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異常性癖

 朝七時。先に起床していた恵美は、隣のベッドで眠っている天明の寝相を眺めていた。体の大きさがベッドに見合わず、長い足がベッドの外へ出ている以外に特におかしなところはなく、寝相の良い部類である。


 そんな天明に、恵美は不満を抱いた。昨夜のちょっとしたイザコザは関係なく、寝相の良い天明に失望したのだ。


 恵美は期待していた。男勝りな天明が一体どんな寝相で、どれくらいベッドを乱してくれるのか、と。その気持ちはサンタからのプレゼントを待つ子供のようであった。プレゼントの中身が何であろうと、サンタからプレゼントされる事自体に意味がある。それでいけば、目を覚ましても枕元にプレゼントが無いガッカリ感は相当なものである。


 それ程までに待ちわびていた恵美の期待は、今も心地良い寝顔で眠り続ける天明によって粉々にされた。


(自分がおかしい。他人の寝相の悪さに期待してたなんて。そんな期待なんか、失礼極まりないのに)


 恵美はため息を吐いた後、部屋から出た。廊下には寮内のほとんどの生徒達が起きてきており、みんな食堂へ向かっていた。


 恵美が食堂に着くかといったところで、寮内の荷物受け送りを担当している生徒から声を掛けられた。


「おはようございます、恵美様。頼まれていた制服が届いておりますよ」


「あら、そう。それじゃあ先にそちらを部屋に持っていこうかしら。手続きは?」


「持っていって構いませんよ。一応、部屋の番号札が貼ってあるので間違わないと思いますが。それにしても、転校生の方は随分と大きな方なんですね。初めてですよ、一番大きなサイズの制服を発注したのは」


「サイズの問題もあるけど、一番の心配は着てくれるかどうかなの」


「大丈夫ですよ! カーネーションの制服は他の制服と違って可愛らしいですから!」


「だからなのよねー……」


 恵美は制服が入った箱を取りに行き、再び自分の部屋へと戻った。


 扉を開けた瞬間、扉が開きっぱなしの浴室からシャワーの音が聞こえてきた。


「朝からシャワーを浴びるなんて……解釈違いにも程が―――あ」


 部屋の中は荒れ果てていた。恵美が使うスペースは何も荒らされていないが、天明が使うスペースは全体的にグチャグチャになっていた。寝ていたベッドはもちろんの事、食器やお茶葉が保管されている棚を漁った形跡と、中央のテーブルの上にあるカップに白湯がほんの少しだけ残っている。


 まるでサプライズを仕掛けられたかのような驚きと嬉しさに、恵美は持っている箱を胸に抱き寄せながら悶えた。


 するとそこへ、ちょうどシャワーを終えた天明がやってくると、何故か天明は申し訳なさそうな表情で恵美に笑いかけた。

 


「あの、恵美さん……朝からこんな事聞きたくないかもしれないんだけどさ……その……カップ、一個割っちゃった……」 


「ッ!?」


 天明は自分のベッドへ行くと、ベッドの下に隠していた割れたカップを引き出した。


「別に、隠し通そうとしてた訳じゃないんだ! 割れたままほっとくのは危ないと思って、破片を布に集めてベッドの下に置いておいただけなんだよ! その証拠に、今こうして正直に話してるだろ!? だからさ―――」


「もう、いいです。もう、十分ですから……」


「あ……本当に悪かった。昨日に続いて今日も迷惑かけて……」


 深く反省する天明であったが、恵美は気にもしていなかった。部屋が荒れようが物を壊されようが、そんな事で恵美は天明に失望などしない。むしろその逆で、恵美は天明を見直していた。


(それでこそ待ち望んだ同居人!! それでこそ冴羽天明!!)


 恵美は心の中で叫んだ。それを天明に伝えたかったが、まだ昨日知り合ったばかりの相手に、そもそも自分の異常な快楽を相手に押し付ける不躾さは恵美にはなかった。 


「もちろん今から片付けるからさ! シャワー浴びてたのも気持ちを落ち着かせる為であって、別に気にしてないって訳じゃないんだよ! だから、その……ごめん」


「本当に気にしてませんから。むしろ……」


「むしろ?」


「いえ、なんでもありません。そうだ! 私がお部屋を掃除している間、制服のチェックをしてください! 一応サイズは一番大きいので頼みましたが、天明さんの身長は女性では規格外ですから」


「おお、もう届いたのか! でも、やっぱり手伝わないわけにも―――」  


「天明さん」


「はい! すぐ着替えてきます!」


 どこか怖さのある満面の笑みを浮かべた恵美から逃げるように、天明は制服が入った箱を手にして脱衣所に移動した。  

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