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天明

 荒れる大海原を一艘の漁船が進んでいた。海の水飛沫や、降り注ぐ大雨に打たれながら、背の高い少女が操縦席にいる漁師へ叫ぶ。


「オッチャン!! 本当にこんなボロ船で行けんのか!?」


「ボロ船とはなんだ! コイツは儂が産まれる前から大海を突っ切ってきた伝説の船なんでい! ちょっとやそっとの荒波じゃ、コイツを転覆させるには力不足よ!」


「そんな事言って、この間ちょっと強い風で船のパーツが吹き飛んでただろ!? それにこの船は定員二人が限界ギリギリの船じゃねぇか!」


「文句言う暇あるなら船が傾く逆に立ってろ!! 転覆しかけてんだろ!!」


 二人が口論する間にも、海は荒れ狂い、雨は更に酷くなっていた。このままでは転覆どころか、船諸共海の藻屑と化してしまう。


 波の坂を通って宙に浮かんだ漁船が再び着水すると、火山の噴火の如く、船体が大きく揺れた。その揺れでバランスを崩した少女は船べりに脇をぶつけた。


 脇腹の痛みに苦痛の表情を浮かべる少女は、荒れ狂う波と雨から島の影を目にした。それが少女が目指す島なのか確証は無かったが、少女は既に海に飛び込む覚悟を決めていた。


「オッチャン! オッチャンはここまででいい!」


「ここまでって……まさか!?」


「世話になったな、オッチャン!」


「待てよ嬢ちゃん! 知り合って数日の子を死なせたとなっちゃ、後腐れが出来ちまうだろ!」


「俺は死なんさ! 俺はまだ若いからな!」 


「荷物は!?」


「この胸の中にしまってあるのが荷物だ!」


 少女は片足を船べりに上げると、これから飛び込む荒れ狂う波に恐怖を覚えた。一度飛び込めば最後、戻る事も、泳いで進む事も出来ない。


 だからこそ、少女には飛び込む決意があった。自分の若さに絶対的な自信があり、自分の死期はまだ当分先だと確信していた。


「嬢ちゃん! 最後に聞かせてくれ! 嬢ちゃんの名は!?」


「天明。冴羽天明だ!!!」


「天明か! 生きて会えたら、船にアンタの名前を刻んでくれよな!」


「オッチャンも死ぬなよ! アンタ見た目ほど、まだ老いちゃいないんだからな!!」


 天明は深く息を吸い込むと、荒れ狂う波の中へ勢いよく飛び込んだ。 

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