅しろ。一人も残すな」


「御意」


ユリアが疾走する。 人質の安全が確保されたと見るや、彼女の剣は容赦のない処刑人のそれとなった。 首を跳ね、胸を突き、一の乱れもなく狂信者たちを肉塊へと変えていく。 そこに救済の心はなく、ただ完璧な任務遂行だけがあった。


数分後、静寂が戻った荒野。 助かった避難民たちは、命を救ったはずの蓮とユリアに感謝するどころか、その圧倒的な暴力に震え、逃げるように去っていった。


「……王。人質の保護は完了。進軍に遅滞はありません」


返り血を浴びたユリアが、感情のない瞳で蓮を見つめる。 蓮は彼女の頬に飛んだ血を拭うこともできず、ただ視線を逸らした。


百日の猶予、残り九十七日。 救った命に感謝されず、愛した者に名前を呼ばれない旅路。 蓮は、己の卑怯さと孤独を燃料に、次の地獄へと馬車を走らせた。

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