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手がかりとは

「ちょっと、話を整理させてくれないかな」僕は言う。


「そうだよね、急にいろいろ言われても混乱するものね」ジェインは言う。どちらかといえば、混乱の原因はあの三人のおしゃべりだけど。アリスとだけ話していれば、もっと早く終わっていた気がする。


「君たちはアレン・アドラーの子孫であり、冒険者であると。そして先祖の遺した財宝を手に入れるのに、僕は協力すればいい。そういうことでいいよね?」


「あと、私たち三人を養うこと」ベティは言う。


「そんな話なかったでしょ」僕は言う。


「私と結婚する約束は?」アリスが言う。


「あ。も、もちろん忘れてないよ。ただ省いただけ」忘れていた、などとは言わないでおくことにする。


「あと酒を買ってくること!」ジェインは言う。


「そんなこと言ってねえだろ。パシろうとするな!」僕は言い返す。


「じゃあ私はケーキ!」メグは言う。


「だから自分で買ってこい!」この四姉妹、まじでめんどくさい。


「ていうかほら、行くんじゃないの? 早くしないと財宝をシンプソンたちにとられるよ」僕は忠告する。


「なに言ってるの? もう夕暮れも近いんだよ? いまから出かけるわけにもいかないでしょう」


「あ、もうそんな時間だったのか」


 僕が起きたのは朝だったし、出かけたときも日が昇っていたからまだ朝のつもりでいたが、気を失っていた時間があるのを忘れていた。


 僕は、宝をとられはしまいか、と焦る気持ちをどうにかこらえて明日まで待つことにした。


 そして翌日の朝、僕と四姉妹とで家を出た。


「さ、出発! さあ、みんな行くよ! リチャード君、案内して」ジェインはリーダーらしく、みんなに指令を出す。案外、彼女が一番年上なのかもしれない。この中ではわりと大人っぽくもあるし。


「とりあえず、まずはストーンヘン地区に行く必要があるから、馬車を捕まえないと」僕は言う。


 それから馬車を捕まえて、着くまでの間に僕は話をする。


「知ってると思うけど、アレンの墓にはこう刻まれている。私が作られたところに手がかりを残しておいた、と」


「でも、アレンの生まれた場所はストーンヘンじゃないでしょ?」


「そう、違う。ただ私っていうのが、アレンをさしていたわけじゃなくて、墓石のことをさしていたんだ。つまり、あの墓石を作った加工屋に行けば、手がかりがあるってことなんだけど、それはすぐに突き止められた。ただ、その加工屋はすでに廃業していて、その店の主人の娘もどこに行ったかわからなくなっていた。謎はそこまで難しくはなかったけれど人間の」


「お姉さん、そういう難しい話はムリなんだよね。結論だけ、簡潔に言ってくれる?」ジェインは言う。


「ごめん。えっと、結論からいえば、ストーンヘン地区に暮らしているボルドマン夫妻が手がかりを受け継いでいるはず」


「ふうん。でも、シンプソンの跡をつければ、手がかりなんてなくてもよくない? どうせ行くところは一緒でしょ」ジェインは言う。


「もちろんそれもありだけど、先に手がかりを手に入れて、シンプソンの先を越したほうがいいかなって思ったんだ」僕は言う。


「へえ、頭いいんだね」メグが褒める。


「いや、それほどでも」


「確かにそれほどでもないか」メグは言う。


「え? あれ?」


「何、どうしたの?」


「いや、なんでもない」僕は言う。僕は、なんとなく恥ずかしくなってしまって、空を仰ぎ見ることにする。


「下僕、肩が凝ったわ。揉んでちょうだい」ベティが誰かに向かって、言う。いったい、誰に言っているのだろう。


「返事をしなさい」彼女は僕の肩をぼろい扇子でつつく。


「え、僕?」


「なに言ってるの、あなたは私の下僕でしょう」


「誰が下僕だよ!」僕は扇子を押しのける。


「コーヒーが飲みたいわ」


「僕に言うなって。下僕扱いをやめろ」


「うるせえぞ、あんちゃん」話していると突然、馭者の人が僕に向かって怒鳴ってくる。


「あ、すみません」僕は謝る。「って、僕だけ?」いまいち、釈然としない。


 その時、ジェインが瓶に入っているなにかをラッパ飲みしている様子が目に入る。


「何を飲んでるの?」


 ジェインは瓶から口を離して、口を手の甲でぬぐってから言う。「お酒だけど?」


「お酒? やめとけよ、吐くぞ?」


「だいじょーぶ! お姉さん、これでもお酒強いから!」それからまたお酒を飲み始める。


「大丈夫なのかな・・・・・・」


「ねえ、お昼にしようよ。サンドイッチ出して」メグは僕に向かって言う。僕の後ろに昼食をいれたバッグが置いてあるのだ。


「まだ早いよ。出発してから三十分も経ってない」僕は言う。


「ケチ」


「ケチで言ってるわけじゃ」


「アホ! 人を人とも思わない外道め!」


「そこまで言うか、お前」


「うるせえって言ってるだろ、あんちゃん」馭者が再び怒鳴る。


「え、僕ですか?」


「リチャード君、助けて」ジェインが助けを求めてくる。


「え、何?」


「吐きそう・・・・・・」


「だから言ったじゃん」


「うう、限界」


「馬車の中で吐くなよ!」僕は慌てて、彼女の体を手でつかんで、頭を馬車の外へ誘導する。


 そのあと、彼女は吐き始める。


「大丈夫?」


「大丈夫。それより、リチャード君のほうは大丈夫? アリスは怒ってない?」


「いや、これぐらいで怒るわけないでしょ」


 その時、後ろから肩を強い力でつかまれる。


「なんでジェインに触ってるの?」


 僕はアリスのほうを見る。彼女は冷たい目で僕の方を見ている。冷静そうに見えるが、ちゃんと怒っているのが伝わってくる。


「いや、こいつが馬車の中で吐こうとしたから、動かしただけ。こいつのことなんて全然好きじゃないからね。酒瓶で頭を殴ってやりたい気分だよ!」


「じゃあ、私が吐きそうになったら同じことしてくれる?」そう言って、彼女はお酒の瓶をつかみとる。


「だめだめだめ!」僕はアリスの手をつかんで止める。


「アリス、それ私のお酒!」


「お前はもう飲むな!」僕はジェインに向かって言う。








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