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 残りの二人はそれぞれ、ジェインとメグの二人と対峙する。


「しゃあっ!」ジェインの前に立った男は、剣を持っていて、それを彼女に向かって突き出す。


 彼女は剣の進路を阻むように、左手をばっと前に広げる。「【溶解】」そしてスキルを発動する。


 彼女の手を突き刺すはずだった剣が、彼女の手に触れたとたん、ぐにゃんと折れ曲がる。それから剣は硬さを失って、布切れみたいに頼りなく手から垂れ下がった状態になる。


「【溶解】」そのままジェインはやつの肩に触れる。


「やめろっ。うわあああ!」やつの体が、ぐにゃぐにゃになって、溶けたチーズみたいになってしまう。そうなってもまだ生きているみたいで、悲鳴を上げ続けていたが、体を動かすことはできないみたいだった。


 残る一人は、もうすでに戦うのをやめている。剣を地面に放り捨てると、悲鳴をあげながら逃げ出す。


「【接着】」メグがスキルを発動する。その瞬間、僕の体がやつに向かって吸い寄せられていく。


「えっ! いやいや、ちょっと!」僕は慌てて、体を丸める。そして僕は、すごい勢いで飛んできた砂袋みたいにやつにぶつかることになる。僕はやつと一緒になって、地面に飛ばされる。


 スキルはすぐに解除されて、離れられるようになる。僕は立ち上がって、メグに文句を言う。


「僕を飛ばすな!」


「だって、スキルを使えばダメージを受けないんでしょ?」メグは言う。


「それでも嫌だよ。だってなんか嫌でしょ、武器にされるのはさ」


「メグ」アリスが彼女をにらむ。「リっ君を投げるとか、何考えてるの?」


「投げてないよ。くっつけたんだよ」メグは言う。


「一緒でしょ。その腐った頭ごと、凍らせてやる」


「喧嘩はだめ。もういいから、おかしいやつなんだって僕もわかってるから」


「そういうリチャードも結構、イカれてるけどね」


「僕が? それってどういう意味?」僕は尋ねる。


「意味は特にない」メグは答える。


「ねえのかよ。考えちゃったじゃん」


「リっ君、こいつはイカれてるからまともに相手しちゃだめ」アリスが言う。


「ああ、うん」


「ねえ、三人とも。こいつらはどうするの?」ジェインが僕らに向かって言う。見ると、全員、スキルで溶けたチーズみたいにされている。


「うーん、放っておいてもまずいし、かといってどうするか・・・・・・」


「頼む、殺さないでくれ!」やつらの一人が、懇願する。


「どの口が言ってるんだ。お前ら、僕のことを殺そうとしただろうが」


 こいつらがどれほどひどい目にあったとしても、同情するつもりはない。


「そういえば、雪山で遭難した男が自分をスキルで氷漬けにして生き残った話があったよね? アリス、できそう?」


「できる、大丈夫。たぶん、夏になったら氷も溶けると思うから」


「うん。じゃあ、お願い」


「【獣化モデルフェンリル】」彼女はスキルを発動する。


「やめてくれ! もう何もしないから!」やつらの一人が言う。


「うん、何もしなくてもいい。じっとしていてくれればそれでいい」僕は答える。


 冷気が五人を覆いつくす。すぐさま彼らの体は氷漬けになる。僕はこれが正解だと信じている。僕が守るべきなのはアリスたちであって、こいつらではない。そして暴力で人から何かを奪おうとするやつらは、何回でもそれを繰り返す。それを忘れたら、大切な人が死ぬことになる。


「どうしたの?」アリスが尋ねる。


「ん? ああいや、これでよかったのかなって思っちゃって」僕は言う。「ほら、他の人だったら誰も傷つけずにもっといい案とか出せたんじゃないかって」


「リっ君は優しいね」アリスは言う。「私だったら、みんな土の中に埋めてるよ?」


「あ、ありがとう」相談する相手を間違えたかもしれない。


「私だったら、川に流すかな。おもしろそう」ジェインは言う。


「私は釜にいれて五人全員を混ぜてみるね。合体するんじゃないかな」メグは言う。


「私でしたら、肥溜めにぶち込んでいたでしょうね」ベティは言う。


「あはは、みんなの冗談はおもしろいなあ」僕はそう言っておくことにする。少なくとも、こいつらよりはずっとましな答えを出せたのだと理解して、安心した。


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