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「ここって自由過ぎないか?」


 晩ご飯の食卓で、天明が呟いた。まるでこの世の心理に気付いたような表情を浮かべているが、アキとハルは呆れた表情をしていた。 


「今更過ぎないか? お前ここへ来てそろそろ一ヶ月だろ?」


「いや、だからこそだろ! 授業だってやんなくてもいいし、夜中出歩いてもいいしさ! こんな生活不良になっちまうよ!」


「そうならない為に、組織の代表がいるんですよ?」


「そこも変だろ! もしも代表の奴が全裸で過ごせなんて規則をつけたとして、お前ら素直に従うか!?」


「お前じゃあるまいし、そんな馬鹿な規則は作らん」


「でも、もしそうなったら……や、やらなきゃなのかな……!?」


 ハルは妙に真剣に捉えてしまい、全裸で過ごす世界を想像して、恥ずかしさで耳が赤くなってしまう。そんなハルの様子を横目で見ていたアキもまた想像し、自分の前で服を脱いでいくハルを妄想してしまった。数秒の沈黙の後、二人はほぼ同時に頭を激しく左右に振ると、天明が作った焼きそばを大口で頬張った。


 就寝時、ハルとアキは寝れずにいた。目を閉じて眠ろうとすると、全裸で過ごす夢を見てしまいそうで寝れずにいた。


(天明のやつが変な事言ったせいで、寝れないじゃない! 明日はこれまで以上にコキ使ってやるんだから!)


「アキ……」 


 横向きになっていたアキの背にハルが潜り込んできた。背中から感じるハルの小さな顔と手の感触は、悶々としているアキにとって劇薬であった。 


 しかし、アキは堪えた。可愛い妹分を邪な眼で見てはいけないと、内にいる獣を叩きのめした。


「もしも、もしもだよ? 天明さんの言ったような事が本当に起きちゃったら……やっぱり、従わないと駄目だよね?」


「そんな事起きないから、安心なさい」


「絶対?」


「絶対」


「でも天明さんはこの世に絶対はないって言ってたよ?」


(あんの馬鹿! ハルに影響与えまくりじゃない!)


「ハル。アナタも誠様の人となりを知っているでしょう? あの方に限って、人が嫌がる事はなさらないわ」


「……そうだよね」


 ハルが納得したようで安堵したアキ。


 しかし、この状況は何も変わらなかった。ハルがアキの背から離れる様子もなく、むしろ更に密着していた。それにより感じる感触は一層増し、アキが一時叩きのめした内なる獣が再び蘇る。


「ハ、ハル?」


「今日は、このまま寝てたい」


「も、もう! これから夏って時に! 私体温高い方だから暑いでしょ?」 


「ちょっと……でも、安心する……」


 そのハルの言葉は、アキに二重の意味で伝わった。安心感を得られる程まで親しくなった証と、友人を超えた想い。そのどちらか、あるいは別の意味で言ったかは、当人であるハルにしか分からない。しかし万が一でもこの関係にヒビが入る可能性が頭から外れず、アキはハルに聞けずにいた。


 翌朝、早起きの天明がキッチンでコーヒーを飲んでいる所に、アキが起きてきた。


「おぉ、おはよ―――どした……? なんか、ゲッソリしてんぞ……?」


「……お前のせいだから」


「俺~? 俺がなんかしたか~?」 


 結局、アキは一睡も出来なかった。今も背中に残るハルの感触に、不気味な笑みを浮かべると、背中を手で撫で回した。


「え、怖ッ」

 

 気味の悪い笑みと動きをするアキに、天明は底知れない恐怖を覚えた。早々にコーヒーを飲み終えると、逃げるように外へ走りに行った。

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